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12. 秘密の基地 

 ソードがため息混じりで話しだす。


「ハァー、そうですか。まだはっきりしないのですね。確実に少しおかしいですが、そこまでなんですね」

「ああ。やっぱり、そんなにおかしいのか……そうか。ツガイだと言い切れないあいだは、おかしくなったらフォローを頼む」

「わかりました。パールにはラメール王国の王太子だと、伝えないのですか?」

「まだツガイだともわからないし……それに、ピアンタ王国から王族を避けて逃げてきたんだぞ。おれが王族だとわかったらきっと次の国、セルバ王国へ行ってしまわないか?」

「そうですね……」


 これにはソードも納得していた……


「ガントも少しおかしいとは思っているみたいですが、ライのツガイかもしれないとは思っていないようです。どうします?」

「あいつにはもう少し何も告げずそのままにしておく。言うとかえって、ややこしくなりそうだからな……それにあいつが気づいたら、よほどだろ? おれの目安にもなる」

「そうですね、それがいいでしょう。気にはなる、ですか……」

「ハッハッ、そうなんだ。ぜったいコイツだっという感じでもないんだよな」

「難しいもんですね……」


 この話はパールが戻ってきて終わりになる。

 

 国境が近いのか?

 安全のためパールは馬車の中に戻されたようだ。


 三人でダミーの席へ着く。


 一応、国境だからな。

 念のためソードがパールの冒険者仮登録のギルドカードを預かっていた。


 何があるか、わからない……


 しかし今回はうまくガントの知り合いに当たったようで、難なく国境を超えることができた。


 やはり、ホッとする。


「パール、もう大丈夫だ。ここからは、なんとでもなる」

「ピアンタ王国から無事、脱出できました。ありがとうございます」


 ホッとしたあとだからか? 

 いつもより早く国境近くの宿屋についた気がした。


 昼食は宿屋の食堂でとる。

 パールはソードが頼んだリンゴのパイを、うれしそうにニコニコ食べていた。


 かわいいとは、思うが……


 ツガイなのか?

 ツガイかも? っと思ってみてしまうと、こんな小さな子どもに、意識してしまいそうで……


 こわいな……


 昼食後は明日の朝まで解散だ。

 各自が 一階の食堂で朝食を食べ、出発時間の七時に馬車前集合。

 パールは時間の魔道具を持っている、これで大丈夫だろう。


 カギをもらい、よろこんで部屋へ行くようだ。

 平民なのに宿屋なれしている?

 一人でスタスタ行ってしまう姿がおかしくて、かわいい。

 

 かわいい?!


 ああ、おれはやっぱりおかしいのか?

 目でパールを追いかけてしまう自分に戸惑う。


 そんな自分を、ソードがじっと見つめていたのをおれは知らないでいた……

 


 パールとわかれ自分たちの部屋へ入ると、すぐ宿屋の者がやってくる。


 防犯のため旅先ではガントとソードもできるだけひとつの部屋で寝泊まりしているから、サッとガントが対応してソードがおれのそばにつく。


「ライアン様、お久しぶりでございます。ようこそお越しくださいました」

「ああ。久しぶりだな。皆の様子はどうだ?」

「はい。皆、精進しております。これからすぐ、見に行かれますか?」

「ああ、今日と明日の二日しかないからな……すぐに向かおう」

「はい。用意はできております」



 実はこの宿屋と次の宿屋の中間地点ぐらいに、秘密の基地がある。

 そういった秘密の基地がラメール王国には数カ所あり、いまから行くのも、その一つ。


 ラメール王国側には国境に兵士を目立って置いていない。

 くるものは拒まない、国の方針だ。

 もともと三国しかないし、ピアンタはどちらかというと貧しい国で、人族が大半だ。


 弱い民族。


 流れてきても、大したことにはならない。

 たまに悪党もいるがそれは別として、おおむね歓迎していた。

 まあ王都内に入るには検問所があり、調べられるからそこで悪党は入れないようになっているんだが……


 そしてこの樹海周辺はあえて栄えさせず、ある一族たちの集団に任せている。

 旅人を確認し見張らせることもできるようにするため、王都までの距離に宿屋を二ヶ所。


 ここの宿屋と次の宿屋。


 宿屋周辺や国境を守り、密かに国境警備隊と同じ役割を果たしている。


 その二ヶ所の集落の訓練所を兼ねた秘密基地。

 

 基地は樹海内になるため、誰にも知られることなく高い技能が習得できるようになっていて、国のシークレットだ。


 そこにいまから、激励と顔見せに行く。


 この秘密の基地をまわることは、王太子の大事な仕事のひとつになっているからだ。


 理由は簡単。


 ここでいま鍛錬している者たちが将来王になるおれ、いや、わたしの手足となり、これから表と裏から支えてくれる。


 基地はその特殊な人材を育てる特別な場所だ。


 この集団たちの良し悪しで、その時代の王国が変わると言ってもいいほど大事な者たちだと父上、国王から教えてもらう。

 竜人の血を継ぐ王太子は皆、その言葉を聞いて育つ。


 人族の王のときには、ここはいまの国王が密かに守り育てていたと、王太子になってはじめ教えてもらった。


 教えてもらったのは、五ヶ所。


 いくつ点在しているのか? 

 本当の数は王になってからなのか? 

 おれにはまだわからない。


 馬車で樹海の端の荒れた秘密の道を一時間半ほど走ると森林の中から突如現れる。

 馬車の小窓から様子を伺う。


 高い塀に囲まれた要塞。


 この馬車をどこかで見ていて、止まることなく門を開けている。

 まだ誰も現れていない……

 なのに、この馬車におれがいると知っている。

 情報網と敏速な動き。

 入り口には、もう一線では活躍できない老いた者たちが置かれていると聞いてはいるが……


「すごいな……」

「ええ。無駄のない動きですね……」

「それに、御者の腕前。あれはすごいぞ!」


 宿屋の者が御者をしてくれているから、ガントも馬車の中でくつろいでいた。


 到着するとその御者に迷路のような廊下が続く部屋へ案内される。

 部屋の中には基地の代表が笑顔で立って待っていた。


「ライアン様、お待ちしておりました。お変わりございませんか?」

「ああ、久しぶりだなマヌカ。調子はどうだ?」

「はい。だいぶ仕上がっている者が増えてまいりました。すぐごらんになりますか?」

「ああ、見せてくれ」


 そこから外に出られるテラスへみんなで移動する。

 

 おれの手足となる者たち。


 会うのが楽しみだ……

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