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11. 当たり人 

 砂金か塊、どちらでもいいのか?

 金が選べるというのなら……


「そうだな。もっと大きな塊も、見てみたいなぁ」


 どれだけどんな金を持って帰ってきたのか、ちょっと気になって少しふざけたように聞いてみた。


「ライ。大きいって、どれくらい?」


 なにっ?!


 いま出した金の塊よりも、もっと大きな金の塊を持って帰ってきてるのか?

 それなら。

 

「そうだな……ガントの顔、ぐらいだな」

「おれの顔か?」


 ガントが口元を少し上げてパールを見た。

 ソードもおれの意図に気づいたようで、笑いながら告げる。


「パール、けっこう大きいですよ? ふっふ」

「探しておきます……」

「「「あるのかっ!!」」」


 パールの返答に三人でおどろいていると……


「あったら、いりますか?」

「いる!」


 すぐ、返事しておく。

 

 ガントが辛抱できなかったようで。


「パール。おれも向こうの国の金がほしい! さっきの小さな金の塊でいいから、両替してくれないか?」


 さっきの小さな金の塊って……ガントおまえ……


 ガントとおれにとって、向こうの国は自分たちの

ルーツでもあるからな。

 ガントがその国のモノをほしがる気持ちはわかる。

 本気で欲しがっているのだと、パールにも伝わったようだ……


 パールがまた魔法袋から、細いバンブの木を三本と先ほどと同じぐらいの金の塊をひとつだして話しだす。


「ガントはわたしの当たり人、三人目だからどうぞ! 一人目にも二人目にも同じだけ渡しているから、受け取ってね」

「えっ、おれが三人目?」

「そうだよ。わたしを馬車に乗せて、ラメール王国まで連れて行ってくれるんだもん」


 ガントが少し震えている……

 うれしいいんだな……


 パールの言葉を聞いて、ソードが尋ねだした。


「パール。それならライにも、当たり人の権利があるのでは? これはライの馬車ですよ?」

「おう、そうだぞ! これはライの特別な馬車だぞ!」


 ああ……

 こういうときは、つらい。

 そんな忖度はいいんだ……

 見てみろ、パールが黙ってしまっただろう……

 困らせているのか?


「パール、おれはいいぞ。気を使うな」


 あわてた様子で、パールが手を横に振りながら話し出す。


「違うの、ライっ! 実はもうひとり、どうしても当たり人にしたいお祖母さんがいるの……だから、ライが四人目でソードには申し訳ないんだけど、4.5人目っということで、0.5人扱いにしてもらって。最後そのお祖母さんを残りの0.5人目でちょうど当たり人が五人ということにしたいんだけど……いいかな?」

「もしかして、パールはわたしのことで悩んでいたのですか?」


 ソードが少し目を大きくして聞いている。


「えぇと〜 そういうことではないけど……もし、いやじゃなかったら4.5人目の当たり人になってくれますか?」

「ええ、えぇ。よろこんでならせていただきます! わたしまで入れていただき、ありがとうございます」

「よかったな、ソード! それにライも!」

「パール、おれも四人目の当たり人になっていいのか?」

「はい。それはもちろん! みなさん、よろしくお願いします!」


 そう告げると、おれとソードにもガントと同じ砂金と金の塊を渡してきた。


 良い子だ。

 パールは、優しい子……


 ソードがうれしそうなのが、おれもうれしい。


 お礼といってはなんだが、おれと連絡がとれるメダルを渡しておく。

 

「これは、なに?」

「これを見せると、おれの知り合いだとすぐにわかって便利なのさ。なくすなよ」

「このメダルは、真ん中に小さな魔石が埋め込まれていて偽造もしづらくなっていますから、これを見せたらすぐにわたしたちまで繋がります」


 ソードも説明していた。


「パール。おまえ見た目は小さい子どもだから、念のためだな! ガハッハッ!」


 ガントが笑いながら告げる。


「ガント。あなたのそういうデリカシーのないところは、どうにかしてください。パール、ガントがすみません」


 ソードがガントの代わりに謝っていた。

 パールは苦笑いぎみに頷いている。


 手に取ったメダルをみて首をかしげ……


「このメダルの素材は、なんですか?」


 んっ? めざといな……


「パール、よくそこに気がついたな! これは貴重なドラゴンの骨から作られているんだぞ! 魔力の伝わり方がすごくいいんだよ。見た目より頑丈なのに、細工がしやすいんだ」


 なぜかガントが、自慢げに答えていた。


「そんな……貴重なモノ、もらえないよ」

「パール、あなたは持っておくべきです。これでラメール王国に後ろ盾ができたことになりますから、変なことを言ってくるヤツらには効きますよ」


 ソードが少し悪い笑顔で、パールに説明する。


「……ライ、ありがとう」


 わかってくれたのか、よかった。

 

 ♢


 次の日、朝からソードもガントも機嫌がいい。


 特にガントは金の塊をずっと眺めている。


 まあ、気持ちはわかるが……


 自分のルーツ。

 向こうのモノだからな。



 どうして?

 なぜだ!


 パールがガントの御者の横に乗りたいと言いだした。

 ガントはひまだぞっと言いながらも、パールを御者に乗せてやるようだ。


 気に入らない……

 

「なぜだ……」


 小さく言葉にでてしまった……


 それをソードが聞いていたようで、真剣な目をして話しかけてきた。


「ライ、少し話しをしましょう」

「なんの話だ?」

「大切な話です」


 なんの話か気になるが、それよりいまはパールが御者へ行くのか? そっちが気になる。

 アッ?! 

 こっちへ来たぞ……

 なんだ……ソードに荷物置き場に置いていた荷物を返してもらっているのか。

 マントが必要?

 そうだな、もう隠す必要がないのだから自分の魔法袋へすべて入れて置いたら良いだろう。

 

 パールが御者へ向かうのを眺めているとまたソードに声をかけられる。

 ソードはお茶を淹れながら。


「ライ、いまは二人です。正直に答えてください。 パールはライのツガイですか?」


 ソードが半分、友として聞いてきた。


「えっ!? ツガイ……そうか、そうなのかぁ?! ツガイなのか? しかし、父上たちに聞いていたドキッとして心臓を持っていかれたようなそんな強烈な感じではないんだ。聞いていた話しだと、見てすぐにわかるはずなんだが……」

「そこまででは、ない……ということですか?」


 ソードから見ても、おれの態度は明らかにおかしいらしい。


「わからないんだ……気になるのは、たしかだ。いまもガントとパールが御者に二人でいるのが、気になってしょうがない気もする……」

「気もする……ですか?」

「そうだ。まだ、それぐらいなんだよ……あの、王立学校にいた、どの令嬢たちより……気にはなる。そのぐらいだな」


 あきれているのか?


 ソードは、ため息をひとつ吐いて。


 おれをじっと、見つめていた……

 

 

 

 


 

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