01. ラメール王国の迷い人
かならず見つけてみせる。
おれのツガイ……
わが国ラメール王国の王族は、竜人族の王族の血を受け継いだ数少ない人種。
見た目はもう血が薄まり人族と同じようだが、いま生きている竜人の王族は、大陸におれをいれて曽祖父と父上、三人だけしかいない。
この大陸は三つの国に分かれている。
東に位置し伝説の迷い人が出現するダンジョン。
アストの森を有する国。
ピアンタ王国。
南に位置し三国の真ん中に位置するダンジョン。
メルの洞窟を有する国。
ラメール王国。
このわが国だけが、多種族を普通に受け入れている。
他の国では、やはり人族が中心だな。
あと一つ、北に位置し遺跡の樹海はあるがダンジョンがない国。
セルバ王国。
この、三国だ。
そしてこれは一応シークレットだが、わが国ラメール王国初代の王は『迷い人』だと伝えられている。
迷い人とは運が良ければ数百年に一度、隣の国ピアンタのダンジョンに現れる者。
隣の国のことなので詳しく伝わっていないが、東に位置するピアンタ王国のダンジョン。
アストの森で迷ってしまい、今いた場所から別の場所に飛ばされてしまった者のこと。
その飛ばされ迷い込んだ場所が重要で、この大陸の三国ではない他の国。
そこは宝の山の国なんだそうだ。
金銀宝石が石ころのように道に転がっていて、見たことのない素晴らしい魔道具を所有している国なんだとか……
その国の者たちと自分が今持っている物。
すべての持ち物と交換して、考えられないほどの宝を手に入れ、戻ってきた者のことを『迷い人』というらしい。
そして迷い人は、やはり元いた場所。
ピアンタ王国のアストの森に戻ってくる。
それを知っているピアンタの王族は見張りをいつもどこかにおいているようで、見つかり囲いこまれ宝を取り上げられるのを恐れ避けるため、迷い人は隠れるそうだ。
ピアンタのどこかに紛れ込むか、たいていは別の国。
ラメール王国やセルバ王国へ逃げだす。
そのとき迷い人が親切にされた人や協力者。
手助けしてくれた者たち五人を『当たり人』と呼んで特別なお礼をするのだとか……
まあ、他国からはじまることなので少しフワッと伝わっているが……
わかっていることは、『迷い人』は親切にされたことに感謝して、宝や持っている魔道具でこの『当たり人』たち五人を今よりずっと幸せにしてくれると伝えられていること。
そしてこれもシークレットだがラメール王国にも、逃げてきた迷い人はいた。
一度迷い人が現れると、当たり人を入れて最低でも六人の者が幸せになれる。
人に親切にすればもしかして、その者が迷い人で自分にも……と、人びとは期待し夢をいだく。
幸せを運ぶ迷い人とは本来、この大陸とは違う国に迷ってお宝を持って帰って来た者のことだが……
わが国の初代の王はたぶんその宝の国。
それは、竜人族の国なのだろう。
そこからお宝を持ってやってきた、竜人の国の王族だと伝えられている。
自国ではなかなか巡り会わないツガイを探しに、自ら自国の伝説を頼りにしてやってきたらしい。
そしてそのとき、側近のひとりが一緒に付いてきている。
その腹心。
懐刀とも言える側近の子孫が一緒に支える王の世代は、国が栄えるとわが国の王族の中では伝えられているんだが……
初代王はピアンタ王国の王族から逃れて、ラメール王国まで側近と二人でやってきたのか……
そして、一から数多の存在する部族を一つにまとめ、ラメール王国を作ったのだから、偉大だよ……
偉大な先祖がつくり上げた国。
それが、わが国。
ラメール王国だ。