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シゲとトキノの『ホワイトボックス争奪戦』

2人が立つ目の前に洋館。入口らしい扉が沢山あるのを、遠目からでも確認できた程、とてつもなくい大きさだった。



トキノ「おぉ~。日本には無いタイプの家だね~、3階建てかな~」


写真を撮りながら言ってくる。



シゲ「たまに大金持ちが、日本にも建ててるヤツいるぞ?」


トキノ「金持ちだね~」


レース開始時には、全力で走っていたが、この洋館に入ってからが本番だと認識すると、「焦る必要ないか」とシゲは思った。



トキノ「全部のドアに張ってある紙は、ステージ5のルール説明みたいだね」


シゲ「ルール説明って程のモノじゃないけどな。『鍵がかかってある部屋にあるホワイトボックスを手に入れろ』ってさ」


トキノ「とうとう最後だね。いこっか」



そう言いながらドアを開けて、シゲと一緒に入る。



中に入ると、入り組んだ通路である事が1目で分かった。


通路の幅も様々で、ステージ2の様に迷路じゃないかと思わせる程だった。



2人は適当な部屋に入る。



トキノ「あぁ~何て言うか、なにも言えないっていうかぁ。何も無いね」


シゲ「マジだな、なんもねぇな」



部屋には何も無かったので、他も同じかどうか見て回る。



シアタールーム。暖炉のあるリビング。ラウンジ・・・。



トキノ「多分だけどさ。『戦闘』が起きる事を、想定されて何も無いんじゃないかな?」



何もないゲストルームだけど、写真を撮りながら言う。


写真を撮っている姿が、なんだか真剣で。少しだけ、トキノに違和感を覚えながらシゲは答える。



シゲ「『戦闘』が起きるから、家具とか何も置いてないって事か・・・」


シゲ「なぁトキノ?なんか・・・変わった?」


んー?とシゲを見て首を傾げる。



シゲ「いや、なんでも無い」



なんか変なんだよなー。写真を撮る感じも、動画映えの為っていうより、何かの『参考』の為って感じがする。


なんの為かって聞かれたら答えられないけどさ。




カチカチ・・・カチカチ・・・。遠くから、聞いた事がある音が聞こえてくる。



シゲ「おっ、さっそく来た・・・この音、聞いた事あるなー」


何度も、どうやったら勝てたんだろう、と考えていた敵だ、忘れるわけない。



トキノ「この音って、ピラミッドの時の?」



トキノも気づいたらしい。カチカチ・・・カチカチ・・・。


どんどん、音が増えているような気がする。



シゲ「ここは狭い、もっと広い所に行こう」


トキノ「私も戦うよ、シゲ。一緒に戦おう」



シゲにとってはリベンジ戦だったが「一緒に戦おう」と言われ、「心強いな」と自然と思った。



シゲ「おう、ふっ、でもトキノって戦えるのかー」


茶化した風に喋りながら、廊下へと出る。



トキノ「ふっふ、ステージ3で色々試したし、らくしょーだよ。あっ、せっかくだし。視聴覚室と同じくらい広い部屋に行こうよ」


シゲ「おっ、あそこ、広かったもんな」



向かう場所はシアタールームにしたようだ。カチカチ・・・カチカチ・・・。


音だけでも2体以上いる事が分かる、ステージ2で戦ったイヌが、今遠くから2人に向かって来ていた。



V㊉



シアタールーム。



学校の体育館くらいの広さがある部屋だった。入口は1つ、ドアを開けっぱなしにしている状態。


イヌが入ってきた瞬間に、シゲの『能力』で仕留める作戦だろうか。


やたら銃口が大きいガトリングガンを構えて待機している。



カチカチ・・・。カチカチ・・・。音がもう近い。この部屋の通路に来ている!



シゲ「トキノ、準備は良いか?ほんとに、俺は撃ち続けるだけで良いんだよな」


トキノ「さっきの話を聞いたら、私なんてオマケみたいなモノだったけどねー」


シゲ「そんな事ねぇよ。すげぇよ。トキノの『能力』」


シゲの後ろに『スマホ』を構えて、立つトキノ。


2人の息はピッタリで、長年連れ添った夫婦のように落ち着いていた。



カチカチ・・・。カチカチ・・・。2体が左右の通路から入ってくる!そこから、流れ込むように、何体も、何十体も!



ガラララララララ!ガトリングガンをぶっ放す!。流れこんでくるイヌが放たれた弾丸に食らいつく、『イヌは弾丸を喰らって成長するからだ』




シゲ「2度も同じミスはしないぜ?」



ボコォォォン!弾丸を喰らった、イヌの体が爆発していく。


シゲ「『能力』を使って、最初は弾丸。『時間が経てば爆弾に変わる』ように変更したぜ、どんどん喰らってくれよ!」


イヌが喰らう前に爆発させれば、口内から破壊できる。そう予想したのだ。そして実際それは成功していた。



ガララララ!。ボコォォォン!。ガララララ!。ボコォォォン!。



何十体も破壊した。だが、問題が発生した。爆発は入口で起きている、だから『扉を含めた周囲』も破壊されてしまい、イヌ達が入る事ができる場所も増える!。


だから自然と、『本能で弾丸を喰らうイヌ』と『直接俺達を喰らおう』とするイヌで分かれた!



弾丸に興味を示さないイヌが、広がってしまった入口からなだれ込んでくる!


だが。シゲはそのまま撃ち続ける。ここから先は。



シゲ「トキノ!」


トキノ「まかせて!」



ここからは私の番だよっ。『能力』を発動する!ピタッ!世界の全てが停止する。



トキノ「停止した時間では、私しか逆再生できない。と思ってたけど『能力』は成長するんだよ」


スマホで動画を撮っている状態なら何故か手を動かせる事に気がついたのは偶然だったが、私ならではって感じで運命のようにも必然のようにも感じていた。


スマホに映る現状の風景。左右からシゲに食らいつこうとするイヌを、タッチしてドラッグ。


イヌを動かして、『位置を変更』していく。



左右にいるイヌを全て、シゲのガトリングの射線上に置き。



トキノ「こんなもんかなー。『能力』解除!」



ガララララ!ボコォォォン!。シゲから見た時。瞬き1つで左右のイヌ達が消えて、射線上に現れたのだ!


シゲ「おぉォォ!すげぇ!凄いぞトキノ!」


トキノ「へっへーん!」



シゲ「この調子なら楽勝だなぁ!」


トキノ「任せて!」



シゲ「トキノ!第2陣だ!」


トキノ「らっくしょー!」



V㊉



勝敗は既に決まっていたが、イヌの集団は、第3陣まで続いた。



シゲ「俺1人でもいけるって思ってたけど、トキノが居てくれて良かったよ」


トキノ「私も守られてばかりじゃ、いられないからね!」



腰に手を当てて、えっへん!としている。



シゲ「すげぇな、そんな便利な『成長』してたのか。『スマホ』を使うなんて、トキノならではって感じだよな」


トイノ「シゲもコウタも、2人ならではって感じだよね、『ミリタリー好き』と『医療関係』って」



シゲ「たしかに(苦笑)」



シゲ(本当は、少しでも隠したかったんだけどな。でも今はなんか誇らしく感じる)


トキノ(シゲ、大丈夫だよ。好きに生きていいんだよ?)



2人は改めて、部屋を見渡す。爆発のせいで焦げた床や壁、そして大量に積みあがったイヌ残骸。


それを見た2人は、なんとも言えない『達成感』を感じて。笑みを浮かべる。



シゲ「『鍵』は無さそうだ。トキノ、もう1戦いけるか?」


トキノ「ふっ!私達2人なら楽勝だよ」



シゲ(くくく。楽しいな。今最高に楽しいよ。トキノ)


最高の笑顔浮かべつつ。


シゲ「よしっ!いくか」



シゲは入口に向かって歩きだす。


トキノ「おぉー!・・・ッ!?」



トキノも、歩きだした。だが、違和感を覚えた、自分の右わき腹に、何か『異物』が入ってる事に。


シゲ「さて、『鍵』はどこにあるんかねー?・・・ん?トキノ?」



トキノの足音が聞こえない事に気づき、振り返る。


右横っ腹を抑えながら、ふらふらと、左右に動いているトキノ。



それを見たシゲも、異変に気付いた。


シゲ「おい、どうした!?」



抑えている右わき腹からドバドバと血が溢れていく。力なく膝をつき、倒れ込んでしまった。



シゲ「おいおいおい、なんで、なにが!?」


傍に移動して、片膝をつく。



ど、どうしたら良いんだ、血を止めないと、ヤバイ、どうしたら良いんだ。


シゲは狼狽ろうばいしていた。流れ続ける血があまりにも多く見えて、一目で手遅れだと直感で分かった。


でも何かしたくて。でも、頭は真っ白で。



シゲ「ト、トキノ。どうしたら、とりあえず、止血を」


はっ。はっ。っと、短い呼吸でなんとか酸素を取り込もうとしているトキノが、シゲの頬に手を当てた。



トキノ「シ、シゲ。いいの、コレは私が『望んだ事』らしいから」


シゲ「え?」



とにかく止血だ。どうすれば良いのか分からないまま、片手で傷を抑えているトキノの手の上に両手を当てる。


トキノ「あっ、はっ・・・はぁはぁ。ありがとうシゲ、あと、その、ごめんね、はぁはぁ」


シゲ「何謝ってんだ、謝るのは俺の方だ、ごめんなトキノ、ずっと、最初から最後まで守れなくて、あぁクソッ!」



トキノは血の付いていない左手で、シゲの頭に手を持っていくと。よしよし、撫でて。母親の様な顔しながら、話始める。



トキノ「シゲ、『ホワイトボックス』を手に入れて。欲しいモノは自分で手に入れないとね」


体から力が抜けていく、もう少しで死ぬ事が理解できる。


最後に神から許された時間のように、言葉は発する事が出来た。



シゲ「あっ、そうだRQ!トキノを治療してくれ!」


トキノ「来ないよ、私はリタイアするからさ。シゲ私の話を聞いて」


シゲ「トキノ・・・」



落ち着いた口調。何かを覚悟した様に思えた。



トキノ「ごめんね、私達が居ない方が、良かったよね」


トキノ「『ミリタリー』好きなシゲが、この世界で活躍できない理由ないもん」


トキノ「私達が邪魔だったんだよね。だから『本気出せなかった』んだよね」


トキノ「さっきの攻撃も。私達が近くにいると巻き添えになっちゃうかもしれないし」


トキノ「自分ばっかり、目立たないように、コウタに気を使ってるもの分かってたよ?」


トキノ「『私を守る事』を優先するために、『ホワイトボックス』から目を背けていた事もね」


トキノ「私の『欲しいモノ』は昨日、手に入れたからさ。シゲ、私の事も気にしないで」




トキノ「『本気で遊んで良いよ』」




『本気で遊んで良いよ』・・・その言葉を聞き、涙を流してしまう。



あぁ。バレていたのか。手を抜いている事が。そりゃバレるよな。


だって。『普通に市販されてるモデルガン』を『創造』してたんだから。


そうじゃなくても、コウタがいるなら大丈夫だろう。そんな風に考えていた事もある。



シゲ「トキノ、一緒に獲りにいこう」


その言葉がトキノに届く事はなかった。


シゲ「トキノ?なあ、トキノ?・・・」



ボロボロと涙を流す・・・。抑えている血の暖かさだけが、シゲにとってトキノとの最後の繋がりだった。





目を覚ますと、モニターが沢山ある部屋にトキノは倒れていた。ゆっくり起き上がると周りを見渡す。


洋館のどこかにある部屋の1つだろうか。



トキノ「ここ?ドコ?」


RQ「お疲れ様です。トキノ様。ステージ5は死んだ場合、即リタイアするか決める事ができますが、いかがいたしましょうか?」


トキノ「私は、リアイタします」


RQ「わかりました。では、隣の控え室で、おくつろぎください。」



そう言って、扉を開き、移動を促してくる。



トキノ「あの!」


RQ「なんでしょう?」


トキノ「RQさんが、『フック』に私を殺せと指示をしたって本当ですか?」



RQ「ええ、本当ですよ」



トキノの体の中に『フック』が引っ掛けられた時、振動を利用したのか、『フックさん』の声が伝わって来ていた。


トキノ「理由を教えてください」



RQ「貴方が1番分かっていますよね?あのまま、貴方が居たらシゲは『成長』しません、シゲを1人で目一杯『遊ばせてあげたい』」



その言葉を聞いて、トキノが気づいてしまった。


トキノ「あれ?RQさんって・・・」



RQ「ふふっ、気づいた?」



そう言って・・・髪を掴んで、バッ!っと『ウィッグを投げ捨てた』



トキノ「ッ!」





どれほど時間が経っただろうか?涙が止まらなかった。


自分の事を理解してくれていた女の子。隠せていたと思っていたのに、全部知った上で俺と、俺達と一緒に行動してくれた女の子。


トキノが言ってくれた、『本気で遊んで良いよ』。・・・ありがとう。俺、本気で遊んでみるよ。



ずっと、止血の為に抑えていた手を、ようやく放す事ができた。乾いてしまった部分があったため、のりのように手の平についてしまった。


雑に服やズボンで拭い。深呼吸する。


いつぶりだろうか、『本気で遊ぶ』のは。小学生の時以来か、中学に入ったら皆飽きてたもんなあ。



イヌの残骸だらけの部屋に、トキノを置いて出る。



シゲ「トキノ、行ってきます」





俺はトキノの殺した犯人を知っている。


どうやって、脇腹のみを狙えたのか、それは分からない。


でも、お前が犯人なんだよな?ボマー。



シアタールームから移動して、1階を散策したが。あまりにも広すぎる上に。



敵も来ない、誰も居なかった。


だから上に行ける階段を見つけた時。上に行く事を決めたのだ。



上り始めて踊り場に着くと、妙な気配を感じた。


「ふー、ふー」っと規則正しく、それも深く呼吸をしている音が聞こえた。




シゲ(だれか居るなー)


そう思いながら、踊り場から2階にいるであろう人物を見る。



ボマー「ふー。ふー。」


少しだけ空気が違うように感じる。


初めて見る光景だった、そこには、ボマーが片足スクワットをしている姿があったのだ。



シゲ(おいおい、マジかよ、そんなゆっくりと出来るもんなのか)


見惚れてしまった、カッコイイと思った。


いつでも奇襲できる様に、創造していた銃を下げてしまう程に。



当然、見られている事にボマーは気がついている。


ボマー「遅かったな。待ってたぜ。ふー」


深呼吸しなが、シゲの方を向き、そう言った。



シゲ「待ってた?」


ボマー「あぁ、『鍵』はプレイヤーの『腹』の中にあるからな。ここなら、誰かは上がってくるだろ?」


シゲ「『腹』の中にある?そんな事、『ルール説明』には無かったぜ?」



ボマー「当然だ。建物の中で手に入る情報だからな」


シゲ「・・・」


ボマー「さぁ、前回の続きを始めようか」



先手を打ったのは、ボマーだった。手榴弾がシゲの方へと投げ込まれる。


ポンッっと軽い音が鳴ったかと思うと、既にシゲが弾丸を放ち『穴』を空けて無効化していた。



シゲ「早撃ちは得意だぜ」



ボマー「いいねぇ、じゃあ、コレならどうだい?」



2人は笑顔を向け合うと同時に、戦闘というなの、『力試し』が始まった。



ボンっ!ボンッ!と2つの手榴弾が投げ込まれる。


ポンッ!ポンッ!と2つの手榴弾に『穴』があく。



ボマー「いいねぇ、どんどんいくぜ?」


3つの手榴弾が。4つの手榴弾が。5つ。6つ、7つ、8つ。・・・。



背後にも、横にも。同時だったり。時間差だったり。



だけど、撃つ、撃つ、撃つ。一丁しかない銃が、2丁、3丁を創りだしたかと思えば、お手玉のように操り、寸分の狂いなく撃つ。


手榴弾の数が増えていくと同時に、銃の数も増えていく。背後や横、上さえカバーするように。



自身を守るように、壁から、天井から、床まで。銃口が生えてくる。どうやって引き金を引いているのか?そもそも、どこに引き金があるのか。



『能力』はいったい、どこまでが『限界』なのか、使用している2人にすら分からない。


ボマーが動きを止めると、カランカラン。と器だけの手榴弾が落ちる音。



シゲ「甘いねぇ・・・ボマー」


ボマー「次は、お前の番だぜ」


ダッ!っと背を向け、走り出す。



シゲ「良いぜ?10秒だけ待ってやるよ」



楽勝だぜ。遊んでやるよボマー。俺の攻撃から身を守れると思ってんのか?ああん?


きゅーう。じゅー。準備はできたか?階段の踊り場からゆっくりと2階へと上がると、壁に2階の間取り図があった。



シゲ「おいおいおい。イージーモードかよ。面白くなってきたぜ」



地図を見ながら『銃』を創造する。見た目はデザートイーグルという銃に似ているが。『能力』の自由度をフルに使っているので、


マシンガンの様に1分間で500発は撃てるように創造されている。



シゲ「さぁて、どっちかな?順番に探していくか、どうせ扉から入ったら地雷でも仕掛けられているんだろうな」







2階どこかの部屋。ボマー視点。



さて、俺の計算が正しければ、この『厚み』で十分のハズだが、どうなるかな?


暗い場所。壁らしき場所に背を預けて座り込み。リラックスした状態で、そんな事を考える。




バラララララ・・・。と弾丸が放たれる音が聞こえる。『ここ』で聞こえるくらいだから相当デカイ音が鳴っている事が予想できる。


いや予想なんてする必要は無い。俺は、ここまで音を鳴らしているのには理由があるのを知っているし、その音を殺す為に『爆弾』を仕込んでいるからだ。



『ガトリンガン』を部屋の外から中へと撃ち込んでいる事が、映像として鮮明に『思い出せる』。


そして、撃ち込んだ先の部屋から、俺の仕込んだ『爆弾』が小さくパチパチと音を鳴らしながら爆発する。



そう、『俺』はガトリングガンを部屋へ打ち込み着弾後の『音』で『部屋の異常』をサーチしようとしていたんだったな。


懐かしい。子供の頃、森でサバゲーしていた時に覚えた、技術だ。試し撃ちで弾丸の軌道を確かめると同時に、BB弾が着弾した時の音で



野性のシカが逃げて行く音や、木に当たり反響する音を良く聞いていたものだ。



家の中でも、そんな事をしていたものだから、ペットポトルが倒れる音から反響する振動がどう聞こえるのか、イスに当たる音は?ベットは?布団は?


そんな意味があるか分からない事を、ひたすら繰り返し、遊んでいたな。


いつのまにか、自分の部屋にあるモノの位置や、BB弾を撃つ場所で反響音の聞こえ方が違う事に楽しみを覚えて・・・なんとなく、理解できるようになったんだよな。



『音の反響』で部屋の中にある家具の位置や、森の木が数と位置が。完璧じゃないけどな。完璧じゃないけど。分かるんだよなー。



その特技を生かして、『俺の位置』をガトリングガンで探そうとしてるんだろうけど?




『爆弾の音』で『うまく聞こえない』だろ?



ガチャ・・・ギギギ・・・。


ボマー「ッ!?」


弾丸の音が移動しているのが聞こえていたが、ふいに音が無くなると、ドアが開く音が聞こえた。



何ッ?入ってきた?俺がいる部屋に?なんで?『今回は完璧だったハズ』



絶対に『バレない自信があったのに』。なんでだ、なんで分かった、この部屋にいる事が!



シゲ「ここに居るんだろ?ボマー見つけたぜ?」


まだだ、まだバレてない。そうだろう?この部屋にいる事は確かだが、この部屋の『ドコに隠れているか』は分からないハズだ。



シゲ「この部屋全体に、弾丸をぶち込んでも『意味ない』事はもう分かってるんだ」


シゲ「だから、こうするよ」



何をするつもりだ?この展開は初めてだ、シゲは何をしようとしているんだ!?





シゲ視点



この部屋にボマーがいる。それは確かなハズ。多分だけどな。


でも、ボマーを探す為にテキトーに撃っても意味がない気がする。



俺の考えが間違っていないなら、ボマーは多分『自分を手榴弾の中に隠している』。


ボマーの身長は?俺よりも少し高いくらいだったか?今の俺より5センチ程高い?いや5センチって数字は思いついた数字だけどさ。


とにかく、俺よりも高い身長。じゃなくても1人の人間がこの部屋に居るようには見えない。



さらに言えば『手榴弾に隠れてる』大きさの物体があるようにも見えない。



だったら・・・ドコに隠れてる?



シゲ「考えるの面倒だわ。今だってもう、既に頭が痛いよ、考え過ぎてるって事なんだよな。テスト勉強してる時に起こる頭痛だもんな」



そう言いながら、見た事もない形、三角形の銃口の『ロケットランチャー』を創り出し、肩に担ぐ。



部屋の中から通路の方に向かって発射すると。ロケット弾が廊下へ出ると同時に、1発だったハズの弾が分裂するように無限に増えて上下左右へと意思があるかの様に動き回り、シゲがいる部屋の周りを囲むように、ピタッっと止まった。



シゲ「なんとなく分かるぜ?このままドカーンっていっても、『この部屋は』大丈夫なんだろ?もし違ったら、俺は死ぬけどな」



2つ目の銃を創造する、シンプルなハンドガンに見えるが無駄に太く、ゴツゴツしていた。ソレを部屋の外にある、ロケット弾へと銃を構える。




シゲ「さて『トキノの加護があらん事を』」



引き金を引いた。弾丸が通路へ出ると直角に曲がりロケット弾へと向かう。



着弾しシゲがいる部屋の周りが、『爆発』に包まれる・・・。



ーーー



この規模の威力にステージが耐えられなかったのか、シゲがいる部屋以外が吹き飛んだ。


それでも、やはり『絵本』の中だからだろう。少しずつ破壊された場所が修復されていく中、シゲがいる部屋だけは宙に浮いていて無事だった。



シゲ「なるほど。『部屋自体が手榴弾で、さらに何層にも構造して、天井にいたのか』」



部屋の天井部分が破損して。ボトッっとボマーが落ちて床に倒れていた。



シゲ「あれ?でも、『火薬が入っていない手榴弾は手榴弾なのか?』、まぁいいけど」


背中から血が流れているのか、カーペットが赤く染まっていく。



ボマー「部屋の厚みが・・・はっ、はっ・・・あれば・・・弾丸を通さない自信があった」


シゲ「厚みを増すだけじゃなく、何層にもする事で着弾して『穴』をあけても壁があるように工夫していたし。凄いよ」



ボマー「まさか・・・はぁ・・・天井にいる場所にまで・・・届くとは・・・」


誤算だった?本当に?ボマー。本当に手を抜いていなかったか?俺にはお前が・・・。ワザと負けているように思えてならないけどな。



ボマー「思った・・・以上に・・・はぁ、上手くいったか?ふふっ・・・ふふふ・・・」


そう言って笑い始める。やっぱり俺の考えている事が分かるのか?そういうNPCなのか?


ボマー「楽しかったよ・・・はぁ・・・はぁ・・・ありがとう」



楽しかった?ボマーも?マジかよ。そんな事言われたらよ・・・。



シゲも顔の筋肉が緩み。優しい笑みを浮かべると



シゲ「ふっふっふふふふ、俺も。久々に楽しかったよ。」



そう言うと、ポケットからスマホを取り出して、音楽を流し始める。



ボマー「俺も、その曲・・・す・・・」



ボマーの目が閉じる。最後の言葉も、最後まで言えず。死んだ。


それでもシゲは、そんなボマーを最後に弔うように、歌い始めた。



トキノ達も知らない、シゲの好きな歌、勝利を収めた時に歌うウタ。1番好きなフレーズは。


シゲ「こんな歌、歌ってゴメンな、でもこうしなきゃ俺が俺でいられない日々さ」




シゲvsボマー  シゲの勝利。 ありがとう。楽しかったよ。

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