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シゲとコウタの温泉

トキノがサキを探しに、手を振って行ってしまう。



シゲ「サキに用か・・・」


コウタ(ふぅ~、疲れた、とにかく早く座りたいな・・・)


トキノを気にするシゲに対し、コウタは無言で、ふらふらと進み始めた。



それを見たシゲが声を放つ。


シゲ「なぁ、コウタ。話があるんだ」


コウタ「おぉー、はなしー?なんだよ?」



そう答えながらも進み続ける。今すぐにでも噴水前にあるイスに座りたい事が伺える。


シゲ「待てって。そうだな。よしっ、温泉に行こう。野郎2人で入ろうぜ」


コウタ「えっ?2人で!?マジ?」


めっちゃ以外な発言で、首をビュンっと回して驚くコウタ。だが次の瞬間、(え?野郎2人で?嫌だなー)と考え、げんなりした顔になる。



シゲ「そう嫌な顔すんなよ。裸の付き合いってヤツだって」


コウタ「こわっ!」



っと両手で体を抱え、貞操を守るしぐさをする。


シゲ「おまえの体目当てじゃねーわ!」



ーーー温泉ーーー


コウタが湯に浸かり、シゲは体を洗っている所だった。



コウタ(あぁ、シゲお前、やっぱ良い体してんなー)


細く、あばらも見えるコウタと違い、シゲは筋肉質なタイプだった。



医者になれ。と勉強ばかりしていて、体を鍛えろなんて言われた事もないし、鍛える意味なんて考えた事すらなかった。


トレーニング内容なんて授業でやった事以外、ちゃんと知らないのが現状だ。


筋肉がどの位置に、どう機能しているのか、なにが原因で断裂するのか。どう治すのか、そういった事は沢山知っているが。



知っているだけ。今の所、この知識が役に立った事は1回も無い。



コウタ(いや、この『能力』を使う時に役に立ってたわ)



体を洗い終え、ジャポーンと湯に体を浸けるシゲ。ふー。と体の力を抜いていく所で、コウタからの視線にようやく気づく。


シゲ「なんだよ、ジロジロ見んなよ(笑)」


コウタ「ごめんごめん。やっぱりシゲって、筋トレとかしてんのか?」



シゲ「は?してねぇよ」


コウタ「えぇ!?してないの!?してなくて、その体!?」



シゲ「え?お、おう、そうだぞ?」


コウタ「うらやまし!めっちゃ!羨ましい!」



目をキラキラして言うもんだから、シゲもまんざらじゃない顔になる。



シゲ「はいはい。野郎に言われても嬉しくねぇよ、くっくく」


シゲ「お前はさ筋トレしたら、『能力』で体をデカくしたみたいに大きく成れるんじゃねえの?」




コウタ「バカいえ、筋肉はあんなに大きくするのは人生かけて筋トレに命かけないと無理だろうし?」


コウタ「身長に関してわ・・・どうだったっけな?ドーピングで高くできたりしたっけな?」


コウタ「薬で筋肉を大きくする危険性については勉強した事あるけど、身長に関しては勉強した事ないな」


コウタ「動体視力はどうだ?視力を一時的に上げる薬はできたとしても、副作用があるだろうし・・・」


コウタ「動体視力を上げても、反射神経も必要になるだろ?反射神経と動体視力をリンクさせるには、やっぱりトレーニングが必要じゃないか?」


コウタ「・・・ぶつぶつ」




シゲ(やっぱ医療関係の話をしだすと止まらないなぁ。コウタは)



温泉に浸かり、独り言を呟いているのを横目で見つつ、リラックスする。日は完全に落ちて月が見えていた。


シゲ(月を見ながら温泉って初めてかも・・・案外良いもんだな)



疲れた体に染み渡る気持ち良さ・・・強張った筋肉がドロドロに溶けていくような錯覚を覚えて。つい呟いてしまう。


シゲ「ここは極楽じゃー」


いつの間にか思考を止めていたコウタが笑いながら言った。


コウタ「おっさんか!」



少しの間、2人は温泉でくつろぐ。どれぐらいの時間が経ったのか分からないが痺れを切らしたコウタが


コウタ「で?」


と、なんの脈絡もなく疑問をぶつける。


シゲ(ん?)



コウタ「野郎2人で温泉なんて、なんかあんだろ?話がさ」



その言葉に被せるように、シゲは言った。


シゲ「俺。此処から出たら、トキノに告白するから」


コウタ「・・・」



長い沈黙が2人の間に流れた。


当然だった。コウタだって、トキノが好きだから、お互い気づかないハズがない。



コウタ(そうだよな。お前なら成功するよ。きっと)


コウタ(俺じゃ無理だ。今思えば・・・想ってるだけ、片思いしているだけ)


コウタ(おれは、どうだ?俺はいつか、トキノに告白するのか?)


コウタ(しない。絶対に。告白をされるのを待ってるのが俺だろうな)



コウタ(それに俺、医者になるしかない男だ、彼女?結婚相手も親が用意するんだろう)


コウタ(その人はきっと・・・トキノじゃない)



だから・・・。



コウタ「俺は・・・『医者』に成るよ」


強い声色。『決心』の様にも聞こえた言葉。


その一言が、2人にとって全てだった。



シゲ「・・・そっか」


シゲ(やっぱ、お前は凄いよ、絶対医者に成れるんだろうなあ)


シゲ(お前は『本気』になれば、なんでも『手に入れられるヤツ』なんだろうな)



その言葉を機に2人の会話は終わった。


コウタの顔は、吹っ切れた顔をしていた。



対して、シゲは。そんなコウタに憧れのような感情を抱いて・・・ちょっとだけ、自分の器の小ささみたいなモノを感じてしまった。



ーーー2人の決意。それがどういう結果になるのか、明日になれば分かる事だろうーーー

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