コウタの回想(本編にあまり関わらない為、再生不要)
コウタは夢を見ていた。
「お前は医者になるんだ、俺の親は2人とも医者だった、だからお前も医者になるんだ」
父さんの言葉だった。
母さんも医者だった。
だから俺も医者になる。
きっと俺の恋人になる人も医者になるんだろうな。
なんの疑問も持たず医者を目指し勉強していた。
成績も良かった。
中学生までは。
中学に入り、周りの人は恋愛だったり、ファッションだったり、テレビの内容、マンガ、アニメ、ドラマ・・・多感な時期、思春期。
俺の周りは皆、『勉強』以外の事で楽しく、それも毎日を過ごしていた。
俺の成績は少しづつ・・・悪くなっていた。
親からも相当怒られた、本来入学する予定の学校に行けないレベルに落ちた。
俺は医者になるんだ、でも、なんでだろう。
なんで俺だけこんなに『勉強』ばかりしなくちゃいけないんだろう。
そりゃ医者になる為だ。
こんなに勉強しているのに、どうして成績が上がらないんだろう。
なんで俺はテレビを見てはいけないのだろう?
俺も読んでみたいマンガがある・・・机の上に置いていただけで捨てられてしまったが。
可愛い子がいる、喋りかけてみたい、でも、そんな勇気はない。
どんどん、やる気が無くなっていく。
俺は・・・医者になるんだ。
塾の時間だ、さぁ行こう。
塾に向かっている途中に公園がある、いつもは寄ることなく塾に向かうが、でも今日は、なんとなく公園に寄った。
やる気が出ない。医者になるんだ。
俺は医者になるんだ。勉強しないと。
ベンチに座り、空を見た。
すると隣から声が聞こえた。
大人の女性「貴方、中3?」
スーツの胸ポケットに紫色のチューリップがあった。
色々、不思議だった、チューリップだと思う、でも異常に茎の部分にトゲがあった。
チューリップってトゲあったけ?
最近のファッション、花とか入れとくのかな?
大人の女性「貴方、中3?」
また聞かれた、俺の隣にいたみたいだけど、いつ座ったんだろう?
俺が隣に座った?・・・いや、そんなハズはない、と思う。
コウタ「えと、はい、中3です、けど?」
大人の女性「そう、やっぱりね、貴方、私の学校に来ない?」
コウタ「え?学校?」
大人の女性「そう学校、来年から始まる『フラット高校』の第1期生を募集しているの、私はその高校の校長をしているの」
校長?校長自ら募集してるって・・・。
コウタ「それってまるで『襟糸学園』みたいですね」
大人の女性「そうなのよ、『フラット高校』は『襟糸学園』の姉妹校になるわ、だから校長である私が勧誘しに来ているの」
コウタ「姉妹校、ほんとですか?」
大人の女性「ええ、ほんとよ」
コウタ「実は、俺、『襟糸学園』を目指してたんです・・・成績の関係で行けないですけど」
大人の女性「そうなの、はいコレ、パンフレット、是非入学して欲しいわ」
コウタ「・・・父さんがなんて言うかわかりませんけど、聞いてみます。」
親は『襟糸学園』に受験すらできない俺にがっかりしていた、期待を裏切ってしまった。
医者にならないと・・・。
パンフレットを見せると、父さんが驚いた。
コウタの父「『襟糸学園』の姉妹校だと!?お前、ほんとに誘われたのか?」
コウタ「うん、誘われた」
コウタの父「そうか、よくやった、よしっ、この学校にいけ!」
そして俺は今の学校『フラット高校』に入学した。
高校に入る頃には、落ち込んでいた気持ちが少しだけ楽になった気がした、医者にならないと。
周囲の娯楽にあまり触れないように、図書室に籠る事が多くなった。
ここの図書室は防音もしっかりしていて、医学的な本も十二分にあった。
最近、勉強の集中ができるようになってきた、内容も頭に入ってきてる様に感じる。
図書室で勉強している時、男子がしゃべりかけてきた。
オウタ「えっと、君がコウタか?」
コウタ「・・・そうだけど?」
手元にある何かを確認しつつ、俺の顔を見ていた。
オウタ「俺の名前はオウタっていうんだ。コウタ、ボードゲーム部に入らないか?」
コウタ「は?ボードゲーム部?」
オウタ「そ、ボードゲーム部」
コウタ「んー、なんで?俺?」
オウタ「ちょっと事情があってコウタを誘うように言われたんだ」
とオウタが言っている最中、女子が来た。
トキノ「オウタ、どう?勧誘成功した?」
一目惚れだった。その女子に一目惚れした。
オウタ「今誘ってる最中」
トキノ「ねぇ君、コウタ君だっけ?よかったら私達とボードゲーム部に入らない?」
コウタ「えっと、よろしく」