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トキノとサキの温泉

コウタが『リタイア宣言』してくれた瞬間、私達が寝転んでいたが坂道が少しづつ空気が空けるように平たんな砂漠へと変わっていった。


まるで山の形をした風船がしぼむ様に。3人は当然驚いたけど、あまりにも疲れていたせいか、全く反応しなかった。



RQが用意してくれたボートへ、ふらふらと3人が乗り込むが操縦席には誰も乗らなかった。


誰もが無言で「私は無理」と言っているのが聞こえるようだ。



そんな光景を微笑みながら見ていたRQが操縦席へ乗ってくれる。


RQ「出発します」


アクセルを踏み、RQを含めた4人キャンプ場へと向かっていった。


疲れきっているからか、RQがいるからか?ただ『失格』した事で喋りづらいのか沈黙の時間が続いた。



RQ「皆さん、お疲れ様でした」


その声が『着いた事』の合図だと分かった。



キャンプ場へと着いたときには、体力もかなり回復していた。ボートが心地良く揺れる事で、着くまでの間睡眠をとれたからかもしれない。



トキノ「ありがとうございます」


シゲ「ども」


コウタはペコリと頭を下げた。


3人が挨拶して、キャンプ場へと入っていく。



シゲ「トキノ、この後どうする?」


トキノ「私、ちょっとサキと話があるんだー。あ、せっかくだし温泉に一緒い行こうかなー」


トキノ「だからー、後で会おっか」



コウタ「りょーかい」


シゲ「おっけー」



トキノが手を振りながら、サキが居る場所を探し始める。2日目と3日目の場所を思い出すと、サキは入口から左側にあるテントを使っている傾向があるよね・・・。


そう考えなら、私はテントを順番に見て回ると、「あっいた!」とサキを見つけ、駆け出そうとしたが、足がガクガクだったので、ほとんど引きずる様に歩いて行く事になった。



トキノ「サキー」


サキ「??」


焚火の近くで本を読んでいるサキが声に反応して、トキノを見る。



トキノ「ふーふー」


サキ「フフッ・・・疲れてるね。トキノ、お疲れ様」


近くにあったバッグから水を取り出して、トキノへ渡す。




トキノ「ふー、ありがとうサキ」


受け取って、ゴクゴクと飲む。「ぷっはー美味い!」とCMで流れそうなほど爽快に言った。


サキ「後でRQに頼めば良いよ、えっと・・・マッサージ師?を呼べるんだ」


トキノ「えぇ!?そうなのお?絶対呼ぶ!」


トキノ「この疲れた体がほぐれるんなら、願ったり叶ったりだよ!」


トキノ「シゲ達にも、教えてあげよーっと」



っとスマホ取り出し、指を高速で動かすと・・・



トキノ「メッセージ送れないんだったー!」


サキ「ぷっ、ひっひっひひひ」


サキの笑いにトキノが驚いたが、トキノもつられて笑った。



サキ「ここに来てから、その・・・。本当に水が美味しく感じるよね」


トキノ「たしかにっ!大体ジュースばっかりだからねー。水を飲むって事自体が少なかったかも」



サキ「私もそうだったなー。えっと、それで?どうしたの?」


「あっ、そだった・・・」と言って、ドヤ顔しながらサキに言った。



トキノ「今から温泉行こう」




ーーー温泉ーーー




サキ「ふわぁあぁぁぁぁ~」


トキノ「ふわぁぁぁぁああぁ~」



じゃぼ~んと温泉に浸かり、2人して同じ声をあげる。



トキノ「ねえ、サキってさ凄いねぇ~」


浸かり始めたばかりだし、体が休息に筋肉を癒し始めたため、トキノの言った言葉をよく聞いていなかった。



サキ「ん~?なんてー?」


トキノ「私達さ~、今日のステージ『失格』だったんだー」


サキ「ふふっ、そっか・・・そういう事もあるんじゃない?」


トキノ「そうかなー?でも皆クリアたんでしょ?」


サキ「でもほら昨日はさ、大人のあの人達も『失格』だったし?普通の事なんじゃないかなー?」


トキノ「・・・。たしかに?そう言われたらそうかも?」



ふわぁああ~っと、また2人がリラックスし始める。


トキノ「ねぇ、その・・・さ」


サキ(トキノらしくない、珍しい・・・どうしたんだろ?)



トキノ「サキってほら、ここに来てからさ・・・その、ちゃんと?って言うのも変だけどさ」


トキノ「喋られるようになったじゃん?・・・その、なんでかなーって気になってさ」



喋り方はいつも通りだったけど、遠まわしに、でも確信を知りたがってるのが分かる。


だからサキは、トキノが『ホワイトボックス争奪戦』に本気で乗り出してきたと理解する。



サキ「トキノ・・・あぁーそういう事?そっか、第3レースをクリアできたのってトキノが頑張ったんだね」


トキノ「え?なんで?昨日の事はサキに話して無かったよね?オウタとお嬢にも詳しく言って無いけど、2人に聞いたの?」



サキ「んー、いや、聞いてないけど・・・トキノが聞きたい事ってさ、多分だけど・・・多分だよ?『夢中だったんじゃない?』」



第3レース中の敵を倒す時、とても『高揚』したんじゃない?


だから私に、この『絵本』に入ってから『変わった事』と、トキノ自身の『高揚』が重なって見えた?思えたんじゃない?



トキノ「・・・。私さ、ずっと気になってたんだ。サキが『小説』を読んでる時。その、なんて言うのかな『めっちゃ真剣だった』からさ」


トキノ「良いなぁーって、思ってたんだ。そんな『最高の瞬間』を『生きてる気』がしてさ、『小説』のおかげかな?私は読めないからなー」


トキノ「だから私も・・・動画を見てくれる人にさ、そんな目を『視聴者』にもして欲しいって思いながら作ってたんだけど」


トキノ「なんか、違う気がしてさ。みんなで『楽しい時間』を過ごすのは、私も楽しかったけど・・・」


トキノ「私が本当に作りたかった動画ってさ、サキが『真剣に読んでる瞬間』のような『前に進みたくなる動画?』、『本気で夢中に成れる動画?』だったんだよね」


トキノ「あー、ごめん。なんか、こう。ちゃんとまとまらなくてさ」




分かるよ。


トキノ、私はね。ずっと『生きてこれなかった』んだよね。


ずっと、アニメとか小説とか、マンガとかさ。読んで、『現実から逃げてさ』。


それで、結局なにがしたいの?って人生だったんだ。


なんで、ずっと小説とかマンガとか読んでたかっていうとね、この『絵本』の中に入ってようやく『わかった』んだ。




トキノ「なんだったの?」


ーーー私はね、『こうやって生きろ』っていうアドバイスを求めたんだ。ーーー



物語ってさ『起承転結』ってあるじゃん?


人生ってさ、そんな風に順序立てて生きる事できないし。


いいよね、『夢の成就』。『復讐の終了』。『結婚』。『自由』。『英雄』。『世界やヒロインを救う事』。


私が1番好きだったのは最後に『主人公が死ぬ物語』なんだよね。綺麗だよねそんな終わり方。



なんで、この物語の主人公達ってさ、こんなにちゃんと、生きる事が出来るんだろう?とか、ちゃんと悪役になれるなんて良いなーって。


私だって・・・生きれるなら、そんな生き方してみたいよって・・・。


だから、私はね。




『私の生きる使命が、目的が・・・結末へと向かう理由を物語から手に入れようとしていたんだ』




トキノ「今は手に入れたの?」


手に入れたよ。


トキノ「それって・・・なに?」




ふふっ!決まってるでしょ?『ホワイトボックス』だよ。


欲しいモノの為に、今は生きてる!




トキノ「ッ!?・・・なるほど・・・そういう事なんだ」



私達は『ホワイトボックス』欲しさに生きるべきなんだよ。



トキノ「大事なのは『中身』だよね?」



そうだよ、大事なのは『中身』だよ・・・もう何が入ってるか、分かってるんでしょ?トキノもさ。



トキノ「分かるよ、でも皆・・・『納得しない』でしょ!?」



ふふふ。そこで大事なのが、第1レースから第4レースなんだよ。



トキノ「??」



トキノが知りたいって思った『原因』は『高揚』でしょ?『夢中』だった?『最高』だった?


ソレが答えだよ。私は今。欲しいという『欲』で『生きていられる』。


大事なのは『中身』だよ?まだ納得できない?




トキノ「RQが言ってた・・・勝者に『栄光』を。敗者に『成長』を。・・・って、でも『勝利を収めた時には言わない言葉』」




『栄光』は『敗者の手』によって与えられるモノ。


そんなモノにどれだけの『価値』があるんだろうね?




トキノ「勝てるから手に入れたモノ・・・そこに見いだせる『価値』?」




難しい言い回しできるんだね(笑)そういう事。『成長』した結果が『勝利という栄光』って感じ?




トキノ「分かった気がする。私がこれから作るべきモノ、やるべき事・・・だったら『私がホワイトボックスの中身を・・・』」




ーーー心の赴くままに行動せよ。それが進みたい方向でしょ?ーーー

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