食事とケンカ
時刻20時。
サキとサトミ以外が寝てしまったせいで、最終的に集まって食事する時間が昨日よりも遅くなってしまったが、この世界で時間を気にする必要はない。
好きな時間に起床し、朝食をとり、今日のノルマのステージへと向かい、次のキャンプ場へと向かう。
朝昼晩とRQに頼めばなんでも好きなモノが出て来るし。夜は好きな時間に寝れて、温泉も入れる。
楽園や天国と揶揄されてもおかしくない場所ではないだろうか?
トキノ「わかるよ?たしかに、ここは楽園かもしれない!ただ1点を除いては!」
オウタ「おうおう、1点?なんだ?なにが不満だ?」
サトミ「十分じゃありませんこと?お手伝いさんが居なくてもRQがいますし」
バッ!とスマホを皆に見せつけて言った。
トキノ「SNS!投稿ができないの!それが1番問題だよっ!せっかく写真もいっぱい撮ったし」
トキノ「これから動画編集しようかなあって思ったけど、意味ないじゃん!投稿できないんだから!」
トキノ「それに見て!全然気が付かなかったけど、日付が変わって無い!昨日の同じ日になってる!」
トキノ「完全に壊れてる、電波障害ってやつ!?コレが!?」
日付についての話題が出たので、各々の携帯を取り出して確認すると。
たしかに、昨日と全く変わらない日付だった、時間は通常通り動いているように見える。
シゲ「マジだ」
コウタ「なあ。オウタとサキってメッセ飛ばしてたり、オウタは電話もしてたよな?」
コウタ「履歴の時間ってどうなってるんだ?」
オウタ「確認してみる。・・・メッセは朝の時間に飛ばしてる事になってるし、電話は・・・やっぱり今日っていうか昨日の時刻になってる」
トキノ「今確認したけど、SNSの更新もされてない!昨日の最新状態のまんま!でもっていうか、コレじゃあ電波はあっても意味ない!」
シゲ「トキノ・・・やっぱり、写真とか動画ってこの世界の外に出たら、全部飛んじまうかも・・・」
トキノ「・・・」
トキノがまたも固まった。
・・・
トキノを皆でフォローしながら、『迷宮ピラミッド』内で何があったのか、どんな行動をしたのかを報告しあった。
1番の驚きは、サキの報告が、おどおどせずに普通に喋っていた事だったし、イヌとの戦いで勝利した事なんて妄想じゃないかと思っていたくらいに衝撃だった。
2番目の驚きは、コウタが大きくなっていく映像や、前腕から弾丸が溢れ出るシーンだった。SNSに投稿してたらバズってたかもしれない。
食事をとりながら、一通り報告を終えた時。
サキ「オウタの行動は間違ってたかもしれない」
と声が発した。
オウタ「え?」
オウタだけではない。5人が驚いていた。普通に喋るだけでも驚きなのに、意見するなんて初めてだった。
サキ「さっき確信した事がある、昨日の第1ステージの意味は『能力の使用と観察』
サキ「なら今日の第2ステージは『能力の成長と進路の決定』じゃないかなって」
サトミ「『能力の成長と進路の決定』?なんでそう思ったのかしら?」
第2ステージの意味についてサトミは知りたがった。だがサキは自身の考察を話続ける。
サキ「さっきも話したようにオウタはカンガルーを倒せなかった、カンガルーは『遠距離』でしか倒せない設定だったんだと思う」
サキ「実際、オウタの『能力』だけど、モグラのように『穴を空ける方向』を制御できるように『成長』したと判断できる思うんだ、そして倒した。」
サキ「サトミも、『ウニの様』に動けるようになったし、シゲも『ただの弾丸以外』も撃てるように『成長』させたとも判断できる」
トキノ「んーたしかに?でも待って、それならオウタの行動が間違いってのは、おかしくない?ちゃんと『成長』してるじゃん?」
トキノは『オウタの行動は間違い』という点について指摘した。
サキ「オウタの『サトミを助けるっていう行動』がダメなんだよ、サトミはカンガルーを倒せなかった、なのにオウタは鍵を持ってたから。サトミが『カンガルーを倒せない状態』で一緒に出ちゃったんだもん」
サキ「これは『サトミの成長』を『邪魔しちゃった』事になる・・・現に今、サトミとカンガルーが戦っても勝てない状態だし」
オウタの話をしていたのに、サトミに対しての発言へと変わる。
サキよりも自分が劣っていると言われたみたいで、サトミはイラだつ。
サトミ「ッ・・・分かってますわよ!」
サトミ「いいから、もう1つの『進路の決定』っていうのは何?」
事実を蒸し返されて、八つ当たり気味に質問した。
コウタ(たしかに、サキの言う通りだ。俺も巨体とイヌを通して『能力』をどう『扱う』か学ぶ事ができた)
コウタ(でも、俺達は3人で行動していたから・・・その理屈で言うなら・・・)
コウタ(トキノとシゲの『成長』を俺が妨げた事になる)
そう思い、トキノとシゲを見ると。
シゲはサキを睨んでいた。トキノは何故かサキを見て目が輝かせていた。
トキノ(サキ・・・良い目をしている、あの時と同じ目。サキ、もっと教えて、何を知れば良い?)
シゲ「・・・おぃッ!サキ、調子乗るなよ?」
シゲの一蹴で空気が一気に変わった。
5人の視線がシゲの方を向く。
シゲ「昨日まで、ビビッて普通にも喋れない・・・俺達の後ろに隠れて安全な場所にいたお前がよぉ」
シゲ「ちょっと今日、上手くいったからって・・・なにか閃いたみたいだけど?」
シゲ「・・・オウタに間違いを指摘してるんじゃねーよ・・・」
八つ当たりだった、だってよ、だって・・・仕方ないじゃないか。
俺達は3人で行動している・・・。その理屈なら、バラバラに行動しないと、意味ないって事。
実際、コウタのせいで、俺はその『成長』できなかった・・・。
俺はカンガルーを倒した・・・でもそのせいで、コウタもトキノも・・・俺のせいで?
ふざけるな・・・!
シゲ「ソレだって・・・サキ、お前の仮説だろ?」
シゲ「『チーム戦』だって可能性も十分にあるだろ?」
シゲ「大人達だって、俺達の知らない所で『結託』している可能性もある」
シゲ「実際、俺達より早くクリアしてないと、おかしいんだ、俺達よりも先に進んでいたんだからよ」
サキ「大人達が時間ギリギリまでステージに居たのには理由がある」
サキが説明しようとするが、食い気味でシゲが言う。
シゲ「その理由だって仮説だし。どうだって良い!」
シゲ「そもそも、この『ホワイトボックス争奪戦』だって、半分強制だし、参加する必要だってないんだ、RQが言ってた17時にリタイアできるってな」
シゲ「真面目に取り組む必要なんてない、だろ?」
その言葉は自分に言い聞かせる言葉だった気がする。自分を納得させるために。
シゲは誰も見なかった、焚火に視線を移し、気持ちを落ち着けようとする。
疲れていた、少しは眠ったけど、まだまだ疲れてる・・・。そのせいだ、そうに違いない。
サキの指摘はオウタに対してだったけど。自分も責められている気もした。
コウタよりも弱い自分にも、トキノに対して何もできない無力さ。
シゲの心を刺激するには十二分の理由が揃っていた。
シゲの調子が悪い。皆すぐに察する事は容易だった。
サキは第2ステージを誰よりも早くクリアした為、休憩する時間は長かったが、
他は違う。美味しいご飯を食べたとしても、疲れが完全に癒える訳じゃない。
だから・・・だから、誰も何も言えなかった。
だから、次のサキの行動にも、誰も何も言わなかった。
サキ「確かに『必要』は無いよね」
そう言って、立ち上がり背を向けて歩いていった。




