巨体vs巨体
コウタがトキノから地図をもらい先導していく。
既に地図の半分を進んでいる事になっているが。なんの変化もないので、またも緊張感は無くなっていた。
トキノ「全然、変わり映えしないねぇ、ねぇねぇ『ホワイトボックス争奪戦』どうする?」
シゲ「ん?どうするって?ちゃんと参加するかって意味?」
コウタ「17時まで待機してリタイアする方に変更するか?」
トキノ「そうじゃなくてさ、この『異常』な状況をさ帰ったらSNSに投稿する?って話だよ」
シゲ「俺はてっきり、動画にして全部ネタにするかと思ってた」
コウタ「信じてもらえないだろうからな、くっくく。投稿してもバカにされるだけだろうな」
本当の事だったとしても証明できなきゃ意味ないし。証明できたとしても、だから何?って感じだろう。
SNSで拡散したら、みんなにも『ホワイトボックス争奪戦』の参加の権利が与えられるなら話は変わるだろうが。
トキノ「やっぱそうだよね。動画とか写真とかいっぱい撮ってるけど、無駄になっちゃうかも」
シゲ「加工して、なんか面白おかしくしたらどうだ?」
コウタ「んー、エイプリルフールの時のネタくらいにしかならないかもなー」
トキノ「エイプリルフールかぁ、なるほどね。『ホワイトボックス』さえ手に入れば。もしかしたら信じて貰えるかもしれないけど」
シゲ「『ホワイトボックス』ねぇ」
コウタ「おい、向こうから何か聞こえるぞ」
思ってた以上に何もなかった。だから緊張感をなくしていたが。コウタのその発言に2人もピリつく事になる。
シゲ「ちょっと端に寄れ、見えない」
シゲがコウタの隣へ行き、トキノはコウタの体の大きさのせいで先が見えない、ただただ息を潜める。
3人は自然と黙って静観した、だから通路の向こうから、ズチャ・・・ズチャ・・・と足音が聞こえ、2人はソレを見た。
巨体、脳みそをむきだしにした頭、血管なのか細いチューブなのか分からないが、皮を全て剥いだ全身に張り付いているいるように見えた。
サキがプローテと名付けた敵だった。
コウタ「敵は大人達だけじゃないみたいだな」
シゲ「どけ、俺の能力で穴だらけにしてやる」
トキノ「なに?なにがいるの?」
シゲは着弾した時、穴を空ける事ができる銃を創った。リボルバー銃を想像してもらえば良い(Ⅿ629の8インチに似ている)。
プローテは動きを止める事なく、規則的に歩いてくる。ズチャ・・・ズチャ・・・と。
コウタ「トキノ、こっちに、アレだ敵は大人達以外にもいたんだ」
コウタの巨体と同じくらいの大きさの気持ち悪い敵を見て、驚いたトキノ。
トキノ「うわ・・・きもちわるい!」
シゲが撃った。バァッン!バァッン!2発の銃弾がプローテの方に向かっていく。
巨体の手が動いた様に見えた。3人はなんとなくわかる、巨体に穴が空いていないという結果を。
なんとなく?何故?トキノは驚きながらも目を離さなかったし。コウタも一緒に見ていた。
シゲは撃った張本人。なのに、なんとなく動いたように見えた。
プローテは音が鳴った瞬間、高速で、自分の方に向かってくる銃弾を・・・つまんでいた。左手の指で1発。右手の指で1発。
その動作は3人には目視できなかったから、『なんとなく』という表現になったいたのだ。
シゲ「銃弾を受け止められる程、反射神経が良いヤツって事かよ」
コウタもトキノも、なにも言えなかった。
シゲ「ならコレでどうだ!」
シゲは別のなにかを創ろうとした・・・そう創ろうとしたが、それが叶う事はなかった。
シゲが急に、膝をつき、後ろに倒れたからだ。
コウタ「??」
トキノ「??」
バタッ・・・。バァァン!バァァン!。
銃声の音は、シゲが倒れた後に聞こえた。
プローテの方から聞こえた銃声。2人は自然とプローテを見た。
プローテの姿勢から2人は、止めた銃弾を、ビーダマやおはじきを弾くように、シゲに向かって飛ばしたと理解した。
コウタ(ーーー)
コウタの体は勝手に動いた。シゲが死んで、自分が敵を倒さないといけないと。脳が理解していた。
走り出し、トキノを守るような斜線でプローテの方へ走りだす。シゲと同じ殺され方を防ぐ為に。
いつのまにか、【コウタの瞳の文字が『不幸』】に変わっていた。
巨体vs巨体の構図。20センチ程コウタが低いが、それでも大きさ的には十分だった。
バシッ!バシッ!・・・お互いがパンチしていて、お互いが受け止めていた。
ズチャ・・・。ザッ・・・。お互いが全力でパンチを繰り出すため、足を地面にめりこませる。
トキノ「し、シゲ!」
ちらりと、シゲを見るが、バンッ!バンッ!と凄い音を鳴らしながら、戦うコウタに目が吸い込まれる。
トキノの動体視力では、コウタとプローテの拳と拳の殴り合いをちゃんと見る事はできなかったが、
バシッ!バシッ!っと鳴る音と、残像の様に、複数見える腕だけが見えていた。
お互いに拳に体重を乗せる為だろう、上半身を前へ倒し、相手を前に押し込むパンチを放つ。だがどちらも後ろに体制を崩す事は無かった。
その殴り合いは均衡を保っているように見えて、長く続く様に思われたが。開始から、わずか15秒後コウタのバックステップにより戦闘は終わる。
トキノ「・・・終わったの?」
コウタ「・・・やったか?」
コウタ(どうだ?コレで終わったハズ、この巨体も動かなくなったし、成功したよな?)
トキノ「コウタ?」
コウタ「多分・・・終わった」
まだ確信を持てないのかプローテの方を向いたままだ。
そう言っている間に、プローテは目や口から血を流し始め、バタッ・・・っと前へと倒れたのだった。
コウタ「よしっ」
ガッツポーズするコウタ。
トキノ「お、おー?なんで?えっと、よしっ?」
頭に?を浮かべながら、とりあえずガッツポーズをしたトキノだった。
プローテvsコウタ コウタの勝利




