オウタvsカンガルー
駄目だ、やっぱり全然会えない。やっぱり地図によってゴールまでの道筋が違うんだ。
もっと早くに気がつけば、トキノ達と別れず一緒に行動してたのに。
って事はシゲを探しているであろうトキノ達も、シゲと合流出来ずにいる可能性は高そうだな。
うーん、もう引き返す意味も無いし、サトミとの合流も諦めるべきだろうな・・・。
進むか。キャンプ場に向かう他なさそうだし。
プローテやイヌを難無く倒してしまったせいで、ずっと歩いている印象だった。
他の人なら『第2ステージ』の印象は、敵のプローテやイヌと戦った事が最初にくるだろう。
だがオウタにとって『第2ステージ』はただの『迷路』とキャバ嬢による『妨害』の印象しかなかった。
そんなオウタが歩き続ける事ができたのは『サトミとの合流』という目的があったからだ。
だけど、今サトミは全く別のルートを辿っているだろうという考えによって。
『サトミとも合流できない』という結果に落ち着いてしまった。
だからだろう。急激に、どっと疲れた。
オウタ「・・・ふぅ・・・疲れた」
そういや俺、飯食ったっけ?ちょっと休憩しよう。
オウタ「RQさんなにか食べたいんですけど」
独り言のように呟くと。RQが大きいおにぎりを持ってきてくれた。数は4つ。
RQ「シャケと、梅が入っています」
オウタ「ありがとうございます!僕の好きなヤツです!」
思いがけず、自身の好きな具が入っていたのでテンションが上がる。
コレを機に、オウタは座り込み食べ始めた。
はぁ、なんか疲れた。昨日の天然の温泉気持ち良かったな。『絵本』の中で『天然』って言葉が正しいのか知らないけど。
今がめっちゃ、入りたい気分だわ。昨日のゴーレム戦、今日の迷路・・・今日を含めなくても後3日は続くのか・・・。しんど。
おにぎりは美味いッ!しっかり握られてるのは見た目で分かるのに、口にいれたら、ふんわりしていて。具もたっぷり入ってるから、ごはんだけしか無いって所が無いんだよなー。
今までで食べた中で1番美味いかもしれねー。
いつもは炭酸が飲みたい気分になるけど、何故かお茶って気分に成ってる・・・美味いおにぎりを食ったらこうなるのか?
RQに、お茶くれって言ったらイケるかな?
オウタ「あのRQさん」
RQ「はい、なにか御用でしょうか?」
オウタ「お茶とかって・・・もらえます?」
RQ「こちらをどうぞ」
オウタ「おぉ、出してくれるんだ!ありがとうございます」
RQはペコリと頭を下げ、いつの間にか消えていた。
この急に来て、急に帰る感じも慣れてきたな。
なにか食べたいって言ったら『おにぎり』が出て来たから、飲み物も決まってるかと思ったよ。
ゴクッゴクッ!冷たいお茶を胃に流しこむ。茶葉の香りが鼻を通り抜け、のど越しはスッ駆け抜け、胃が冷えていく。
オウタ「くっ~~~!」
オウタはお昼を堪能した後、出口に向かって歩いていた。
もう少しでゴールだなぁ。と考えていた時、通路の向こうの真ん中に何かがいた。
それが何であるか分からなかったが警戒する事なく進む。
何が来ても、どうせ俺の敵じゃあねぇー。
ん、見えるようになってきた。茶色・・・あれはカンガルーか。
あの巨体とかイヌの方がまだ『敵』っぽかったけどな。アレはどんな攻撃してくるんだろうな。
ザッ・・・ザッ・・・。と砂を踏みしめて、オウタは進むと、カンガルーの顔が見えるようになった。
オウタ「ウザッ!」
つい言ってしまった!いやだって、めっちゃウザイ顔してる!なんだあの顔!めっちゃ挑発してくるじゃん!
さらに首元にネックレス・・・鍵だ!鍵も持ってるぞあのカンガルー!
クソッ!あの顔を見たらさ・・・殴りてえ!めっちゃ殴りてぇ!国民的アニメでぬいぐるみを定期的に殴るキャラがいたけどさ、そのキャラみたいに暴力的にはなりたくないって思ってた時あるけどさ!
あのカンガルーがぬいぐるみなら俺も殴る気がする!いや!殴る!
鍵も手に入るしあの顔を殴れる一石二鳥!
生きている犬だったら、攻撃しずらい気持ちになるオウタ。本来なら生き物としているカンガルー相手にも同じように思うハズだったが。
あまりにも、人を怒らせる顔をしているカンガルーだった為、普通じゃない気持ちがオウタを襲った。
オウタはカンガルーに向かって走っていった!
カンガルーはウザイ顔をしながら、まだ待機している!
オウタの拳がもう少しで届く!
オウタ「その顔面に穴あけてやるからな!カンガルー!」
オウタとの距離が5メートル程になった時。
ザァァァァァ・・・っと両隣の壁から砂が盛り上がり、カンガルーに攻撃できないように、新たな壁が出来上がる!
オウタ「おいおいおいおいおいおい、ちょちょ!まてって!」
完全に出来上がった壁の前でオウタは立ち尽くす・・・。
オウタ「ま、まぁ、関係ねぇ!殴って穴をあければ済む話!」
オラッ!っと目の前の壁に穴をあける。
穴が空いた向こうに、ウザイ顔をしているカンガルーが見える。
すかさず、さらに2発目のパンチを繰り出す!穴に拳が通り、ガンガルーの顔にちょく・・・げき、する事は無かった。
オウタ「は?」
穴が修復され、拳がピタッっと止められた。
壁に対するダメージは時間によって修復されるのだろうか?
今わかるのは拳が壁の向こうにあり、腕が壁に埋め込まれている事。そして動かしても砂が崩れたりはしない事。
ペロッっと拳を舐められた。気持ち悪さに、ぶるっ!っと体を震わせて。
オウタ「気持ちわりぃィィ、なめるなァ!」
さらにペロペロとなめられる。
オウタ「あぁ気持ち悪い!早く抜かねぇと」
力の限りを尽くし、腕を引き抜こうとするが、全く抜ける気がしない。
オウタ「あっ、そうか!」
俺はもう一つの拳で、壁を殴ると、ボンッ!っと穴が空く。
その穴に腕をスライドさせ、壁から抜く事に成功した。
オウタ「あっぶねぇ!もう抜けないかと思った・・・くっせぇ!」
舐められた拳に唾液が、ぬら~っと張り付いていた、めっちゃ臭い!気持ち悪い!
大丈夫、穴をあけて高速でパンチする!そして腕を戻す、早ければ成功するはず
・・・
オウタは1度目の失敗から、何度も同じ事を繰り返していた。
コレ、アレだ、アイツに攻撃させないように壁が修正されるんだ・・・
じゃないと、理にかなってねぇ・・・くそっ!どうしよう・・・。
オウタ「はぁ・・・はぁ・・・疲れた」
何回チャレンジしても、当たりそうで当たらない所で壁が修正される。
その度、壁に穴をあけて、スライドさせて腕を戻す・・・。
1番嫌なのは。なめられる事だ!
穴をあければ、ウザイ顔を拝む事になるし、腕が挟まれたら、なめられて気持ち悪いし!
くそぉ、疲れた、休憩だ・・・うっ、くっせぇー。
・・・
何度も試した結果分かった事だが、カンガルーは全く動いていないが、穴を空ける事はできても、カンガルーに近づけば近づく程、空いた穴が閉じる速度が上がる。
たった今、地面に穴を空けてみたが、少しづつ修復している事からも仮設は当たっていると思う・・・。
地面はカンガルーとは関係の無い場所への『穴』。ステージとして破綻しないように修復されるのかもしれない。
オウタ「しかたない、迂回するか」
地図を確認し、カンガルーがいる場所へと迂回すれば殴れるだろ。
・・・
地図を確認し、本来のルートに外れる道を進み、カンガルーを目視できる通路へと出た。
オウタ「次は逃がさないぞ!」
さっきは余裕かまして、ゆっくり近づいていったから壁にガードされる事になった。
なら・・・ダッシュする!
ザザザザッ!と本気で走り出す!すると左右の壁から砂が伸びてきて、さっきと同様にカンガルーを守るように壁を作ろうとしている。
オウタ「いけるっ!」
この速さ、この距離なら、最初の1発を当てる事ができる!1発当てられたら、それで勝利だ!
両壁から砂が盛り上がり、新たな壁が出来上がろうとしている。・・・ザァァァァァ!
オウタ「オラァ!」
拳が、ウザイ顔をしたカンガルーの顔面へと・・・。
当たる!・・・事は無かった。やはり顔面へと近づく程、速く壁が修復されていく。
またペロッっと拳が舐められる結果となってしまった。
オウタ「クソッ!クソッ!クソッ!」
イライラする、クソッ!上手くいかねぇ、迂回もしてもダメか?
ダッシュしてもダメ?じゃあどうすれば良い?意味不明だ、絶対勝てねぇようにできてるとか?
オウタ「クソッ!クソッ!」
ボッ!ボッ!っと壁を殴りまくり穴を空けまくる、カンガルーとの距離が近いからか、すぐに修正されていく。
オウタ「シゲがいたら遠距離で速攻なのにな・・・」
ドスッっと座り込んだ。オウタはイライラしている。
完全に詰んでしまった。これ以上何ができるのか思いつかないみいたいだ。
プローテやイヌを難無くクリアしていた事から今回も簡単だろうと思っていたが、まさか、こういう形で敗北の味を知るなんて。
勝負になってねぇ。ソコが1番のイライラだった。
オウタ「少なくとも勝負しろよ!」
また、壁を殴る。
落着きを取り戻す為、上を見上げる。天井が見えない暗闇をボーっと見る。
ザッ・・・ザッ・・・。
それでも、イライラが収まらなかったが、遠くから足音が聞こえた。
誰だ?誰かがこっちに向かって来ている・・・キャバ嬢か?でも足音は1人っぽいな。・・・サトミかっ!?
ザザザ!っと急ぎ、音が聞こえる方へと走る。
そして、通路の先に居た人物を目撃する!
オウタ「サt・・・サキ?」
サキ「お、オウタ?」
警戒していたのか、オウタに向かって『銃』を向けたサキが居た。
・・・
オウタの期待とは裏腹に、通路を歩いて来たのはサキだった。
ガッカリしたが、よく考えたらサキが1人で行ったと知った時に心配していた気持ちが、ぶり返ってきた。
サキも、オウタと出会いに安心した。
まだ1日も経っていないのに、2人は旧友に会ったかのように笑顔を作り、食い気味に今までの経緯を話していた。
サキ「イヌがね!めっちゃ大きくなってね!オオカミ並みに大きくなったの!」
オウタ「あのイヌって食えば食うほどデカくなったの?!」
オウタ「こっちはな、イヌも、巨体も簡単に倒せたんだけどな」
サキ「えぇ!?簡単に!?」
オウタ「それは良いんだ、その前にな?キャバ嬢がさコウタを殺してよ」
サキ「えっ!?キャバ嬢が!?」
オウタ「そ、そう!サトミを使って、俺を殺して」
サキ「サトミを使うって!?どういう意味!?」
・・・
ひとしきり2人は現状を話あった後。最後に壁の先にいるカンガルーが倒せない事についての話なった。
オウタ「この壁の向こうに居るんだけどな、俺の能力じゃ倒せないんだ」
サキ「それは・・・変だね」
オウタ「変?なにが?、あぁでもサキ、サキはその『銃』で撃ち抜けたんだろ?」
オウタ「だったら今から俺が穴を空けるからさ、その隙に撃ってくれないか?」
そう言って立ち上がり、壁に向かって殴った。
サキ「ソレだよ、ソレ。ソレが変なんだよ。私は銃で簡単に倒せたけどさ。オウタの説明が正しい場合」
サキ「私の銃弾さえ届かないハズなんだよ」
オウタ「ん?どうゆう事だ?」
サキ「近づけば近づく程、壁がカンガルーを『ガード』する用になっているなら、私の『銃弾』はカンガルーに『着弾』する前にガードされるハズなんだよ」
オウタ「?・・・たしかに?」
サキ「でも、私はなんの障害なく撃ち抜いた・・・」
そう言って、ポケットから『鍵』を出す。
カンガルーは自分が被害に遭わないようにガードしてくる。
なのにサキの『長距離の攻撃』にはガードせず、オウタの『直接な攻撃』にはガードする。
サキ(普通は逆じゃない?いや逆もなにも、どっちもガードするか)
サキ「多分だけど、何か意味があると思うんだよね」
そう言って考え始めた。
オウタ「なぁサキ、考えるのは後にしないか?とにかく、やってみないか?」
オウタ「俺が穴を空けるから、向こうにいるカンガルーに向かって撃ってくれよ」
もう1度壁を殴り、穴をあける。
サキ「・・・嫌だ」
オウタ「・・・え?」
嫌だ?そう言ったのか?サキが?
オウタ「・・・え?なんて」
サキ「嫌だって言ったの」
オウタ「なんで?」
サキ「分かってきた気がする、オウタ、コレはオウタが自分で解決するべき問題だと思うから」
オウタ「できるなら、そうするけど・・・もう、どうすれば良いか分からないんだ」
サキ「そうだ。多分そういう事だよ『ホワイトボックスの中身』は多分・・・」
オウタ「『ホワイトボックス』?」
サキは急に立ち上がり、こう言った。
サキ「オウタ、よく聞いて。私の『銃』は弾丸が対象に着弾したら、穴を空ける特別な銃なんだよ」
サキ「これは、よく考えれば『オウタの能力』よりも強くて、『シゲの能力』とも被るんだよ」
サキ「拾った『武器』が『能力』よりも強いなんて事、考えにくいと思わない?」
サキ「あとは自分で考えないと駄目だと思う。オウタ頑張ってね」
サキはオウタに背を向けて歩いてしまった。
オウタ「ちょちょちょ・・・おいおいおい、教えてくれよ!」
サキ「オウタならきっと分かるよ、キャンプ場で会おう」
少しは止まったけど、すぐに歩いていってしまった。
いつもの違うサキの雰囲気も相まって、オウタは動けずにいた。
サキは鍵を手に入れているから、ついて行って2人でクリアすれば良かったのだが・・・時すでに遅し・・・。
・・・
サキ、いったいなんだったんだ?結局、自分で考えろって事?
いやいや、でもさ、考えた結果わかんねーから『協力』しようって言ったと思うんだけど。
あーでも。サキはもう行ってしまった。まだカンガルーも壁の向こうにいる。
鍵を手に入れないと時間切れになるし・・・いや、時間切れになっても別にデメリットはないから良いのか。
ふぅ。ため息ひとつ。
オウタはまたしても、無意味に頭を使っていく。
時間が経つにつれ、自分の無力差にイライラしてきた。
落ち着け俺。落ち着くんだ。『順番に考えていこう』そう思った時、義母さんの『順番に言うわね』という言葉を思い出した。
義母さんの言葉を、振り返る。
『流れ』だ。流れについて考えるんだ。もしかしたらサキの言ってた『銃』についても分かるかもしれない。
大局を思い出そう。
・・・
オウタの【瞳の文字が変わり『不幸』へと変わった】
俺達は、いつのまにか『ホワイトボックス争奪戦』に強制参加させられた。
『ホワイトボックス』は俺達の欲しいモノが入っている。
第1ステージは、ゴーレムの討伐の裏に、能力の使用と観察が重要だった。
第2ステージにも、分からない事がある。迷路のステージで出口に向かうだけでなく『敵』がいた。
その『敵』は『能力』によって『動き』が変わるのかもしれない。
だからサキとカンガルーの戦いは上手くいって、俺は上手くいかない。
その違いは?『遠距離攻撃』と『近距離攻撃』ってところだろうか?
サキが言ってた、『銃』よりも『能力』が弱いわけがないと。
もしかして・・・。
・・・
なるほど、分かったぞ正解が。
第2ステージの意味は『能力の成長』。俺の場合は近距離攻撃だけじゃなくて、遠距離攻撃へと『成長可能』という事じゃないか?
次の問題は、どうやって遠距離にするか・・・だ。
大丈夫、それもヒントがあったハズ・・・モグラッ!そうだ、モグラだ。
たしかボマーにもキャバ嬢も、俺達の事『名前』じゃなくて『能力』に関する『別の呼び方』で呼んできた。
あの人達は、やっぱりNPCか。俺達に『ヒントを与える存在』なんだ。だから変な行動をとるのか。
・・・
殴って穴が空く。その穴はどこに向かっている?地球の裏側まで貫通しているのか?
壁も、巨体の敵も、イヌも完全に『貫通』していた。だから、穴は『一方通行』だと思っていた。
だけど。もし、そうじゃなかったら・・・穴が空く方向は、変えられる!
オウタは地面にパンチし穴をあける!その穴が向かう方向をイメージしながら!
そうすると、パンチして空けた穴の隣に、もう1つ穴ができた!
オウタ「できたっ!」
勝てる!この穴を、カンガルーの足元に空けたらどうなる?
穴に足がハマルとか?やってみよう!
すぐに行動した。壁に向かってではなく、地面に穴をあける!
穴が向かう先をカンガルーの足元へと向かわせる!すると
「ブォッ!!」
オウタ「!?」
壁が隔ててあるのに関わらず。そんな鳴き声が聞こえた。
ザァァァァァ・・・。っとカンガルーとオウタを隔てていた壁が崩れていく・・・。
カンガルーは、右足から右肩にかけて、穴が貫通していて。血が流れながら倒れていた。
オウタ「・・・おっしゃ?」
ガッツポーズをするも、達成感が全くない勝利だった。
オウタvsカンガルー オウタの勝利!
トキノ「ここまで見てくれてありがとう!あなたが目の前にいたら握手したいくらいうれしいよ」
シゲ「そうやって誰にでも握手しようとするのやめとけ、危ないぞ」
コウタ「危機管理くらいちゃんとしないと、取り返しつかないぞトキノ」
トキノ「ご、ごめんってー。次回からは私達の話だよ!楽しんでいってねー」