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サキ キャンプ1日目

キャンプファイアーが始まっていた。


トキノ「時間を戻したのは良いけど、その後どーしよー!って思ってたんだけどー」


トキノ「シゲが来てくれた時は白馬の王子様かと思ったよー!」


トキノ「シゲ、あの時はありがとうね?私めっちゃうれしかったよ?」



上目づかいでそう言った。



相変わらず、トキノは自分の可愛さを分かっている。


感謝を伝えながら、さりげなくボディタッチや上目づかい。


さりげなく隣に移動したと思えば、どんどんくっついていったり。




私は食事があまり進まなかった。肉を少しずつ食べる。




シゲ「なぁ、オウタはなんであの時、俺達の方に向かって来てたんだ?」


シゲ「たしかに俺はオウタの方に『核』を発砲しようと思ったけどよ」


シゲ「こっちに向かって来てるの見た時はビックリしたぜ?」


オウタ「ああ、あれは・・・」




みんなワイワイしながらゴーレム戦の武勇伝や、どうしてそんな行動をしていたのかの話をしていた。


もう同じ話を3回は聞いている。酒が入った時のお父さんみたいだった。



今日の武勇伝を動画に残す。という理由が無ければ、正直うっとうしくて許せなくなってたかもしれない。



だから、ぼーっと聞いていた。私には話す事が1つもない。


聞いていても意味がない。ここから離れる?


楽しそうに話しをしている時に割り込めないよ。


離れる理由だって、思いつかない・・・。




イライラする。・・・はぁ、はぁ。油汗が噴き出る。




無意識にニキビに爪をたてていた、何してるんだろ?私・・・。




トキノ「よっし!じゃあ今回の本番いってみよー!」


トキノがそう大声で仕切る。


トキノ「コウタ!用意できてる?」


何が始まるんだろう?


コウタ「あぁ、用意してるぞ」


じゃーんっと、コウタがポケットからビンを取り出した、コウタはビンを回収していたが、まだ飲んでいなかったようだ。



コウタ「なあ、そろそろ飲んでいいか?シゲ達の話を聞いてたら俺も早く能力欲しくてさぁ」


オウタ「あぁ、はやく飲めよコウタ」


トキノ「イッキ!イッキ!」


サキ(良いなぁ)


シゲ(俺より良い能力だったら・・・どうしよう)


コウタはフタを開け、イッキに飲む。




液体を飲むと、頭の中に能力のビジョンが浮かぶらしい・・・私は飲んでないので本当か分からないけど。


トキノ「どう?どう?」


コウタの目は明後日の方を見ているように見える。


ビジョンを見ているのかな?


コウタ「ふぅ・・・能力を手に入れた、けど・・・」


なんだか、残念そうに見える。


コウタ「前衛で戦う能力じゃなかったよ」


トキノ「どんな能力だったの?」


コウタ「妄想した薬を創り出す能力」


オウタ「おぉ、使えそうじゃん?」


トキノ「うんうん、めっちゃ便利そう!」


サトミ「栄養ドリンクとか作れるのかしら?1つ作ってみてくださる?」


コウタ「そうだな、試しに・・・」


コウタは手のひらを上にして、少し止まる・・・。


コウタ「アレ?」




何も出てこない。


シゲ「そうだった、俺もさっき能力使おうとしたけど無理だったんだ」


トキノ「もー!しらけちゃったじゃん!でもでも、コウタ!医者を目指してるコウタらしい能力だし絶対役に立つよ!明日から頑張ろうね!」


そう言って、本来、薬が落ちてきてたであろう手を握った。


コウタ「お、おう!よろしくな」




そこからは、どんな薬を作れるかなーっという話で盛り上がっていく。



私はやっぱり、会話に入る事ができなかった。


隙をみて、オウタに「トイレに行く」と伝えてその場を離れた。



お手洗いを済まし、戻ろうとした。でも足取りが重くなり、いつの間にか立ち止っていた。



私何しているんだろう?砂漠で目覚めた時はワクワクしていたのに。


何が起きたのか分からないけど、『普通』じゃない状況に心躍っていた。


アニメ、ゲーム、ドラマ、小説、私はいろんな『物語』に没頭していたオタクだ。


こんなバトルに参加した時、どうやって戦おうとか、ずっと妄想してきた。


こんな出会いをして恋愛したら、男の子や男性に対して、こんな言葉を言ってあげようとか。


毎日、毎日、妄想していた。




なのにどう?今の状況は、私が妄想していた通りの理想郷。


絵本の中だろうが、天国だろうが、地獄だろうが、私が『新しい人生』を始めるチャンス。




なのに、なのに、なのにコレ?


この結果!この醜態!・・・能力を手に入れる事も出来ない。


コウタはあの時死んでいた、そんなコウタを助けるどころか私は『逃げる』事ばかり考えて。


『逃げた』その先の行動は?ゴーレムを遠目に確認しながらでも。円の中にあるビンを探す事もすらしない!


何もしていていない。頭の中で毎日、毎日、ああしよう、こうなったらこうしよう。


ずっと、ずっと、考えて、妄想して、『夢』を抱いていたのに!




『諦めたら試合終了ですよ』、『過去の事なんて関係ねぇ!』、『人生はいつだって今この瞬間だろうが』


私の好きな言葉だ、皆が好きな言葉だ、漫画の名シーン。




私は『物語に何かを求めていた』その何かはきっと『ホワイトボックスの中』にあるんじゃないかな?


多分だけど・・・なんとなくそう思う。だって『私の欲しいモノ』が入っているんでしょ!?


でもきっと、私は何も手に入れられない。




はぁ・・・はぁ・・・。また脂汗、疲れた。


疲れた?なにもしてないのに?なにもできないのに?




だれかの声が聞こえた、気がする。


シールド「何見てるの?」


サキ「!!」


バッ!っと声のする方に顔を向ける。



隣にシールドがいた。驚きで後ろに下がる。



シールド「びっくりした!もう何!?何してるの?」


サキが急に驚いたので、シールドも驚く。


サキ「あ・・・えっと・・・」


サキは上手く喋れない。


シールド「ねぇ、何見てたの?」


サキ「え、えと・・・」


私は何を見ていたの?何も見てない、考え事をしていただけ・・・だから。


サキ「な、なにも・・・」


シールド「そっか、何も見てないのか」


そう言って、シールドが空を見上げた。




え?何?私に何か用なの?


私なにかした?なにもしてないよね?


シールド「ねぇ、星を見て」


そう言われる。


空を見上げ、星を見た。


雲1つ無い星空。空気も気温も私にとって1番良い状態。


シールド「どう思う?」


サキ「え、えと・・・キレイだと思います」


シールド「ほんとに?そっか貴方はそう思うんだね、私はね、星を見ても綺麗だと思えないんだよね」


シールド「花を見て綺麗だと、1度も思った事無いの」



サキ(私だって、ホントは綺麗って思った事無いけど、そんなの、初めて喋る人には普通言わないよ)


シールド「どう?」


サキ「え?」


シールド「空を見ている時は現実を生きているでしょ?」


シールド「別に空じゃなくても良いの、この砂とか」


そう言ってしゃがみ込み砂を掴む。


指の間からサラサラと砂がこぼれ落ちる。



サキ「現実を生きる?」


シールド「貴方はさっき、何も見ていないって言ったでしょ?」


シールド「でも、汗かいてたし、目も血走ってたし?」


シールド「だから、今、頭の中で生きているんだなって思ったんだ」


シールド「妄想、想像、どっちも頭の中にある空想・・・現実じゃない」


サキ(そうやって、私はいつも生きてたんだもん、仕方ないでしょ)



シールドはサキの方を向いた



シールド「私達はいつも、無意識に頭の中に逃げ込んで、喜んだり、悲しんだりするの」


シールド「それに気づいた時、ちゃんと見るの『現実をちゃんと見るの』」


シールド「ただ、『見るだけで良いの』」


サキ「見るだけ」


シールド「そう、見るだけで良いの」


サキ(それで何かが変わるの?)



サキもしゃがむと、シールドの目を見た。


シールドは、まだ砂を掴んでは、こぼれ落ちる砂を手のひらで遊んでいた。


シールド「貴方、この後予定はあるの?」


サキ「ないです」


シールド「そっか、良いねー、1番良いね、今日は何も考えずに済むじゃん」


サキ「なにも考えずに済む?」


シールド「頭の中に逃げたら幸せに成れるし不幸にも成れるけど」


シールド「『何も考える必要ないの時間』以上に幸せの時間は無いと、私は思うなー」


そう言ってシールドが立ち上がる。「それじゃ、明日も頑張りましょ」と言ってシールドは戻っていった。




ただ現実を見るだけで良い・・・私も砂を掴んだ。さらさらと指の間から砂が落ちる。


ただ、それだけ、だけど。



私の頭はスッキリしていた、それと同時に、心が洗われた気がした。


シールドが向かっていった方向を見る。もっと知りたい。



そう思った。


聞きに行こうかな?でも・・・迷惑かな?


なんで私に話かけてくれたんだろう・・・あッ!


また考えてる、これが無意識に頭の中に逃げるってヤツ?



シールドが向かった方向をまだ見ている。


考える必要はない、考えない、考えない。




深呼吸をする。すぅー、はぁー。


サキはシールドがいる方向に歩いていった。緊張で汗が流れるが・・・嫌な汗じゃなかった。




『変わりたい』その想いを胸に抱いて、歩みを止めない。

サキ「明日から・・・その・・・2日目です」


サキ「第2レースのステージ2『迷宮ピラミッド』編が始まります」


サキ「えっと・・・色々あって、みんなバラバラに行動する事に・・・なるので」


サキ「明日は・・・『サキ編』となります・・・(恥ずかしい)」


サキ「私の、その・・・物語を見たくない人は・・・飛ばしても・・・いいからね」

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