婚約者はうちのメイドに夢中らしい
ある日突然、私にイケメンでお金持ちで、家柄も良い方から婚約の申込みが来た。
両親は大喜びし、使用人たちも祝福してくれた。
そして、初めて顔合わせをした時は彼はとても紳士でスマートな方だったため、私は彼と婚約することにした。
婚約後、私の家に招きお茶でもしようとお声を掛けた。彼はなんと大きな薔薇を抱えて私の家に来た。
婚約前の彼はとても私に優しくして下さったため、彼は私のことが好きなのかも知れない。などと思い自惚れており、
「彼ったら、私の為に用意して下さったのね!」
早くお出迎えしなきゃっ
「ようこそお越し下さいました!ありがと」
「久しぶり!!!会いたかった、ずっと探してたんだっ」
えっ、と思う間もなく彼は私の横を通り過ぎ後ろにいた私のメイドへ抱きつきながら膝を床に着き、彼女に薔薇を差し出した。
あの清々しく、初恋の人と運命の再会をし、真っ赤な薔薇を渡す光景はまるで物語の中のような光景だった……
実はそのメイドは元々、貴族の令嬢だった。しかし、彼女の家は貧しく領地の経営も難しかったため家は取り潰され、私の家のメイドの求人に応募してきたそう。
そして、婚約者の彼は子供のころは病気気味で療養をしに彼女の領地に来たそう。そこで2人は出会い、未来を約束し合い、彼は首都に帰ってそう。
しかし、いざ迎えに行こうとしたら彼女の家は無く行方知れず。
途方に暮れていたが、私が彼女を連れて令嬢たちとお茶会をしていたのを見て運命の再会を果たしたそう。
「ということで、僕は君を愛さない。がしかし、僕の愛する彼女は貴族ではなく、正妻にすることが出来ない。だから、君を正妻にして彼女を愛人という形で愛し合いたい。わかってくれ、それに君にとっても悪い話ではないだろう?」
いや、悪いが!?
「そうだったのですね、では私などどうでもよく、あのメイドと実質的に結婚することが目的だったのですね」
先程の茶番劇を見せつけられ、百年の恋も冷めると言ったものだろうか、この男に魅力が感じられず、なんでこんな男が紳士に見えたんだろうか。
「言い方はどうかと思うがまあそんなものだ。今更婚約破棄など出来んぞ。もう教会側から許可が降りているからな」
この国は結婚、婚約は教会から承認があった場合、滅多に取り消すことは出来ない。
「そうですか、本当にあのメイドがお好きなのですね」
「当たり前だ。彼女のことを愛している」
「そうですか。ですがあのメイドは彼女ではなく彼ですが?まさか男性がお好きな方だとは思いませんでしわ」
そう、彼は勘違いしているようだがあのメイドは男である。元々顔が中性的だし、メイド服は男性も女性も普段は動きやすいようにズボンを制服にしているため勘違いを起こしたのだろう。
「この国では同性愛は禁止されておりますわ。そのような方が婚約者だったなんて……今すぐ教会に行って取り消さねばなりませんわっ!」
「え、お、男。俺の初恋が…………」
「あはは、再会は嬉しいですが僕は男です。少女服を来ていたのは家が貧しく、母の少女服を着ていたからなのです。勘違いをさせてしまいましたね」
この後、私はすぐに教会側に婚約者は実は男色で私の家のメイドと実質的に結婚する気だったことを伝え、無事婚約破棄した。
社交界では彼は男色で、無理やり自分のものにしようとし、ストーカーしていた事になっている。