本当にあった小話ーー圭人の話しーーー
だいぶ脚色を加えてます。
文才ないのはすみません。
「ねぇねぇ!◯◯君とあの子付き合ってるのかな!??」
そんな馬鹿な事を俺の隣に座る女が言っている。クリンとした目とボブショート。何処を見ても可愛らしい女は俺の彼女である。
「あり得ない。あり得ない。だってアイツら男同士だろーが。」
「えーー!でもさでもさ!BLってやつ?流行ってるし萌えるしいいじゃん!」
目を輝かせる彼女こと沙織。腐女子め。何でもかんでも男同士が仲良いとそんな事言いやがって。
「俺は男同士だろうが女同士だろうが否定はしないさ。でも、巻き込まれるのは御免だね。さっさと行くぞ。」
「え!待ってよ!」
俺はスタスタと大学にある食堂を後にした。
「圭人さー、こう言う事にたまーに厳しくなーい?」
沙織が首を傾げながら俺に言う。
「そんな事ないよ。巻き込まれるのは御免だってだけ。別に偏見とかないし。」
差別だなんだと思われるのは侵害だ。
「ふうん?でもそういう疑惑のある噂の子とは明らかに距離取るし、そういう子が同じサークル内にいるとめっちゃ避けるじゃん!」
「。。。それは。。」
マズイ、態度に出てたっぽい。
沙織が俺を睨みながら言う。
「私、そういうの嫌だなって思う!今の時代自由恋愛だよ?!女とか男とか関係ないんだから!」
これはマズイ。俺が差別していると思われてる。
俺は溜息を吐き、覚悟を決めた。
「沙織。今から話す事。絶対に誰にも言うなよ。」
俺が真剣な顔をして言うからか、沙織はギョッとした顔をしたが、やがて頷いた。
「実はー。」
俺はあの時の事を思い出しながら話し始めた。
あれは、俺が中学生の頃の事だ。
夜の海。良くアイツと行った場所。中学1年生の頃から周りから3バカトリオなんて言われてて、ちょっぴり悪い事もやった。一時期アニメにハマってアニメグッズを買いに自転車を一緒に走らせた。俺達はずっとずっと友達だと思ってたんだ。あんな事が起きる迄は。。
学校のチャイムの音。朝に弱い俺はいつも遅刻をしていた。
「おいおい、圭人!たまには遅刻なしで学校来れないのかぁ?!」
俺に説教をする3バカトリオ1人目阿達俊雄。因みにコイツも遅刻常習犯。そして彼女が常に3人以上いる最低浮気野郎。
「まぁまぁ。というか、トシも遅刻ばかりじゃない?人の事言えなくない?」
至極真っ当な事を言うコイツは西澤和也。頭いいし、遅刻した事ない。地味に優等生なのに俺らと居るせいで3バカトリオの仲間入りされてしまった可哀想な2人目。
「カズ!お前だけだよ!まともなのは!」
ヘラヘラ笑う俺こと大西圭人。3バカトリオ3人目。現在中学1年生。元々トシと席が近くで仲良くなり、その後理科の実験グループで一緒になったカズと仲良くなり、今の3人トリオが出来上がった。馬鹿をするのも一緒。勉強にならないテスト勉強をするのも一緒だ。
しかし、中学3年生になるとクラス替えでトシだけ1組、俺とカズは2組になってしまった。まぁ、クラスが変わっても仲良しには変わりないので特に問題はない。ただ、圧倒的にカズと遊ぶ事が増えた。2人で良くアニメグッズを買い漁りに自転車を走らせ、1週間のうち6日遊んだ。その内の1日は3人で夜に海に行って肉まんと焼き鳥を齧りながら遊んだ。
そんな仲良しな俺ら3人は高校も同じ所に受験し、受かった。この時は3人で喜んだもんだ。
「やったなぁ?!」
「俺ら天才なんじゃない?!」
「2人とも勉強苦手なのに頑張ったからね。当然だよ!」
こうして、高校1年生。春。変わらないとも思っていた俺達が少しずつ変わり始めた。トシは女の子のお尻を益々追いかける様になった。俺は筋トレに目覚め、腹筋を割るべくプロテインを飲んでは腹筋しまくった。カズだけは相変わらずだった。
「ケイ!まぁーた腹筋してんのかぁ?!飽きないなぁー。」
相変わらず週1で3人集まって夜の海で遊んでいた。
「トシもやった方が良いよ。女の子にモテても脱いでみたらぷよぷよでしたってカッコ悪いと思う。」
「うるせぇ!」
「まぁまぁ。2人とも。ムキムキでもぷよぷよでも良いじゃない。」
宥める?ように言うカズに対して俺達2人のセリフは重なった。
「「良くないわ!」」
そんな高校1年生の夏。体育、プールの授業。女子の水着姿が見られる!と思ったら別授業かよ?!男の裸を見ても何にも楽しくない。
「男の裸とか拷問かよぉ。」
トシの意見に同意の俺。思わず頷いてしまった。
「しかしよぉ、ケイ、お前の腹筋ヤバくねぇ?めちゃくちゃバキバキじゃんよぉ?」
そう、腹筋しまくった俺のお腹は綺麗に割れていた。
「そんな見るなよー。まぁ、頑張ったからな。」
トシと会話をしていると、じーーっと俺を見つめる男が1人。
「カズ?どうした?」
俺が聞くとカズは俺から顔を背けた。ん?今顔赤くなかったか?気のせいか。
「ケイ、頑張ってたもんね。すごく。。。その、か、カッコいいと思うよ。」
改めてカズにそう言われると照れるわ。よーし!このまま筋トレしてマッチョ目指してやる!
こうして筋トレに更にのめり込んだわけだが、この日以来、カズの俺に対してだけ態度が変わり始めた。
まず、メールの量がかなり増えた。1日100通は来る。更には長電話。何時間も話すネタがないのだが、お互いに黙っているのに電話を切る事がない。勝手に切ると怒る。
そして。。。
「ねぇ!ケイ!昨日僕との約束断ったのに女の子と一緒にいたよね?!!あの女の子誰なの!?」
「え?!だから説明したじゃん。筋トレの事知りたいって言われて約束してるって。約束も彼女が先だったから後からのカズを断ったんだよ。」
「でもでも!僕の方がケイのこと知ってるし仲良いのに!」
「それとこれとは別だろ!」
こんな会話が以前より増えていた。
「おうおうおう!なーんかぁ?内容がカップルみたいだなぁ?ケイとカズ。」
変な茶化しするな!
「変な事言うなよ。」
そう言って俺は席を立った。そんな俺を見てカズが言った。
「ケイ、何処行くの?。。。ごめん。もうこんな事しつこく言わないから。だから、嫌いにならないで。」
「。。。あぁ。」
返事はしたものの、最近カズがめんどくさく感じていた。
カズ、前はあんなんじゃなかったのに。どうしたんだよ。
俺は、この頃からアルバイトを始めたのもあり、少しずつカズと遊ばなくなった。
そんなある日。
「はぁーー。疲れたぁー。」
コンビニのアルバイトは地味にキツい。更衣室で着替えを始めると、携帯がひっきりなしに鳴っている。携帯を見るとメールが358件。
え。。。?!358件?!
見ると全部カズから。内容は。。。
「最近会ってくれなくて寂しい。」
「何でトシとは遊ぶのに僕とは遊んでくれないの?」
「ねぇ。会いたい。」
「会いたい。」
こんな内容のメール358件。頭がクラクラする。カズ。。どうしたんだ?もしかして、俺の事そういう意味で好きとか?いやいや、そんな筈は。。。
考えを振り払ってメールを返信する。
「アルバイトしてて今見た。ごめん。忙しくなってあまり遊べなくなった。俺達友達だからこんなにメール送らなくても大丈夫だよ。」
これに対してのメールの返信はなかった。
次の日。
「あ、ケイ。。あの、昨日はごめん。」
気まずそうに謝るカズ。
「あぁ、大丈夫だよ。」
それ以上の言葉は出なかった。
それからも何となくカズを避けていた俺だが、久しぶりの学校もアルバイトもない高校2年生の冬、事件が起きた。
カズどうしちゃったんだろうなー。ずっとこのままっていうわけにはいかないし。。はぁ。。
カズの異変について考えていたらそのまま寝落ちしてしまった。そして翌朝。俺は何となく視線を感じて目が覚めた。なんだろう?変な感じがする。身体を起こし、ふと部屋の隅を見るとなんとカズが体操座りをしてコチラを見つめている。
「?!!!???!」
言葉にならない声が出てしまった。
「。。。え、あ、カズ?」
名前を呼ぶとカズはニコッとコチラに笑いかけながら言った。
「ケイ、おはよう!」
「。。。。」
何でいるんだ?どういう事だ?
混乱しつつも部屋を出て飲み物やお菓子を取りにキッチンに向かった。
キッチンには母がいたので、思わず抗議をした。
「母さん!なんでカズが部屋にいるんだよ!」
「えぇ?だって今日遊ぶ約束してたんでしょ?だから勝手に入れちゃったわよー。」
「遊ぶ、約束なんて、してないよ。」
「。。え?」
「遊ぶ約束してない。それ、嘘。もうアイツが来ても入れないで。頼む。」
嘘までついて勝手に部屋に入るなんて。どこかストーカーっぽいカズに恐怖を覚えてしまった。
その日は他愛もない会話をして帰した。もう、アイツとは遊べないよな。そう思うのと同時に今までの想い出が一気に蘇る。いやいや、トシもいるし、3人で遊べば大丈夫だよな。
そんな思いとは裏腹に、なんとトシは高校2年の冬休みに学校を辞めてしまった。
「いやぁ。野球部ダルくなっちゃってさぁ!高校行かなくてもどうにかなるっしょぉ!」
ヘラヘラしながら言うトシに思わず、
「どうにもならんわ!!!」
突っ込んでしまった。
こうしてトシが居なくなってからカズは「もうしない」と言いつつ行動がエスカレートしていく。メールの件数も毎日返さずとも200件を超えた。
さらに疲弊しきった俺に追い討ちをかけるようなメールが来る。
学校を辞めて暇そうなトシにカズの相談をしようと学校帰りに遊んだのだ。その時にカズからメールが来ていたのだが、それに気が付かなかった俺。
帰ってからメールを開くと489件。
今日はいつもより多いな。。
内容を見ると、
「会いたい。」
「無視しないでよ。」
「ごめん。うざいね、僕。」
「やっぱり会いたい。」
いつもの内容。しかし最後の文面はいつもの違った。
「会いたくて来ちゃった。玄関閉まってたから帰るね。また明日。」
え。閉まってたから帰るって事は、開いてたら入る気だったのか?!
ここまで来てしまうと家族にも迷惑がかかる。そう思い、母と父に相談をする事にした。結果として、カズをファミレスに呼んで話し合う事にした。
「カズ。家にまで来るのは流石にやり過ぎだと思う。ここまで来たら、お前とはもう遊べない。ちゃんと話しがしたいから、今度の日曜日、13時に〇〇まで来てくれ。」
「分かった。」
メールのやり取りが終わり、そこからメールは来なくなった。
カズは、俺をどうしたいんだろうか。。
俺は日曜日までカズとは会わないようにした。そして、余り眠る事ができなかった。
ーー日曜日ーー
念の為トシにも来てもらい、ファミレスでカズを待つ。
「ていうかよぉ。カズってそんなにヤバ目なやつだっけぇ?」
「あぁ。メールも見せただろ?」
「うーん。あ!2人とも付き合っちゃえば良いんじゃねぇ?」
トシは学校を辞めて頭おかしくなったのか?
「馬鹿なこと言うなよ。俺はカズの事を親友として好きだけど、それ以上のものはない。」
「ふぅーん。」
トシと話しながらコーラを飲む。すると、カズがやって来た。
「あの。久しぶり。トシも来ていたんだね。」
「「。。。。」」
なんでトシも無言なんだ!
「。。まぁ。座ってよ。」
カズは俺とは向かいのソファに座る。
「ドリンクバー。3人分頼んだから取って来なよ。」
「ありがとう。」
そう言ってカズはいつものファンタグレープ味を持ってくる。
「「「。。。」」」
無言。
ズズズー。。ジュース啜る音しかしねぇ!!
この無言を終わらせたのはトシ。トシが言う。
「あのよぉ。カズ。ケイから聞いたけどぉ。。お前さ。ケイをどうしたいわけぇ?」
ちょ、直球だぁーーー!びっくりしてトシを見る俺。
「。。。僕。ケイが好きなんだ。」
言葉が出ない俺。人間驚くと言葉が出ないって本当だと思う。ていうかジュース飲みながら云う事なのか?
「それはよぉ。友達って感じぃ?」
「違う。僕は。ケイの恋人になりたい。」
俺の目を見てハッキリとそう言った。
「「。。。。。」」
無言。からの謎の口笛を吹くトシ。
あぁ。気不味い。
「おおおおお前さぁ。よぉ。コイツのどこが好きな訳よぉ?」
トシよ。声と足がガクガクに震えてるぞ。
「。。。正直、僕も同性を好きになるとは思わなかったんだ。本当に友達で親友で。でも。この気持ちが友達としてじゃないって気が付いてからどうしたら良いかわからなくなって、あんな事しちゃったんだ。僕も中々奇行に走っていたと今では思うよ。」
奇行に走ってた自覚はあったのか。
「へぇー。。だとよぉ。ケイ?」
こっちを見て話しかけるトシ。
「。。。あの、さ。」
俺は口を開いた。本当は友達でいたい。けれど、カズはこんなにも真剣で、真っ直ぐで。本気なんだ。だから、俺も本気でちゃんと答えないといけない。
「俺さ。カズの事。すげー仲良い友達って思っててさ。親友というかさ。ぶっちゃけトシより話しやすいし、趣味合うし。でも、それは恋愛的なものじゃない。ごめん。」
「。。。うん。分かってたよ。」
「「「。。。。。。」」」
物凄く気不味い。
暫く無言が続き、やがてカズがまた言った。
「分かってた。。こんな事言って、ごめん。迷惑かけて、ごめん。好きになって、ごめん。」
カズは俯いて言った。
涙目で言うなよ。別にあんなストーカーみたいな事しなけりゃもっと気持ち的に違ったんだよ。俺はカズとずっと友達でいたかったよ。
「。。。。」
言葉が出ない。
「トシ、ケイ。僕。帰るね。あと、迷惑かけて本当にごめん。」
そう言って頭を深く下げて千円札を置いて去って行ってしまった。
その後トシが俺に何か励ますような事を言っていたが、あまり記憶がない。
気が付いたら家にいたり家に勝手に入ろうと玄関ガチャガチャしたりそれは結構怖かったし、気持ち悪かったけど、気持ちが迷惑だとか、カズが嫌いになったとか、そういうわけじゃなかった。そりゃ、恋人にっていうのはちょっと無理だけど、友達ではいたかったよ。友達として一緒にいたいって思うのはいけない事だったのかな。
結局カズとは卒業まで会話もなく、接触もなく終わってしまった。
トシとは相変わらず交流があって、たまに遊ぶけど、流石にトシはカズの話題を出す事はない。
これで良かったのか未だに俺は分からない。
「っていうことがあった訳。沙織?」
「。。。思ってたより壮絶でした。。」
「俺はさ、差別も偏見もないよ。でもこういう事があって、考えるんだよ。あんな事がなければ今も一緒に遊んだりしてたのかなって。かなり仲良かっただけに結構ショックでさ。だからそういう雰囲気の奴ら見るとカズを思い出しちゃって。」
「うーん。。もし。もしさ。何かのキッカケでカズ君?に会えたらどうするの?」
「まぁ。今は何も言えないし何も出来ない。けど、時間が経って俺の中でカズの事を消化出来たら、その時はー。」
俺は小さく笑う。
「好きになってくれてありがとうって言いたいかな。」
沙織は目を丸くした。
「えー!ストーカーっぽい事されたのにーー??」
「いや、恋人にはなれないよ?でもさ、やっぱり、男同士だし、云うの勇気出したと思う。だから、応えられないけどありがとうかなって。」
目をパチパチさせた沙織は、俺に向かって言った。
「なーんか変な感じー!ちょっとジェラシー!」
「何だそれ!」
話しが終わった俺と沙織はこの後、ファミレスで夕飯を食べて帰った。
。。。カズ、またいつか会う事があったら、その時は。また友達に、ってちょっと都合がいいか。
後日談はあるのですが。。そのうちに。