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第99話 マサル外伝_2

「さて、そろそろ君の相手も面倒になってきたから本題を話させてもらうよ。」


「本題…ここへ連れてこられた理由だな?よし、聞こうではないか…神の啓示を。」


「別に啓示なんて大層なものではないんだけど、君には異世界へ行ってもらおうと思っているんだ。」


「異世界?何を言っている?」


私は疑問を呈すると、目の前の自称神はため息をついて首を振る。ヤレヤレ…という言葉が今にも出そうな仕草だ。


「はぁ…。さっき自己紹介の際に言ったと思うんだけどね…。」


「む。そうなのか?恐らく、その時丁度良く我が身に封印されし黒龍が耳に妨害をかけてきたのだろうな。」


「うん。黒龍なんて封印されてないし、つまり聞いてなかったってことだよね?」


自称神めッ…!私の言葉が信用できないというのか…。

まぁいい、今は異世界の事を聞くべきだな。


「で、何の話だったかな?」


「はいはい…僕は、この地球と異世界を管理する者なのさ。正確にはもともと異世界を管理していて、その後に地球も管理し始めたって感じだけどね…。まあそれはいいや、そこの詳しい話は君じゃない別の人に話すつもりだから。」


私には詳しく話すつもりはないという事か。

恐らく話さなくても私の頭脳があればすぐにわかると言いたいのだろう。


「で、僕が管理している異世界の名はヴェルスヒルントムンド。そこは君たちのファンタジー小説でよくある、剣と魔法の世界さ。」


「ヴェル…ムンド?」


「ヴェルスヒルントムンド!」


長い!無駄に長い!

なぜこうも名前を覚えやすいようにもっと文字数を少なくしないのか。

無駄と言えば、勤めていた会社でもそうだ。


無駄に長い会議、何かを申請する際に無駄に多い手続き、契約書を書く時には無駄にたくさん名前を書かされたり…。


そう考えると本当に無駄が多いな。

そうか、これもすべて目の前の自称神が…


「それらを僕のせいにしないでくれるかな!?それはちょっと理不尽だよね!?…はぁ、もう異世界の呼び名はなんだっていいよ、好きに呼んで…。」


よし、私が異世界名を決める権利を獲得したぞ。


「ヴェルムンドだ。」


「いや、異世界の名前を決めていいとは言ってないからね!?単に君の好きなように呼べばいいって言っただけだから!」


ふむ。心地の良いツッコミだ。

今まで関わってきた者たちは冷めた反応をしたり、突っ込みすら入れずに無視されてきたが、この自称神は違う。


もしかすると、私と親友になれるかも…


「絶対嫌だからね!?」


「……!そう…か…。これが、ツンデレか。」


「誰かこの人何とかしてー!!」


◇◆◇◆◇


自称神は私にツンデレであることを看破されたことによって動揺していたが、白いテーブルに置いてあった何かしらのティーを飲んで落ち着いたようだ。


「…えっと、それで異世界に行ってもらうから。じゃあね。」


「まてぃ!!!さっきと打って変わって雑になっていないか!?」


「だって君と話すと疲れるし、脱線しかしないだろ?もういいかなって。」


まさかあんな親身になってツッコミをしていたにも関わらず、突然冷たくあしらう戦法を取ってくるとは、これが駆け引きというものなのか。


この駆け引きは私の負けか。謝罪しておくべきだな。

どう謝罪するか…、そもそも彼はなぜ雑になったのか…。

それはどこか私の言い方が悪かったのかも知らないな。

言い方が悪い…口は禍の元か…禍…、つまり邪神か。


「わが身に憑りついた邪神が悪戯(いたずら)に私の口を操っていたようだ。もう大丈夫だ。話を進めると良い。」


「え、それ謝っているつもりなの?今の今まで気づいていないようだけど、僕は君の心を読んでいるからね?君の考え全て僕に筒抜けだからね?」


「…なん…だと?」


「…はぁ。もういいよ。ちゃんと話すから、黙って聞いててね。」


む、少し呆れさせてしまったか。

流石に黙って聞いておくべきだな。


「君は一応は勇者召喚として選ばれた一人だ。この世界には聖王国と呼ばれる国があって、その国が勇者召喚を行ったのさ。」


「…。」


「質問があったらどうぞ。」


どうやら話して良いようだな。


「勇者召喚とはなぜ行われるのだ?」


「それはもちろん勇者が必要だからさ。基本的に勇者はそれなりに高いステータスで異世界に召喚される。つまり戦闘要員だ。勇者召喚はその時によって役割は変わってくる。魔王襲来であったり、人間同士や他種族との戦争の際とかだね。今回は、魔王が現れる予知があったという事で君たちは召喚されるわけだ。」


「君たち…という事は他にもいるということか?」


「そうだね。君以外に四人いるよ。」


「であれば、なぜその四人はここにいないのだ?ここで予め顔を合わせをしておけば、召喚された後でもいろいろと連携がしやすいだろう。」


「他の四人は興味が無いからこの場に呼ばなかったよ。何も知らずに聖王国に召喚されているね。」


なるほど。私は自称神と親友だからこの場に呼ばれたわけか。


「最後に、なぜ私が選ばれたのだ?強さでいえば、私よりも強い、あの仮面の二人を選んだ方が良かったのではないか?」


「あぁ、彼らか。君は彼らと…いや、今は言わなくていいか。コホン…君を選んだ理由だっけ?それは、君みたいな頭のネジが数本から数十本外れている人物が勇者として召喚されたらどうなるか面白そうだったからだよ。さて、最後の質問は終わったことだし、行ってらっしゃい。」


「おい!ちょっと待て!数本から数十本は流石に幅が広すぎ…」


私は最後の言葉を言いきれずに意識を絶った―――――



「あー、疲れたー…。彼は見ているのは楽しいけれど、話すのは非推奨ってやつだね。というか、頭のネジが外れていることに関してはツッコミを入れてこなかったな…。まぁそれはいいとして、彼のスキルがどこまであの世界で通じるか楽しみだなぁ。」

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