第53話 天動事変の終息
信之とイリスは特殊部隊と協力し、全ての天動衆を捕まえた。
「思っていたより手こずらなかったな。」
「うんうん!何だか、投降する人が多かったよね?戦意が喪失してるっていうか…。」
イリスは考えるように首を傾げる。
ちなみにまだデロの現場にいるのでしっかりとおかめは付けている。
「恐らくだが、天動衆の人たちは天動に意識操作されているような状態になっていたのだと思う。」
「意識操作?」
「あぁ。天動のスキルに革命者というスキルがあったんだ。」
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(名)
革命者
(概要)
相手を心酔させやすくする
ステータスが差が大きければ大きいほど効果を発揮する
スキル所持者が死亡した場合、効果は解除される
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信之は、イリスにスキルの説明をした。
「それって催眠術みたいな感じかな?それじゃあ、みんな操られてたって事かな…。奏ちゃんたちの親を殺した人も…。」
「…どうだろうな。皆が皆完全に操られていた訳では無いと思う。投降しないで戦おうとしていた人もいたから、その人の性格とかもあるんだろうな。」
「そっか…。」
イリスは悲しそうに俯く。
「とりあえず、もうここにいてもやれる事は無さそうだ。家で二人が待っている事だし、帰ろう。」
「うん!」
信之とイリスは自宅へと戻った。
「ただいま。」
「ただいま!」
「あ!おかえりなさ~い。」
「…おかえりなさい。」
家に戻ると奏と蒼汰が気づき、こちらに来る。
奏の目元は少し腫れているようだ。
二人きりとなったあとに泣いたのではないかと信之は考えた。
「…テレビで見ました。終わったんですね。」
蒼汰が信之に話す。
「テレビ?…もしかして飛んでいたヘリコプターか?」
信之は、神示と戦闘をしている際に近くにヘリコプターが飛んでいたのに気づいていた。
「…はい、中継されていましたよ。リポーターさんは…その、イリスさんの仮面に凄く驚いていました。」
「え?私の仮面?…何でだろう?あ!そのリポーターさんは納豆が大好きだったからとかかな?」
「…ど、どうでしょう。そうかもしれませんね…。」
あなたの仮面が不気味だからです。とは言えない蒼汰は、とりあえず肯定的な答えを返す。
「やっぱりみんな納豆好きだよねー!うんうん!」
イリスは満足気な表情で頷く。
「これで今回のテロについて事態は終息かな。後は…」
「…僕達の両親の事ですね…。」
信之が話難そうにしていた所を蒼汰が拾う。
「そうだな、ご両親は今病院だが…。向かうか?」
現在は夕刻であり、まだ病院に向かうことは可能な為、信之は二人に問う。
「…お姉ちゃん、一旦家に帰る?」
「ううん。お父さんとお母さんを見に行く。」
「…分かった。信之さん、お願いします。」
奏と蒼汰は、病院に向かうことを決めたようだ。
「良し、じゃあ送るぞ。」
信之達はテレポートで病院へ向かった───────
その後信之は、ピエロとして院長に会いに行き、奏と蒼汰を紹介した。
奏と蒼汰は、涙を浮かべながら二人の両親に別れを告げた。
二人を家に送った後、信之とイリスは家に帰ってきた。
「ねぇ、信くん。」
「ん…、どうした?」
「あの子たちなんだけど、今度また様子を見に行かない?あの子たちの親戚は神奈川から遠いし疎遠だって言ってたから。まだ中学生だし心配で…。」
イリスは奏と蒼汰を心配しているようだ。
「そうだな。状況を聞いてみて、あまり良く無いようであれば俺らでできる限りの協力をしよう。」
「うん!」
その日は、テレビすべてのチャンネルがテロのニュースで埋まった。
「———日本を混沌に陥れようとした、テロ首謀者である株式会社Tenshinの代表取締役社長天動神示は、ピエロによって殺害されました。また天動神示の秘書、兼天動衆の幹部である西園寺利花は、ピエロの一味と思われるおかめの仮面をした人物によって倒され警察が捕縛しました。警察は意識が戻り次第、事情聴取を———」
「信くん、大変だよ!おかめも有名になっちゃった!」
どこか嬉しそうなイリス。
「おかめの仮面は目立つからね…。そのうちピエロよりも話題になるんじゃないかな?」
「えー?そんなことないよー。おかめは全然不気味な感じ無いし、ピエロの方が話題になると思うよ!」
「そ、そうかな…。」
信之は、おかめがどれだけ怖いかをイリスはどうやっても理解してくれなそうだと悟った。
—————とある場所(?)にて————
「あーあ。やっぱりあの程度じゃあ信之君には勝てないよね。」
男性とも女性ともわからない中性的な声で、とある者は呟く。
「まあ、信之君には考え方を変える良いスパイスになったのかな?殺さないなんて甘い考え、今の世界では命取りだからね…。いろいろとお膳立てしているのだから簡単に死んでもらっては困るよ。」
その者は白い椅子に座っており、白いテーブルから紅茶を手に取り飲んで一息ついた。
「ふぅ。いずれここに来るのかな。ふふっ、その時を楽しみにしているよ…。」