第64回 吸血鬼の巣窟
ヴァンパイア=イケメンというのはいつから始まったのだ・・・?
「なぜ不意打ちが防がれたのだ!?」
「わかりません、余程手練の護衛を雇ったとしか思えません。」
「あの者は稀人どもが持ち込んだ例の変わった暗器を使ったのだろう?しかも刺されば致死毒、弾けば炸裂する凶悪な呪具だぞ!少なくともあの部屋にいた者を全て殺しきれるはずだ。」
「そのはずですが・・・余程あのナイフに精通した者であろうと防げるはずが無いのです。」
「それが実際に防がれておるのだぞ!我が氏族たるヴァンパイア族が魔帝国を手に入れ台頭するにはあの小娘の命があってはならんのだ!」
「・・・だそうだぞ、知ってるやつか?」
以上が暗殺者の持ち帰った俺特性ドローンからの生放送だ。
大きさとしては赤ん坊の握りこぶしにも満たないサイズの小鳥型、そして無音で飛び撮影精度もかなり高い。
それに何時でも静かに自爆できるので証拠を残す危険性も薄い。
豪奢な椅子に座る美丈夫が事の発端らしいことはわかった。話し相手は帰還した暗殺者のボスらしいが使えば死ぬとわかっているナイフを部下に使わせるあたり心を操っているのか余程求心力があるのか・・・。
「ええ、彼はヴァンパイア族の長のガランダです・・・野心がやたら強いとは思っていましたが私を害してまで覇権を取りたいとは幻滅ですね。」
「それにしても貴族のお偉いさんみたいなもんなんだろ?犯人がわかったからってそのまま倒しに行ってもいいようなもんなのか?」
「もちろんYESですわ、人へ平然と害を成す者は害を成される覚悟がある者のみというのかこの世界の常識です。」
「・・・悪意をもって人を殺める者はこの世界じゃ人間じゃないんだな、わかりやすいことだ。」
どんな世界の人間であろうとそんな思想の生物は何食わぬ顔で人の群れに戻ることなど叶わないだろうよ。
それだけはどんな世界に行こうと同じなんだろうなと俺は少しだけホッとした。
女神さまも常識人であったらしい。
「盗賊とかもそんな扱いだからな!だいたいは魔物扱いだ。」
「国に属し、戦争として人を殺めるのと自らの欲に従い行動する者では全く違いますからね・・・。」
「それでハヤトどうするの?」
「もちろん叩きに行くさ、一応正義の味方なんでな。」
そう言うと俺は昼食の生ハムが豪快に挟まれたパニーニを味わったのちに席を立つ。
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数時間後。
魔帝国クライシス領内のヴァンパイア族が納める大邸宅にて大きな爆発音と火柱が上がった。
賊はあろう事か正面から固く閉ざされた門を木っ端微塵に破壊し歩を進めていく。
「何が起こった!ここがガランダ・シュバルツの屋敷と知っての狼藉か!?」
「はっ、敵はたった一人で正面入口の門を爆薬のようなもので破壊して庭内に侵入した模様です。」
「誰か賊を目視したものはおらんのか!」
「は、ガランダ様ここに。現在衛兵と私兵が相対しております、敵は仮面のようなものを被り赤い全身鎧に身を包んでおりました!」
「まるで古臭いお伽噺の魔人ではないか。なにか手品を使うようだが一気に叩き潰せ!」
二人の側近は退室していく。
ヴァンパイアの身体能力は魔族の中でもピカイチだ、更に聴覚は一級品。少し耳を澄ましてみれば庭先で小石が転がった音まで逃がすことは無いのだろう。
「・・・おや?先程退室して行った近衛隊長の足音が闖入者に向かっていったと思った矢先に聞こえなくなったような・・・。」
鋭敏なソナーのような耳を持つ彼にかかれば歩行音だけで相手を知ることが出来るが・・・今聞こえるのはたった一人の聞き覚えのない男の足音だけである。その足音はゆっくりだが確実にガランダが豪奢な椅子に腰掛けているこの部屋目掛け着実に進んでくるのだ。
「屋内にまで侵入を許しているのか!?」
「なんだ、クーデターを起こそうとしている奴のアジトはこんなに警備が手薄なのか?」
「ッ!?」
仮面レイダーZEROMフレイムスタイル。
変身はしたがチャージすら使う必要なしと判断した俺はコイツのアジトの前にパーティメンバーを待機させて見張りを頼むと一人で突入した。
強固そうな鉄の扉は少し力を込めた程度のパンチで弾け飛び、襲いかかってきた兵士らしきもの達は軽く薙ぎ払ったので死んではいないはずだ。多少腕利きもいたのかもしれないが烏合の衆以上の感想はなかった。
「き、貴様だったのか・・・魔王に取り入った魔人というのは!!」
「取り入った?彼女はただのパーティの一人だぞ。」
「馬鹿をいうな!王たる責務を投げ出し遊び回る放蕩娘とはいえ現職の魔王が貴様のような何処の馬の骨ともわからん者のパーティメンバーだとでも言う気か!」
「余程コヨミが嫌いとみえる。それで暗殺か?」
「無礼な言葉を吐くでないぞ下郎が!まあいい、この場より帰れぬ貴様が知るようなことではない、出てこい巨人よ!!」
不自然に天井から下がっていた飾り紐を引くガランダ、途端に床が揺れたかと思うと左右にぱっくり開いた穴からせり上がってきたのは四メートルは下らない大男だった。
コイツも魔族なのか?魔物というよりは人に近い感じではあり、その顔は興奮しているのか焦点は定まらず鼻息が荒い。
というかヴァンパイア族の筆頭ならば自分で戦った方が強いのではと・・・。
「ククク、この異様に圧倒されたか!」
「いや・・・コヨミ、やるとしたらソイツだけにした方がいいとは思うんだが。」
「そうですわね、巨人族の彼は薬漬けにはされているように見えますが操られているのは自明の理でしょう。」
ゆっくりと歩を進めてきた魔王さまが俺の後ろから顔を見せた。
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