第56回 ああ、窓に!窓に!
筆者も霊感は無いため目撃したことは無いのですが心霊動画だと合成臭さが凄いんですよね・・・
時間は夕暮れ、あれから少々の手続きがあって戻ってくるのが遅れてしまったが俺は念願のマイホームを手に入れてリビングでゆっくりしていた。
空き家となってからも定期的にギルドによって清掃は行われていたそうで掃除の必要も無くすぐ入居できたのは良かったな。
早速ルリコはヒナカさんも呼んで今後はここでお手伝いしてもらう予定とのこと。
「ね、ねぇハヤト・・・確かにお家を買おうとは言ったけどオカルトはちょっと・・・。」
「ごしゅじんさまぁ・・・。」
しかしこのように中に入ってからというものの二人はくっ付いて縮み上がったまま震えていた。
俺は幽霊を信じている訳でもないが南大陸のダンジョンでしっかり魔物としての幽霊を見たばかりなのでこの世界ではそういうものとくらいにしか思っていなかった。
「ハヤトさんの世界では余程幽霊とは恐ろしい存在だったのですかね?二人は貴方に比肩するほどの戦士と聞き及んでいましたが・・・。」
「いや、俺が知る程度だが元の世界のホラーなどほぼフィクションだぞ?心霊映像傑作選などよく溢れていたが本物は遭遇したことなど無い。」
「そうなのかー?まあ怖いってよりもアイツらは倒すのが厄介ってくらいだけどな。」
早速くつろいでいる魔王と蜘蛛娘と俺は夕食を楽しんでいたが二人には無理なようだ。
この世界でのオカルトは【倒せる存在】なので戦う手段を持つ者なら問題なく対処出来るため恐れるようなものではないらしい。
対して俺たちの知るものは【特別な対処のできる者でなければ対応できない存在】らしいのでいかに強い者だろうと怖いものは怖い!というのがミサキたちの話である。
「そんなに言うならちょっと見て回ってみるか、みんなも自分の部屋決めないとだろ?」
「わ、わたしは今日はギルドに泊まるからいいかも?」
「ミサキ様おひとりでは心配なのでわたくしもご一緒しますよ・・・?」
「そんなにイヤかよ・・・。」
「では新参の私が一肌脱ぐと致しますわ、ご覧になっていてくださいね。」
そう言って立ち上がったコヨミは両手を大きく広げると足元へ輝く魔法陣が部屋全体に展開、同じ紋様の小さな魔法陣がもう一つ目の前に浮かぶとそちらを操作し始めた。
「これは私が編み出した魔法で【魔力探査】の術式ですわ。幽霊探索専用ではありませんが魔力を帯びたものを範囲検索できますの。」
「へえ、見つかるとどんな風になるんだ?」
「この目の前の魔法陣に反応が・・・出ませんわね。」
探査の魔法陣は潜水艦のレーダーのような形をしており時折中心から伸びた光の線が回転して魔力反応を探しているようだが中心にいる俺たち六人の反応しかない。
「いらっしゃらないようですわよ幽霊さん。」
「ほ、、本当に・・・?」
「そもそも我々は直接見てもいないじゃないですの。デマだったのでは?」
その時だった、不意に魔法陣に何かしらの光点が現れピコンと鳴る。
咄嗟に振り向くと窓の向こうで誰かがこちらを覗いている・・・例の錬金術師の男か?
「「ギャアアアアアアァァッ!!!」」
俺は駆け出して玄関から飛び出すとリビングの窓を外から確認すると・・・誰もいない。
俺は次元収納からタブレットを取り出して周囲のマップを表示するとビーコンは俺とパーティメンバーを示すが・・・やはり屋内からそれ以外の反応は無かった。
魔物ならば必ずキャッチ出来るはずなんだが。
「やはり何もいなかったぞ?俺のタブレットにも反応は無い。」
「そんなぁ・・・。」
「私の魔法陣に一瞬反応はあったのですがすぐ消えてしまいました、これではまるで転移魔法でも使ったようにも感じますね・・・しかしそれは無理ですわ。」
「なんでだー?」
「ルリコさんは知らないかもですが空間魔法に属する【転移魔法】はかなり高度で難しいモノの上に必ず備え付けの魔法陣を刻まなければ使えないものなのです。」
「ししかし、わたくしも目撃してしまいましたご主人様・・・。窓の外に恐ろしい顔がハッキリと。」
ここまで二人が震え上がってるのは見たことがないな・・・俺が見たのは普通のオッサンが覗いている程度にしか見えなかったが。
「仕方ないな・・・今夜は俺が一晩起きたまま番をしてるから皆は寝てくれ。ちゃんと二人ともメシ食えよ?」
「それはハヤトに悪いんだけど・・・。」
「じゃあオレも起きてるぞ!」
とにかく不審者を見張るためにも庭にゼロムキャリアーを出してレーダーモードを起動、こうすることでレーダーの精度は向上する。
その筈なのだがやはり俺たち以外の反応はやはり現れない、さっきのは見間違いか?
「このままじゃあの二人が一緒に住みたがらないなーどうしようハヤト。」
「ルリコはどう思う?さっきのは本当に錬金術師の幽霊とやらなんだろうか。」
「でもどっかで見た顔だったんだよなあのオジサン、その元家主は何年前に死んじゃったんだ?」
「リリムさんが言うには十年前って話だからルリコが知り合いのはずは無い、それなら単純に覗きの可能性もあるな。」
不気味だが魔物であるなら倒せるはずだ。夜目の効くルリコと俺はその後夜通しで警戒に当たっていたのだがその夜はとうとう男が再び姿を現すことは無かったのだった。
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