第45回 これが親子というものか
話が通じないからって怪人扱いはちょっと。
カウンターに頬杖を突き艶かしい笑顔をこちらに向けてくるのはルリコの母親だという。
彼女そっくりの顔に同じ色のロングヘアをたなびかせ、唯一違うのは露出度くらいだろうか。
娘と違いキッチリとしたスーツを着ているが・・・胸は母親譲りなのだろう、そのたわわは隠しきれていない。
カウンターからはよく見えないがやはりアラクネらしくその下半身も蜘蛛なのだろう。
「私はルリコの母親でこのバチュラのギルド支部長を務めておりますコハナと申しますわ。貴方がハヤトさんかしら?お噂はかねがね伺っておりますわよ。」
「冒険者のハヤト・獅子王です。ルリコはパーティーの仲間として頑張ってくれております。」
「まあご丁寧に、冒険者なのですからいつも通りでいいですのよ?」
バァンッ!!
と挨拶を交わしていると我慢できなくなったのかルリコが母親に詰め寄るように歩み寄るとカウンターを強く叩いた。
「そんな事より聞きたいことが山程あるぞ母ちゃん!なんでバチュラの町がこんなに変わってるんだよ!なんで母ちゃんがギルド長!?クレインおばさんどこいったんだよ!」
「相変わらず元気ねぇルリコちゃん。まあまあ、詳しい話はお茶でも飲みながらどうかしら?」
「そうで・・・そうだな、ご相伴に預かろう。」
「む〜〜〜〜〜〜!!」
そうしてウェイトレスさんに応接室へ案内される。
応接室にはテーブルにソファは当然として丸いクッションのようなものがセットされていた・・・なんだコレ?
と思っていたらそこにルリコが座ってしまう。
「懐かしいなコレ、オレたちアラクネ専用の椅子なんだぜこのクッション!」
「へぇー確かにいつもはルリコちゃん何にも座ってないもんね。」
「人族用の普通の椅子は普通に座れないもんなオレたち。」
確かに普段ルリコが何かに座ってるとすればベッドくらいだからな、食事やお茶の時はいつの間にか小型の座椅子のようなものを出していたのであまり気にしてないなかったのだ。
「母の配慮というものですよ、久しぶりねルリコ。」と部屋に入ってきたコハナさん。
ん??
「あれ?なんで母ちゃん人族みたいに二本足で歩いてるんだ??」
そう、彼女は普通に俺たちと同じような足で歩いてくるとサッと椅子に座ると足を組んでみせた。
「ふふ、変化魔法というものですわ、私たち身体の大きな亜人種には必須ともいえる魔法でしょうに。」
「そんなの教えてくれなかったじゃん・・・。」
「さてどこから話しましょうか。」
彼女が語るにはこのバチュラという街はルリコのいない三年間に大きく変わってしまったそうだ。
切っ掛けはとある人物が旧バチュラの町を訪れたときにその情景にいたく感銘を受けたのが始まり。その人は帝国の有名なツアーコンダクターであり、新規開拓を打診してきたのが始まりとのこと。
それからというものの大勢の観光客が他の大陸から訪れるようになり、この町は大いに潤った。
そんな観光客に対応するため小さな港町でしかなかったバチュラは突然の発展を見せ、短い期間で有名なリゾート地の仲間入りを果たしたそうだ。
「マジかよ・・・そんなことがオレのいない間に。」
「確かに街の発展は良い事だと思うわ、でもこうなってしまったのはパパの暴走もあるわね・・・たくさんの人が街にやってきたのが相当嬉しかったみたいであれよあれよという間に大きくなっていったのよ。」
「そういやクレインおばさんは?なんで母ちゃんがギルド長に?」
「・・・今のバチュラが合わなかったみたいで辞めてしまったのよ、漁師の旦那さんと故郷に帰ってしまったから代わりに私が就任したのよ。」
なるほどな、街の発展に合わなかった人に無理して留まれというのも無体な話だろう。
「そういや父ちゃんは?」
「パパはそろそろ来るんじゃないかしらね、あなたが帰ってくるのを今か今かって楽しみにしてたもの。」
「ルリコが帰ってきたってのは本当かー!!」
その時凄まじい大声とともに応接室の扉が砕けるような勢いで開け放たれた。
そこに立っていたのはやはりスーツだったが歴戦の戦士か大ベテランの漁師然とした日焼けした大柄のアラクネの男で、下半身は奥さんと違い蜘蛛のままだったが所々破れた布がくっついていた。
そして素早く移動すると俺たちの前のテーブルを弾き飛ばしてルリコを軽々と抱き抱えてしまう。
・・・あーあ、せっかくのお茶菓子が・・・。
「おおルリコ!!しばらく見ないうちにいい女になったな!」
「三年しか経ってねーよ!!」
「男子三日会わざれば刮目して見よ」「オレは女だ!」
「あなた!またズボン脱がずに変化解いたでしょ!ボロボロじゃないの!!」
・・・さすがルリコの家族だな、全員集まったら大騒ぎになってしまった、こちらから声をかけるのは落ち着くまで待つとしよう。
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「いや、お恥ずかしいところをお見せしてしまった。あんた達がルリコが世話になってる冒険者パーティだったか!」
ヒナカさんとリリィも片付けに参加して父親が派手に荒らしてしまったテーブルが綺麗になったところでようやく落ち着いて話が再開した。
改めて冷静に腰を下ろした大柄のアラクネの彼のスピードとパワーは十分に理解したつもりである。
「そしてお主がヒナカの手紙にあったハヤト殿か?悪いがやはり貧弱な人族にしか見えんな!」
「あなた、名前も名乗らずに失礼でしょうが!」
「おおすまんすまん、わしはルリコの父親でブラックってもんだ!この街の町長でアラクネ族ガランダ派の総長でもある!」
「ハヤト・獅子王だ、早速で悪いんだが・・・。」
「求婚か!?そんなもの許すはずがないだろう!」
「話を聞け・・・。」
ここまで会話が成り立たない相手は脳を侵食されたアームズ以来だな・・・。
「どうしてもと言うならこのわしを倒してみるがいい!」
それもいいかもしれん、少しはお灸を据えなければこのオッサンも黙らないだろうしな。
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