第43回 リリィの過去
ハヤトは性善説というものは信じないタイプです。
ーリリィの回想ー
わたくしのいた日本という国は青い広大な海の緑の美しい山々に包まれたとても美しい世界でした。
文明の発展度ですか?そうですね、蒸気機関などはありましたがご主人様がお持ちになっているようなたぶれっと?や装甲車のような機械などはなかったように思います。
すちーむぱんく・・・難しい言葉はミサキ様に教わっておりますが蒸気で走る車や列車は見かけましたよ。
あと魔力というものの代わりに霊力と呼ばれるものは皆が身体に宿しておりました、ただ霊力で動く道具などはとても貴重なもので神官と呼ばれる立場のものくらいしか持っていなかったと覚えております。
はい、ちゃんとお料理も花嫁修業にて学びました。和食は当然として中華洋食イタリアン、お菓子も和洋どちらもお作りしますね。
てれびですか?ご主人様の車にある液晶モニターのようなもの・・・わかりませんね。娯楽自体はわたくしあまり触れてきませんでしたから、申し訳ございません。
龍神の娘として産まれたわたくしはそれはそれは蝶よ花よと可愛がられ育ちました。青い龍鱗の篭手や鎧は両親から贈られたものです。
ええ、今の姿とは顔こそそっくりですが髪色は限定解除した際の白に近い色でしたよ。
奉仕奴隷・・・?はい、今の境遇を不幸とは思いませんよ?ご主人様とわたくしは出会うべくして出会ったと感じております。これも女神様とロレンツ様に感謝します。
わたくしの人生は・・・本来ならば姫として宮中へ嫁ぐはずでしたが国が内乱で荒れまして。父を反乱軍に討ち取られ、わたくしまで犯そうと手を伸ばして来た兵長の姿は恐ろしかったです。
遂には怒りのあまりわたくしの霊力は暴走し、巨大な龍の姿となってレジスタンスの将を彼らごと焼き尽くしました。その炎は止まることなく人を、軍を、街を、国をどんどん燃やしていき終いには全てを飲み込んでしまったのです。
それから付いたあだ名は【青龍鬼】。わたくしはそれから人の姿を忘れ龍として滅びた祖国にいつまでもいつまでも居座っておりました。そのうち一つの国を滅ぼした悪龍として朝廷、その世界の王国の大軍隊が討伐に動き出し圧倒的な兵力をもってわたくしを滅ぼしたのです。
そうしてわたくしは最後の最後まで人を呪いながらその生涯を閉じました。
ちょ、ミサキ様にルリコ様!?ヒナカさんまで!
どうなさったのですかそんなに大粒の涙を流して!!え、わたくしがトドメを刺した、ですか??ただいまタオルをご用意しますのでお待ちください!
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以上がリリィの語った彼女が元いた世界の話だ、ドラゴンのお姫様が転生してこの世界に生まれたというわけか・・・。
「そうするとリリィもその龍神とやらに変身することが出来るのか?」
「そうですね・・・こちらの世界で記憶を取り戻してから試したことはありませんが出来ると思います。」
「あまりその機会が来ないよう願うけどね・・・。」
ミサキとルリコの涙腺もようやく止まったようだ、こいつが感激屋なのはわかってたがルリコまでとは。
「ふむ、今でも人間憎さは残っているか?」
「いいえ、と言えば嘘になりますね。正直に言いますとあの時脳裏に焼き付いた男の兵士に今でも少しトラウマがあります。わたくしより弱いということは頭でわかっていても忌避感が先走ってしまうと言いますか・・・。」
「俺は?」
「ご主人様はそのような下賎な者どもとは全く違います。」
「あまり俺を神聖視するなよ?俺だって倒される者から見れば悪辣な襲撃者なんだから。」
一口紅茶を啜る。
やはり稀人と言うやつは必ずしも同じ世界からやってくる訳じゃなさそうだな、そして人間であるならばその全てが善人だというわけもないのだろう。
一国一城の主となって権力を手にした者も何処かへと姿を消した者もいるというのは暇な時に稀人の資料をギルドへ正式に依頼して集めてもらったから察する事が出来た。
中には正義の味方を気取って我流の正義を振りかざし身を滅ぼしたり、自由に暴れすぎて最後は奴隷となったものまでいるらしいな。
「ご拝聴ありがとうございました、皆さまお茶のお変わりはいかがでしょうか?」
「そうだね、じゃあ今度はわたしとハヤトの世界に着いて教えてあげるね!」
「・・・俺はトイレだ、おかわりを頼む。」
「はい、ご主人♪」
「で?お前らはわざわざ俺たちが気を抜くのを待ってやがったと?」
「「「すいませんでした。」」」
呆れたもんだな・・・昼間のナンタラの星の連中はトイレにたった俺を全員で襲ったのだ。
ちなみにギルドに所属する冒険者同士の私闘はご法度である、その力を試すために試合という形式でならギルドの練習場で出来るがそれはあくまで試合。バレた場合は五年間の冒険者としての活動停止が言い渡されるため余程稼いでいなければ実質の廃業である。
もちろん隠れてやろうものなら犯罪奴隷行きだ。
事前にルリコの粘着糸を貰っているので全員縛り上げ拘束し船の従業員に引き渡しておいたのは言うまでもない。
このまま少し風に当たりに行くとしよう。
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