第41回 蒸気船での船旅
第五章スタートです、引き続きご愛顧のほどよろしくお願いします。
すっかり遅くなってしまったな・・・無理やりバッカスからセルゲイに向かったのが悪かったか。
俺たち一行はリュウガさんやサキュバス三人組に別れを告げると一路本来は直通の道が存在しないという両街の間を爆走していた。
バッカスの街は確かに南にはあるものの南大陸に行く船が出ているのはセルゲイからだけというのだから不便である。
始めゼロムキャリアーで向かおうと進言したがリリィとルリコには全力で拒否された、その方が早いというのに。海の上は走らせたことは無いが湖程度なら上を走れなくとも水底を猛スピードで走れる。
まあ確かに浮上できるか不安なものに乗りたくないという気持ちもわかるのだが。
「やっとこのスピードにも慣れてきたぜ・・・。」
「それにしても急すぎない?お見合いだなんて。」
お見合いという儀式に関しては俺の知識にあるのは旧時代の人たちが自分たちではなく他人に結婚相手を紹介されて付き合い結婚するというよくわからない案件でしかない。
ミサキにも聞いてみたがあまり良い印象はないようだ。
リリィはこの世界の人間ではないため門外漢、ルリコの心情は無視なのだろうか。
「オレの一族の風習としては結婚相手は自分の力で見つける、そのためにこの大陸に来たって言ったよな?」
「うん、確かそのためにヒナカさんも着いてきたとか。」
「そうそう、それがヒナカが要らん世話を焼いちまってさ一回ハヤトがうちに来た時『お嬢様のいい人この方なのね!』と勘違いしたらしくてさ・・・そのまま父ちゃん達に報告の手紙を出しちまったんだと。」
ああ、バイトシャークを倒した時にお邪魔したことがあったな。
「それでご主人様を結婚のお相手だとご両親が思ってしまわれたのですか?」
「それでさ・・・父ちゃん達考え方が古くってヒナカ曰く『ただの人族などルリコの相手に相応しくない!』とか言って。」
「それでお見合いを御膳立てしてきたということか。また面倒な・・・。」
「そうそう!だから一旦帰って断ってこようと思ってさ。オレまだ誰かの奥さんなんて早い気がするし。」
親か・・・俺の記憶には無いものだ。
俺は早い段階で両親がいた記憶が無い。小さい頃から施設で育った俺からすれば親代わりといえば孤児院の院長くらいだが懐いていた記憶はない。
「ハヤトはオレが誰か別のやつと結婚したら・・・嫌か?」
「相手が心からルリコを愛しているなら話は別だが・・・不誠実なやつならば喜んで叩き潰してやろう。」
「だよな!」
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セルゲイに到着したのは既に夜の帳が落ちた頃だったが仕方ない、装甲車をしまうとギルドには寄らずにルリコの家に直行した。
「あらあら、お嬢様お帰りなさい♪」
「ヒナカァ!余計な手紙父ちゃんに送ったろ!」
「ひああ!?」
さっさと先に入っていったルリコを追うと・・・既にヒナカさんはルリコの糸で雁字搦めになっていた。
「オシオキだっ!」「ひあああん♡」
「・・・喜んでないかコレ?」
その後糸を回収したルリコとテーブルに着くとヒナカさんがお茶を入れてくれた。
一応他のメイドの前ということでリリィは俺の後ろに控えている。
「申し訳ありませんお嬢様、しかしお招きされた時にとても良い仲に見えたもので嬉しくなってしまいつい。」
「早とちりだぜ全く・・・。」
「まあ気持ちはわからないでもないかな、わたしもお姉ちゃんが昔彼氏を家に連れてきた時は嬉しかったかも!」
一応暗くはなっていたが昼にたっぷりとラヴァーロートルのフルコースを食べたばっかりだからか夜は別に要らないな、黙っていれば用意してくれそうなのでそれだけ伝えておく。
「それでいつ出発する?俺達も付き合おう。」
「ホントか!?じゃあ」「お嬢様がすぐに戻ってくると思いまして船のチケットは明日朝一番の便を取ってありますよ。」
「それも気が早いと思うぞ・・・まあいいか。」
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ルリコの家に一泊し翌日、一応ギルドに顔を出しこの大陸をしばらく離れることを伝えてから船着き場に向かう。
礼儀というものは大事だからな、面倒でもこればっかりは仕方ない。
「これがこの世界の船か・・・。」
稀人によってもたらされたと言う蒸気機関と魔石で動く魔導機関。これらによって最も発展を遂げたのが造船技術らしい。
大きな外輪を三対もった蒸気外輪船という物だ、パッと見巨大な船に車輪が付いているようにも見えるが魔力稼動も備えたこの船はやろうと思えばそのまま大地を走ることも出来るのだとか。
今はこうして海に浮いているが港によっては浅く着港出来ない場合などは浜辺から直接上陸して客や荷物を下ろすのに適しているらしい。
「オレもこの大陸に来た時はこれに乗ってきたんだぞ!」
「大きさだけならゼロムキャリアーより大きいんじゃない!?」
「そりゃ船なんだから大きくなきゃ仕方ないだろう。」
さっそく乗り込むと中も広い。
俺たちの部屋は・・・二等室、上から三つ目のグレードらしいがホテルじゃないんだ、そんないい部屋をとる必要は無いだろう。
部屋はヒナカさんが三つ予約してくれたらしく、俺は一つで残りは女性陣が二人で一部屋だ。
「旅客船って初めて乗るけどいいお部屋じゃん!」
「出発にはまだ早いかもしれませんね、ご主人様朝食をラウンジにてお召しになられてはどうでしょう?」
「そうだな、行ってみるか。」
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