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特撮転生 仮面レイダーZEROM 最終回から始まるアナザーストーリー  作者: JING
第三章 ドラゴンとドラゴニュートと奴隷呪法
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第24回 ルールを破るもの

素敵な言葉だと思います

キャノンボアとは生きた魔導砲台である。

見た目はただの大きなイノシシなのだが身体に不釣り合いなほどの巨大な鼻を持ち、収納魔法を発動すると石や木材に小型の魔物や瓦礫まで様々なものを砲弾として放ってくるのだ。


そんな数々の砲弾をリリィは篭手と脚甲を使っているとはいえ徒手空拳で防ぎきっているのだ。


「セイヤァァァッ!!!」


咆哮一閃、彼女は裂帛(れっぱく)の気合と共に最後に撃ち出された鉄球をその拳でピッチャー返しにしたのだ。


『GYAAAAAAAAAAA!?!?』


恐らくはトドメを刺す気で放ったのであろう弾丸をそのまま返されたのだ、キャノンボアとやらもたまったものではないだろう。

そのまま鉄球を鼻っ柱に受けた化け猪はそのまま横転してしまった。


そして恭しく礼をしたリリィはメイドドレスを再び着ると「はしたない声を上げ申し訳ありません。」とにっこり笑った。

なにが戦闘の足手まといにはならないだ、たった一人で厄介そうな魔物を倒してしまったじゃないか・・・。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その後、やはり爆発することは無かったキャノンボアをルリコの糸を使って樹に吊るし血抜きをした後に丁寧な所作で解体を始めるメイドさん。もしや服を脱いだのは汚れるのを嫌っただけなんだろうか・・・。


「戦い慣れておるのう・・・これはオズ姉様を軽く超えておるわ。」

「倒しても爆発しなかったね?」

「普通せんわ!・・・ああして倒したその場で解体を始め、素材を持ち帰るのが困難となれば魔石と討伐照明に亡骸の一部を回収。そして残った部分がアンデッド化せぬように地中に埋めるか燃やし尽くしてしまうのが正しい魔物の処理方法というもの。我が里で定期的に行っている魔物の大規模掃討作戦とは危険な魔物を討伐する他にも素材とその肉を手に入れる事を前提として行われておるのじゃ。」

「なるほど、それで帰ってきたときに謝肉祭(カーニバル)を行っていたのか。」


それは初めて知ったな・・・今まで俺たちが倒してきた魔物たちは俺かミサキが倒すと例えファイナルアタックを使用せずとも爆発してその周りに素材をばら撒くだけだった。

ちなみに俺たちのいた世界の謝肉祭とは肉に感謝する祭りではなく、大陸の単なる年中祭事となっていたことが古代の文献に書いてあった。


「ご主人様お待たせ致しました、お昼にちょうど良い食材が手に入りましてございます。」

「キャノンボアの肉は美味いぞ!リリィが()()()ってのをしてくれたからさらに美味くなるらしい!!」

「お、おう。」


そして昼食の準備は彼女たちの手によってテキパキと進められ、既にフライパンの上には立派なステーキが踊っていた。

何より驚いたのリリィは他人への指示が極めて上手い点だ、料理の際には邪魔にしかならないはずのルリコを見事に助手として使っている。あれは恐らく付け合わせとなる葉野菜をちぎらせているのだろう、「次はなんだ!?」と楽しげなルリコに顔だけ向けて指示を飛ばしている。お願い(命令)を聞いた蜘蛛っ子は器用に各々の皿へ野菜とソースを振り分けている。

そして焼きあがった肉を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ルリコ様、完成です。」

「おお、美味そう!!」

「ご主人様、こちらキャノンボアのステーキ西洋わさび添えとなります。お好みでこちらのソイソース(醤油)をお使いください。」

「これは・・・上等な店のメニューとして出てきても遜色ないな。」

「何を言うか、ここまでの逸品はワシも見た事がないわ!いただきますのじゃ~♪」


ン、美味い!

確かにこの世界にやってきてから様々な美味い料理を食べてきた自信はあったがそれは『井の中の蛙大海を知らず』という古代の慣用句が当てはまるだろう、俺はまだまだ料理という奥深い存在には未知の領域があることをこの一皿から学んでしまったのだった。

なんと険しい道のりだろうか、だが悪くない。

俺の知的探究心は進み始めたばかりなのだ、この食の探求という名の上り坂を!!


☆獅子王ハヤト先生の次回作にご期待くださいーーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



・・・一瞬なにか全てを捨ててでも挑まなければならない坂があるように感じたが落ち着け、そしてこのステーキを食え。

そして俺は泣いているのか!?どうやら美食への感動のあまり涙腺までが決壊したかのようである。


俺以外の三人は泣くような事態には至っていないが珍しく喋ることも忘れて目の前の皿に夢中になっているようだ。

ん、三人?

ふと後ろに振り向けばリリィが居た、彼女は後ろから俺たちが食べる様子をニコニコと見つめていたのだ。


「なんで食べないんだ?」

「はい?もちろん後ほど頂きますが、わたくしもキャノンボアは大好物ですので。」

「いやそうじゃなく、一緒に食べればいい話だろ?」

「滅相もない、主と奉仕奴隷(サーヴァント)が同じ卓を囲むなどあってはならないことです。」


そんなルール受け取った書類にあったか?


「ジオ、そうなのか?」

「いや、ワシは奴隷を持ったことがないからわからぬ。」

「ルリコは?」

「一緒に食ってるぞ?小さいころからヒナカと一緒に育ったようなもんだしな!」

「・・・だそうだ。リリィ、あくまでお前はメイドであると同時に俺の仲間でありパーティの一員だ。俺の元いた所の古代の言葉に『同じ釜の飯を食う』って言葉がある。同じテーブルにつき同じ料理を食べて親睦を深めるのが良しとされてきたんだ。」

「し、しかし。」

「なら命令だ。獅子王ハヤトが汝リリィ・シルバーに命ず、こっちに来て一緒に食おうぜ。」

「・・・命令であれば従うのがサーヴァントで御座います、拝命致しました。」


そうして森の中の食事会は全員の良い笑顔の中終わりを迎えたのである。

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