表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
織田家の家臣になったと思ったら小田家でした…!  作者: 長谷川ヨシテル(れきしクン)
1/8

第1話 どうやら織田家の家臣になった感じです!

僕は最近、戦国武将にハマっている。


大学もリモート授業ばかりだし、バイト先の居酒屋もシフトを全然入れてくれないし、

やることと言ったらゲームくらいしかなくて、

今は『SENGOKU丸』という、敵をバッサバッサ斬っていくゲームをやっている。

使っているキャラは織田信長おだのぶなが。めちゃくちゃ強くてカッコいい!


そこから、ニワカでエンジョイ勢ではあるが、

織田信長にどハマりしてしまい、実は今、安土城あづちじょうに初めて来ている。


安土城は本能寺ほんのうじの変の後に焼失してしまったらしく、

建物は全然無くて、天守台も石垣が残っているだけだが、もうメチャクチャ興奮している。

友人には「安土城とか何も無いのに、何が楽しいの?」と聞かれると思うが、

この天守台で空を見上げて、信長の時代の天守を想像している今、最高すぎる。


「人間五十年、下天げてんの内をくらぶれば、夢幻ゆめまぼろしごとくなり!」


自分らしくも無い。テンションMAXなせいだろう。

周囲に人がいないことを良いことに、

信長が好んだという『敦盛あつもり』の一節を大ボリュームで口ずさんでしまった。


その瞬間。空が光に包まれた。いや、天守台の空だけだ。眩しい!

あっという間に、僕は光に包み込まれた。


どれくらいの時間が経ったろう。どうやら気を失っていたようだ。


「ここ、どこ?」


ちょっと低め山の奥に、結構高い山が見える。あとは田んぼなのか畑なのか、ほとんどが平野。

冷静になって記憶を遡ってみる。


「あれは小学四年生の冬。近所の公園の遊具から落下して鎖骨さこつを折って…

いや、どこに遡っているんだ。それじゃない。

えーっと、そうだ、安土城の天守台で光に包まれて……だ。」


すると、遠くの方から喧騒けんそうが聞こえる。その声が土埃つちぼこりと共に近づいてくる。


「え…?なになに!?」


驚くのも無理はない。

ボロボロの甲冑かっちゅうを身にまとった数十人の男たちが、汗だくで迫ってくるのだ。


「いやーーーーーーー!」


僕は本能のままに逃げ出す。

しかし、甲冑を着ていて、疲労困憊ひろうこんぱいの様子の男たちの足が驚くほど速い!

中でも驚くのが、一番立派な甲冑の人のスピードが一番速い!


「なんだよ、これ!!!」


50mほどのダッシュをしたところで、ついに僕は男たちに追いつかれてしまった。


「やめろーーーーーー!!!!」


僕の叫び声とは裏腹に、男たちはそのまま僕をスルー!

そのまま全力疾走で通り抜けて行った。


ひと安心すると、また背後から迫ってくる男たちが見えた。

この男たちの甲冑は、ボロボロじゃない。その中心には馬に乗っている人がいる。

ボケーっと眺めていると、馬上の人が弓を構えた。

たぶん100mくらい先なんだろうけども、視力は1.5以上あるから、馬上の人と目が合ったのが分かった。


そして、矢が放たれた。

先ほどのいきなりのダッシュと、弓矢に対する突然の恐怖心によってか、思うように足が動かない。

バッティングセンターでふざけて挑戦した150km/hの豪速球のような轟音が迫ってくる。


『あ、死ぬ』


と思ったのが良かった。腰が抜けた。

ヘタっと座り込んだ頭の上を矢が凄まじい勢いで通り過ぎて行った。


「おい!早く逃げろ!」


先ほどのボロボロ甲冑の一人が遠くで叫んでいる。僕は耳も良い。


『走らなきゃ!』


まっすぐ逃げては弓に当たると思い、ジグザグ走法でボロボロ甲冑団を目指して走る。

矢がビュンビュン飛んでくるが、ジグザクが効いている!当たらない!

部活のトレーニングで反復横跳びしといて良かった!


すると、目の前は川!迷わず飛び込んで潜水!

スイミングスクールに通っていたから、そこそこ泳げるけど、服を着ていては勝手が違う。


「仕方ない!」


素っ裸になりクロールで逃走。しばらく泳いでから振り返る。

どうやら襲ってきたやつらは振り切れたようだ。


「大事ないかー!!」


ビクっとして目をやると、そこにはボロボロ甲冑のおじさんたち。

長めの枝で助けようとしてくれるが、みんな及び腰だ。

それじゃ届かないだろ。でも、たぶん悪い人たちじゃない。


「大丈夫ですー!」


泳いで岸に辿り着き、一枚の布切れをもらった。もちろん股間こかんを隠した。

おじさんたちには特に何も聞かれることもなかったので、付いて行った。


すると、土塁と水堀に囲まれたお城に着いた。やぐらや城門もある。

何となく知ってる。信長が安土城を築くちょっと前まで、

天守は無く「館」みたいなお城だったらしい。


このあたりで、僕は覚悟した。

これは、具体的な夢じゃない。ドラマとか映画であるアレだ。

意外かもしれないが、個人的にとてもワクワクしている。


だって、別に大学生生活を送ってても、楽しいこともやりたいこともないし、悶々としてたし。

アレが現実に起きるかどうかなんて科学的なこと?なんてどうでも良い。


お城の中にボロボロ甲冑の人たちと入ると、

一番逃げ足の早かった立派な甲冑の人がいた。たぶん同世代っぽい。


周囲のおじさんたちの肩をポンポンと叩いて、

何か言葉をかけている。どうやら労っているようだ。


一番早く逃げてたくせに偉そうな同世代武将は、

僕とお城に到着したボロボロ甲冑の人たちにも順々に声を掛けていく。

順番的に最後が僕になった。


そして、その同世代武将が、

足元から見上げながら素っ裸の僕に労いの言葉を掛けてきて、最後に目が合った。すると―――


「え、えええ?誰?だれーーー!!!」


慌てる同世代武将。でも、説明しようにも、何て言って良いのか全然分かんない。


北条ほうじょうの手の者か!私を討ちに来たのか、そう容易たやすく死なぬぞ!」

「いや…討つって…僕、裸じゃないですか」


と弁解したものの、周囲は騒然。この同世代武将が刀に手を掛けた時だった。

一人のボロボロ甲冑おじさんが、同世代武将に声を掛けた。


「お屋形様!彼者かのもの此度こたびいくさで“小田おだ家”の御為おんためならばと駆け付けた菅谷すげのや家中の者でございます」


「あ、おぉ…そうであったか。すまぬすまぬ!苦労を掛けたな」


そう言ってニカッと笑った同世代武将は、何だか憎めない雰囲気を持っていた。


『え?っていうか、さっき”織田家”って言った?言ったよね!!よっしゃー!!!!』


と、いうことで。

こうして、ドラマとか映画でよくみるアレによって戦国時代に来た僕。

死にかけて戸惑っている部分もあるけども、ひとまずめちゃくちゃ嬉しい!

だって、大好きな織田家の家臣となった感じじゃないか!


よし!目指せリアル天下統一!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ