第5話 少しずつ見えてきた現実
あれこれと、イケメン夫婦に聞こうとしていると、奥の方から、カツーン、カツーンと甲高い音が近づいてきた。
「皆、待たせたみたいで、すんまそん(笑)」
本人的に狙ったのかもしれないが、格好の方に俺らは噴いた。
『おぉ!(笑)孝雄がなんだか勇者らしいわ(笑)』
光輝く真っ白な鎧、ビームでも弾かんばかりに鏡面処理された盾、極めつけはキラキラとした飾りのついた腰についている剣。
「敵が現れたら狙ってくれと言わんばかりだ。ま、俺らも似たような格好をしないといけないんだろうけどな(笑)そこん所は、おんちゃん次第か。」
木山は笑いながら俺を指差した。孝雄は何で大田次第なんだろうと不思議に思いながらも話を聞いていた。
すると部下の若い男女達が俺達4人へ近付いてきた。
「このままでも構いませんが、皆様最も輝いていた頃の体に戻りたくはありませんか?というよりも戻しますね!ついでに表向きの職業も(ボソ)」
彼らは俺らを囲うように手を繋ぎ、何かを言いながら、ぐるぐると回りだした。すると、足元に魔方陣が浮かび体が軽くなる感覚を覚えた。魔方陣が消える頃、彼らは苦しそうな表情で手を離し、先程いた場所へと支え合いながら戻っていった。
「おぉー!すげぇな!謙次が悪さしてた頃に戻ってるぞ!(笑)」
「そういう修も同じ頃に戻ってるぞ(笑)」
相変わらず、この二人は絶好調すぎるんだが、大丈夫だろうか・・
「おいおいおい、おんちゃんダイエット成功おめでとう!(笑)ついでに昔に戻ったね!」
「おっ、ダイエットおめでとう!飯俺おごるよ、勿論特盛でな(笑)」
木山も修も雑じゃないか?いや、この感覚が嬉しいんだけども。
「お、俺は?」
孝雄の囁きに、ため息つきながら、2人とも触れる気がないようなので俺が言うしかないか・・・
「若返ったと思うよ?肌艶が良いと思うし、腕も筋肉少し戻ってる気がするし・・」
「つまり?」
「見た目あんまり変わらんよ。」
「そ、そうか・・・」
うなだれる勇者様はほっといて俺らの格好をどうにかするか悩んでいると、また旦那さんの部下の人達が色々持ってきた。
「お三方にはこの辺りがよろしいのではと思いますので、是非着ていただければと、というかコレでお願い致します。」
部下達の有無を言わせない辺りが旦那さんの普段の人柄が見えるようだ。皆不満もないので脱いだ服をバッグに入れてパンツ1枚になってさっさと着てみた。
木山は大剣を背負い金色の鎧で誰よりもチカチカするが、俺が突っ込もうか悩んでいると修が笑いながら
「おぉ!偉大なる勇者様(笑)マジで孝雄の負け(笑)木山先生、孝雄が勇者と言っていますがどうしますか?(笑)」
木山はがっくりと肩を落とし、
「孝雄、金色に塗れ、今すぐ塗れ。何ならコレと交換しようぜ・・・」
「えっ、ヤだよ俺。このままで良いよ。まだそれよりは地味だし・・」
「そうか・・・よし、ファンタジーに浸ろう、俺の方が目立つし強いという事にしよう・・・」
そんな落ち込んでいる木山の隣で槍を持って漆黒のローブを着た修はニヤニヤしながら、二人のやり取りを聞いていた。
「俺コレで良かったよ、木山と孝雄には悪いんだけどさ。」
至って普通のクロスボウと短剣、黒に近い赤の体を覆うようなマントに何かの革で出来た鎧だったので、誰も何も言わない。
「さ、それで俺らはどうすりゃいいんだ?」
唐突に黄金の騎士様がヴェリトさんへ尋ねた。
「この世界は虚無に支配され神々も屈してしまい、残っている神は私と妻、後はおばあちゃん、そして部下の数名しかいない。何とか屈した神々を解放し、この崩壊寸前の世界を救ってくれ!」
深々と下げるその姿からは、とても神とは思えないが余程切羽詰まった状況なのだろう。。え?神?(笑)
「ちょっと申し訳無い、旦那さんは俺らを召喚したどこぞの王国の王子とか王様とか、そういうことではないんですか?」
「いやぁ、違うんだよね。一応、この世界の主神として民には祈られている筈だよ?妻は女神だから。あぁ、でも出来れば旦那さんって言ってくれないかな?生憎、気軽に話しかけてくれる者なんて周りにいなくてね。」
照れくさそうに笑う主神様はやはり旦那さんでもう良いかもしれないな・・・
「孝雄、お前のスマホを旦那さんにあげてくれ。どうせ読めないし使えないだろ?」
俺が当然の事のように言うと、渋った顔をしたが現実問題として使えないわけで、色々な都合を考えたら使えるものが持つ方が絶対良いに決まっている。というか、ここのパイプは切ってはいけない。俺こそ2代目のボンボンだが、小さいながらも会社経営している俺の勘がこのラインは死守しろと訴えている。
馬場 孝雄
年齢 19歳
Lv 1
HP 135
MP 78
職業 勇者
スキル 剣技、聖魔法、勇者の紋章
木山 謙次
年齢 19歳
Lv 1
HP 383
MP 175
職業 重騎士
スキル 大剣技、格闘技、察知
浅村 修
年齢 19歳
Lv 1
HP 285
MP 487
職業 魔槍士
スキル 槍技、属性魔法、念話
大田 賢治
年齢 19歳
Lv 1
HP 175
MP 916
職業 錬金術師
スキル 投擲技、錬金術、鑑定