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絶望

「ジーニスを返せぇぇぇええええ!!!!」


「父さん!?うぐっ…!!」


手足のない体だと言うのに、残った腕や足で勢いよく掴みかかり、まるで自分を食い殺そうとさえするような気迫の父。


「お前じゃない…!俺の息子は…!!!!」


「や、やめて…父さ…」


グググッ…


どこにそんな力が残っているのか、傷と血だらけの体でジーニスの首元にしがみつき、殺意を表すジーアベル。その異様な状況に、ジーニスの理解は追いつかない。


「な…んで…!!」


「返せ…!!!!俺の息子を…!」


「眠れ」


ドサッ…


気絶し、寝ていた簡易的なベッドに横たわる包帯まみれの変貌した愛する人。


「げほっ!ごはっ!」


「大丈夫か?」


手を差し伸べるスーマの顔は、普段見ていたような穏やかな表情じゃなく…


「ありがとうござ…?スーマさん…???」


「…」


何かを隠そうとしているように見える。


「一体、父に何が…???」


「…場所を変える。ついてこい」


「は、はい…」


ジーアベルに殺意を向けられたという、訳のわからない頭のまま、ジーニスはスーマについていく。


「父さん…」


息子の首を絞めていた父の目は、憎悪と恐怖で満ち溢れていた。






――――――――――――――――――――――――






「すまない。ジーアベルは襲われたショックからか、錯乱状態だったんだ」


「錯乱…?」


おかしい。


「そんなの…」


絶対におかしい!


「信じる訳ないじゃないですか!!」


「…!」


俺が死んだと思い、イマジーネに襲われた末の「返せ」という言葉ならわかる。でも…


「あの父さんの言葉と恐怖は、俺に向けられたものだった!イマジーネに襲われただけで、俺に向かってあのような事を言うとは…!!」


「あいつは混乱していた!それだけだ!!」


「違う!!!!父さんは確かに弱い…けど弱いなりに強さを持っている!!イマジーネに追放され、それでも母さんと二人でノイタークまで必死に逃げ延びた、そうでしょう!?」


「…ジーニス」


「そんな父さんが、イマジーネに俺が殺されたと思ってても、あそこまで取り乱す事は無い!!」


俺は父さんを…信じてるから。


「俺をまるで仇のように罵り、掴みかかった父さんが!どうしても理解なんて出来ない!!」


「…そうか」


ごめんなさい、スーマさん。


「説明していただけませんか!?ノイタークに、父さんに何があったのかを!!」


あなたを困らせるつもりは無いんです。


「…」


でも俺は、真実を知らなきゃいけない。父さん、母さん、そしてノイタークのみんなのために。


「…これを話す前に、約束してくれ」


「何を?」


「私が今から話すことを聞いても、後悔するな。あれは本当の姿ではない」


後悔…?本当の姿…???


「そして、絶対に死ぬな」


「!?」


俺が…死ぬ…?相変わらず、スーマさんの言うことはわからない…


「わかりません…ですが」


俺はノイタークを救わなきゃいけないんだ…!!


「わかりました」


「それでいい」






――――――――――――――――――――――――






「やあ、スーマ。久しぶり」


「…お前とはこんな形で会いたくなかった」


あれは本当の姿ではない、作られた人格…偽物だ。


「おっと、あいつの一部のくせに、随分と俺に生意気な口を聞くんだね」


「あの方の名前を軽々しく口にすれば、いくらお前でも八つ裂きにしてやる」


忌々しい…あれこそ、この世界の歪みそのもの。


「怖い怖い…でも出来るのかな?」


「なっ…やめろ!!」


「ふふっ…!」


私の家に配置していた、転送魔法陣の場所を割り出したあいつは…


「よいしょおっ!!」


ピシュン!!


家にオーラの光を撃ち、そこに集まっていた者達を、瓦礫の下敷きにした。


「何てことを…!!」


「大丈夫大丈夫。あんなんで死ぬくらいなら、どこに転送してもどうせ野垂れ死ぬだけだよ」


私は皆が死んだと思っていた。だが…


「…ふーん。俺の記憶じゃ、彼の誕生日はまだだったはずだろ?」


「!!」


「オラァアアアアアア!!!!」


ガッ!!バキッ!!


まだスキルが目覚めないはずのベラキサムが、オーラを纏って崩れ落ちる瓦礫を次々と打ち砕いていた。


「こりゃ直接…!」


「させるか!!」


「おっと」


キィィィン!!!!


私の力で、奴を止めようとした。


「スーマ、俺が目覚めるまで守りに徹していたからか、攻撃に重みがないね」


「…!?ああっ!!」


ドガッ!!


私は全力で抗ったが、奴には及ばなかった。吹き飛ばされ、家屋に体を打ちつけられた。そんな時…


「やめろ!!」


ベラキサムや他の者が瓦礫の撤去をしている時に、皆の合間を縫ったジーアベルが飛び込んで来た。


「よせ!ジーアベル!!あいつは…うぅ…」


私に付けられた傷は浅くはなく、すぐに動けなかった…


「ジーニスの父ちゃん!!ヤバイって!!」


ベラキサムも必死に止めようとしたが…


「話せばわかる…!!俺の息子だ!!!!」


ジーアベルはお前を止めることを、やめようとはしなかった。






――――――――――――――――――――――――






嘘に決まってる!!!!俺が…!?!!なんで!!!!!!!


「ジーニス!あの時のお前はお前であって、お前じゃない!!別人なんだ!!!!」


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああああああ!!!!!!


「あぁ…あああああ…!!!!」


俺がみんなを、父さんを殺そうとするなんて!!ありえないありえないありえないありえないいいいいいいいい!!!!!


「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


「ジーニス!!気をしっかり保て!!!!」


俺が…父さんを…


「あ…」


里を…


「ジーニス!!!!しっかりしろ!!!!ジーニス!!!!!!!!」


滅ぼしたんだ。

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