変異
「………まったく、随分と好き勝手してくれたね?」
馬鹿な…!?我は白髪の少年に止めを刺そうとしていたはず…!!
「ごふっ…!!な、何者だ…?」
このようなこと、あり得るのか…?
「んんん?急にアホになっちゃった?今さっき俺と戦ってたの、忘れたの?」
顔は同じだが…オーラを宿した我の体を易々と素手で貫通させるなど…!!
「あ…あり得ぬ…!ぐ、ぅぅ…」
先程の少年のオーラとは鋭さ、輝き、そして一番の違いは大きさが違う…!!
「同じだよ、残念ながら」
これではまるで…!別人ではないか!!
――――――――――――――――――――――――
「あーあ、いったいなぁ…」
ぐちゅっ…
曝け出され、多量の血に塗れた臓物をもう片方の手で掴むジーニス。
「よいしょっと!!」
ズボッ!!!!
勢いよく内臓を体に戻し、閃光の如きオーラで満たされた手を傷口に翳す。
シュゥゥゥ…
手の中で蒸気を発しながら急速に癒えていく、深い傷。
「これは現実か…?信じられん…!」
「信じるも信じないも、これが現実だよ〜」
ガッ!!!!
「ぶぐっ!?」
ジーニスはイスィーの体に腕を刺したまま風車のように身を回転し、顔面に蹴りを食らわせる。
バギギギィッ!!!!
蹴られた勢いを殺す事すら叶わず、イスィーは背中で木々を倒しながら、山の奥深くへと蹴り飛ばされる。
「おーい、終わりかー?」
蹴り飛ばしたイスィーからの返事はなく、山彦が帰ってくるだけだった。
「えー…もうちょっと遊ぼうよー」
イスィーを探すため、クラウチングスタートの姿勢に移る。
「ふっ!」
ドッ!!ガァァァアアアアアアアア!!!!
ギーラを圧倒した時と同様、空気を蹴るが先とは段違いの気圧の反動を放ちながら追う。
「ど、こ、だー?」
まるで空を飛ぶかのように地面と平行になりながら進むジーニは、キョロキョロと辺りを見回す。
「どこに行っ…」
「【天斬】!!!!」
目の前から急に現れた青い斬撃。
「…あー、そこね」
シュッ…
青い斬撃とは逆に、どこかへと白いオーラごと消えてしまう少年。
「なっ!?消え…」
「こんちわ」
「!?」
バギャッ!!
「ごぼぁっ!?」
背後に現れたジーニスに気付くのが遅く、後頭部を蹴られて体勢を崩すイスィー。
「ぐぅっ!!」
グッ…
頭から血を流しながら、イスィーは蹌踉めきつつもなんとか倒れるのは防いだ。
「き、貴様は何者だ!?我の姿すらも見えなかった少年とは思えぬ!!」
「だから言ってんじゃん、ジーニス本人だって」
イスィーはなんとか答えに辿り着こうとするが、目の前の少年が同一人物だとはどうしても思えなかった。
「…貴様が何者であろうと、我が成すべき事は一つ!!」
カシュッ
刀を鞘に仕舞い、居合いの構えを取るイスィー。
「我は…負けられん…!!負けてはならんのだ!!!!」
ゴォォォオオオオオ!!!!
「はぁぁああああああああ!!!!」
青のオーラを強め、イスィーは限界まで地面スレスレに顔を近づける。
「あー、珍しいちょうちょだ」
「チッ…!!」
虫に興味を奪われるイスィーは、プライドを傷つけられた怒りをオーラに変換する。
「その余裕…!いつまで続くだろうな!?」
顔を上げ、ニヤリと笑うイスィーは勝利を確信していた。
「…まだ面白いこと出来そう?」
構えも何も取らず、ただ突っ立っているジーニスは興味ないと言ったようにボーッとしている。
「フッ…後悔するなよ…???我は唯一神様の柱、その名は伊達ではないわ!!」
チャキッ…
刀を少し抜き、チラリと覗かせた銀色の刃に…
「ふぅぅ…!!」
自身に纏わせた青いオーラを刃に焼き付けていく。
「これが我がスキル、『天』の力…!!」
ズズズ…!!!!
次第に青く染められていく、鋭き刃。
「それさっきの【天斬】ってやつだよね?オーラを纏わせた刃を振って、そのまま飛ばしてただけじゃん」
さらっと技を見極められたイスィーは口の端を少し上げるだけで、何も返事はしない。
「同じ技ならもう終わりに…」
「【神代】!!!!」
ピキィン!!!!
「………なるほど。柱、か」
「ガアッッッ!!!!」
…
音もなく消え、同時にイスィーはジーニスの数m程離れた後ろに現れる。
バッ!!
そして、刀に付いた血を振り払う。
「これはただの居合いではない」
ブシッ!!!!
「今までは素早く移動しながら、オーラを纏わせた刃を貴様に振り抜き、オーラの斬撃を飛ばしていた。だが、これは似て非なるもの。貴様が存在する空間を圧縮し、我は刀を振ったのみ」
「…っ」
ドバァァァ!!!!
自分の右腕を斬られたジーニスは、血が滝のように溢れ出てくる切り口に驚く。
「空間を操る『天』は、飛翔する不可視の刃を生み出すが…」
ボゥッ…!!
「この技は【裂天】という名だ。「天』のオーラともう一つのオーラ、その二つが組み合わさる事で、空間そのものを刃とする」
イスィーの胸に、青いオーラとは違った、銀色の炎のようなものが灯っている。
「これこそが唯一神様から借り受けた、神の力…」
「ぐっ…」
ドサッ
無くなった腕を左手で抑えながら、ジーニスは膝をつく。
「貴様の腕はもう治るまい。空間を切り裂いた時、そこにあったという事実すらも切り裂く」
「なんて…!」
残心しながら、イスィーは洗練された型で振り向き、膝をつくジーニスの後ろ姿を見る。
「貴様を殺すのは惜しい。なぜそのような変貌を遂げたのか、追い求めるべきなのだろう。だが貴様はイマジーネにとって…」
「なんて弱すぎるんだ…!!」
ドリュッ…!!ガシィ!!
「は…?」
ジーニスは失われた腕の切り口に左手を突っ込み、掴む。
「はぁっ!!」
グリュリュリュッ!!!!
左手で掴んだ何かを思い切り引っ張り、赤い鮮血と共に…
「ふぅ…」
新しい腕が生える。
「な…ぁ…!?」
既に人間離れした所業に、またもイスィーの理解は追いつかない。
「はぁ〜…ガッカリだよ…」
溜息を吐きながら、残念そうに首を左右に振るジーニス。
「神の力を借りた…?それがこんなもの?」
ブヂュッ!!
ジーニスは、自身の胸を新しく生えた右手で貫く。
「本当の神の力、特別に見せてあげるよ」




