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「お前もかなり小さかったから、覚えているかわからんけどな?昔、里の作物が猪に荒らされる事件が起きたんだよ」


「そんな事あったっけ?ごめん、覚えてないや」


物心ついた時からしかわからないけれど、里でそんな事件起きた事すら今まで無かったはずだが…


「無理もないさ。まだお前は年端も行かぬただの幼児だった頃の話だからな」


「ふ〜ん…で、その話とこの曲剣をくれた事と何か関係があるの?」


「そうだったな。まず事の発端を話そう。あれはお前が1、2歳の頃の話だったはず…」






――――――――――――――――――――――――






「お父さぁ〜ん。聞いて聞いて!!」


「ん〜?ジーニス、危ないから工房には入っちゃいけない約束だろ?」


生まれたばかりの我が子は聞かん坊で困ったもんだ。ま、それでもやっぱり可愛いんだがな!


「ごめんなさぁい…でもさっき不思議な事が起きたんだよ〜!」


「不思議な事?」


「うん、あのね!ベラキサムくんの家に畑があるでしょ?」


ベラキサム…ジーニスと同年代の、お隣に住む男の子の話かな?


「あるね」


「そこで茶色くて大きいふさふさがモゾモゾって動いてたの!」


「!!!!」


最近里で問題になってる猪の事か!?


「ジーニス!!大丈夫だったのか!?」


「えっと…その…ごめんなさい」


この様子じゃ何かされたに違いない!!確か奴は大人でも酷い怪我を負わせる程に凶暴だったはず…!みたところ目立った怪我は無さそうだけど…


「どこか…怪我をしたのか?」


「ううん、違うの。お怪我はしてないんだけど、そのふさふさに近付いた時にね、ぼくの体から白いもやもやが出てきたの!」


「白い…もやもや?」


なんだ…?茶髪の俺と金髪のクリナから生まれたジーニスの髪が何故か白かった事と関係が…???


「うん。そのもやもやがね!ふさふさに体当たりしたんだ!!」


「なっ…!?」


「そしたらふさふさ、急いで逃げちゃった」


「んー…わかった。話してくれてありがとう、ジーニス」


なでなで


可愛い息子の綺麗な白い髪を撫でてやる。


「えへへ」


この白い髪の色には何かあると思ってはいたが…なんなんだそのもやもやというのは…???






――――――――――――――――――――――――






「という事があったんだよ」


「もやもや???覚えてるような…ないような…?」


俺の体から出てきたって…一体なんだ???


「その時はその得体の知れないもやもやに助けられたとはいえ、未知の力だ。スキルに関連するものだとは思うが…お前に何があるかわからない。だから16歳の成人になるまでお前を里の外に出さず、裏の山にも行かせなかったんだ」


「なるほど…」


いくらその力?があったとしても、子供が山に行って獰猛な獣に襲われたらひとたまりも無いしな…


「だが、お前は今日、スキルを得た。それは成人の意味も込めて一人前になったというわけだ。その得体の知れない幼少期のもやもやも、この機会に何かわかるかも知れない」


「一人前…」


なんだか嬉しくなるな、この響き。


「そう、だから一人前になったお前にこの曲剣を贈る事にしたんだ。一生涯使っても刃こぼれを起こさないほどに強靭に叩き上げたぞ。里の大人達同様に動物を狩る仕事に参加してもいいし、これを持って里の外を出て旅をするのもいい」


「父さん…」


「お前は暴れん坊だからな。この狭い里じゃ色々と不満を持ち、いずれ俺たちの元を去って…ううう…!!」


あー、始まった…ほんと思い込みが激しいんだから…


「父さん!いくらスキルを得たからって、家を出るとは決まってないからね!?」


「そ、そうか…?ぐすっ…」


よしよしとクリナはジーアベルを慰める。


「あなたももう大人になったし、あなたがどこへ行こうと、私達はしっかりと見送る覚悟の表れとして、この剣を贈る事にしたのよ」


「でも今のところ、俺はどこにも行く気は無いよ?」


俺が手伝い始めてから分かったけど、父さんの鍛冶の仕事、一人でやるには辛いからな…手助けしなきゃいけない部分もまだある訳だし、ほっとけないよ。


「この曲剣は大事にするけど、俺には夢もないし…まだ里に居させてよ?」


「いつでも…やりたい事が出来たら…!言っていいんだからな…!!」


俺が大きくなり始めてから、いい大人が常日頃涙と鼻水を垂らしながら感傷に浸るもんだから困ったもんだよ…悪い気はしないけどさ。


「わかったよ。んで予定通り、この後スーマさんの家に行って、スキルの詳細を占って貰うんだよね?」


「あぁ、そうだったな。ざっとスキルの確認は出来たし、里長の家に行くか。白いもやもやもその占いによって何かわかるかも…」


「うん」


さ、俺のスキルはどんな効果なのかスーマさんに聞かなきゃね。






――――――――――――――――――――――――






ドンドンドン


豪華な装飾が施された里一番に大きい家の戸を叩く。


「スーマさーん、起きてますかー???」


「里長はかなりの寝坊助さんだからな…まだ昼前だから寝てるかも知れんぞ?」


って言っても俺たちにも予定はあるからなぁ…


「でもこの後仕事しなきゃでしょ?早いうちにスキルの詳細を占って貰わなきゃ遅れちゃうよ」


ドンドンドン


「ふわぁ〜い…なんだなんだぁ?人がせっかく気持ちよく寝てるというのに、藪から棒に…」


扉の奥から可愛らしい声が聞こえてくる。


ガチャッ…


「おお、君たちか」


可愛らしいパジャマ、そして寝惚け眼のままの顔をヒョイと出すのはこの里、ノイタークの里長であるスーマさんだ。


「おはようございます、スーマさん!」


「あいあい〜おはよう。ああ、そういえば今日はジーニスの誕生日だったね、おめでとさん」


「ありがとうございます!!」


黒髪に紫色の1束のメッシュが入ってて、幼女のような見た目だけど、里の中で一番の年長者、それがスーマさん。でも…


「やっぱり可愛くて年長者には見えないな…」


「んんん?ジーニス、またいつものように失礼な事を考えた訳じゃないだろうね?」


「あ、いえいえ!そんな事なんて今まで一度もないじゃないですか!!ね!?」


「ふーん…?で?用件は〜…あ〜そうか。スキルの詳細ね詳細」


「そうですそうです!!」


ずいっと俺の顔の横から父さんが顔を突き出す。


「ジーニスにスキルが目覚めたんですよ!俺たちには無かったスキルが!!」


同じように母さんも続けてもう片方から顔を揃える。


「私たちからしても、スキルに関する出来事は初めての経験だからウキウキしちゃって!」


「そうかいそうかい。スキルが発現して良かったね、ジーニス」


たゆんっ


スーマさんが首を傾げて俺に笑いかけた拍子に柔らかそうな音がした。


「…ッ!!」


その身体に似つかわしくない豊満な双丘が弾み、揺れる様子に目を奪われる。いわゆる合法ロリ巨乳というやつだ。


「どこを見ている…?」


まるで氷の中に閉じ込められたように体は緊張し、背筋には悪寒が走り、空気が凍りつく。その冷たさを全身、そして視線から放つスーマさんに、俺が気付くのは遅かった。


「…豊かに実ったノイタークの秘宝をボバッブべェ!!?!」


俺はしばらく気を失う事となる。

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