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ジーニス

これは過去に同じタイトルである、「想像してみて?創造を」をリメイクした作品になります。

ゴォオオオオオ…


「なんで…!」


一人の少年の前に、凄惨な光景が立ちはだかる。


「なんで…こんな事に…!!」


家屋には激しい炎が燃え上がり、吐き気を催す血の臭いが辺り一面に広がっている。


「うぷっ…ぐっ…おぇぇぇ…」


少年は自身の生まれ育った故郷を…


滅ぼした。






――――――――――――――――――――――――






ビュオッ!!


「うぉおおおおおおおおお!!!!!」


様々な木々が生い茂る森の中に、興奮に満ちた声。


「これがスキルの力かぁぁぁあああ!!?!」


ビシュシュシュシュッ!!!!


全力で喜びを叫ぶ少年が木々を伝って尋常じゃないスピードで駆け巡る。


「俺は天才だぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」


その少年は、ジーニス・レベリア。


今日、16歳の誕生日を迎えた白髪赤眼のジーニスには一つのスキルが宿った。


「ジーニス!待ってくれ!!」


「うおおおお!!まだ速くなるのか!!さらに試してみるかぁぁぁああああああああ!!!!」


ゴアアアアアアアァァァ…


少年はあまりに興奮しきっているからか、その懇願を聞き逃してしまい、目紛しい速度でどこかへと跳び去ってしまった。


「はぁ…はぁ…」


息を切らすのはジーニスの父親、ジーアベル・レベリア。


「なんてこった…ここまで凄いとはな…」


スキルの力で身体能力を今までの4、5倍ほどに向上させたジーニスに追いつけないでいた。


「いやぁしかし…」


置いていかれたというのに、ジーアベルの表情は歓喜一色。


「ジーニスにスキルが目覚めて本当によかった…!!」


「あなたぁ〜!!ジーニス〜!!」


「お?この声は…」


「お弁当持ってきたわよ〜!」


「クリナ!!」


クリナ・レベリア。ジーニスの母親であり、ジーアベルの妻である。


「ありがとう」


「あと、『コレ』もね!」


「作戦通りだよ、クリナ!!」


「ふふふっ!それよりジーニスは???」


「ああ、信じられない速さでどこかへと行ってしまったよ。あいつもスキルが目覚めて嬉しいんだろうな」


「置いて行かれちゃったの…???」


「そうなんだよ…ううう…」


さほど悲しくも無いが、役得とばかりにジーアベルはクリナに泣き真似をしながら抱きつく。


「あらあらまあまあ…」


クリナもそれが嘘泣きと知っているが、その甘えを受け入れて頭を撫でる。


「ふふふっ!…あっ、でも」


「ん?」


「あなたの足も昔は速かったような気がしたのだけれど…?」


「そうか?ま、俺は今でも『手』は早いけどな!!」


「いや〜んっ」


「何してんだよ、二人とも…」


「「えっ???」


いつの間にか二人の後ろにジーニスが立っていた。


「ジ、ジーニス!?」


「えっと…これはその………それよりも!!スキル!スキルよ!!どうだったの?」


ジーニスはその言葉を聞いた途端に俯き、ぷるぷると震えだす。


「ジーニス…?」


「え…?どうしたの?」


「さ…さ…!!」


「「さ?」」


二人は予想外なジーニスの反応に心配し、俯く一人息子を見つめる。


「最高だよ!!!!こんな力を手に入れるなんて、今まで16年間生きてきて一番に嬉しいって言ってもいいくらいにすごいスキルなんだよ!!」


「へぇ〜…」


「どんなどんな???」


ジーニスの両親はとても興味深そうに彼の話を聞く。


「あのね!体が今までの何倍も軽い感覚なんだ!父さんも見たと思うけど、まるで鳥のようにうんと速く動けるんだよ!!」


「ああ、俺も見た。見たと言っても俺の目じゃ追いきれなかったけどな!ハハハ」


「すごいすごい!」


「でね!もっとすごいのが、俺が天才だって叫んだでしょ?あれを言った瞬間に速さがまた上がったんだよ!!」


「「ほほぉ〜…」」


「昔から自負してたけど、やっぱり俺は天才だな!!」


ふふん、と胸を張り鼻を伸ばすジーニスを見て、両親の二人はその愛らしい姿に思わず笑みを浮かべる。


「ああ、お前にスキルが目覚めるか不安だったが、唯一神様は俺たちに味方してくれたようだ!」


「ほんと、ジーニスにスキルが目覚めなかったらどうしようかと思ってたのよ…」


スキルが存在する世界、その名を『イマジン』。


成人になる16歳の誕生日、スキルが目覚めると言われているが…


「あっ…ごめんね二人とも。ベラベラとスキルの話なんてしちゃって…」


何故かジーアベルとクリナの二人にはスキルが目覚めなかった。


「いいんだよ。ジーニスが幸せなら、俺たちも幸せだ」


「そうよ、何も遠慮することなんて無いんだから!」


二人はそんな事を気にもかけず、息子にスキルが開花したことを心から喜んでいた。


「そっか…ありがとう。…それにしてもさ」


「ん?」


「なぁに?」


弁当の他に、クリナが持ってきた1mはあるかと思われる風呂敷に包まれた大きめの箱に指を差すジーニス。


「それは何なの?」


ジーアベルとクリナは待ってましたと言わんばかりに頬を緩ませる。


「気付いたか、ジーニス…!!」


「ふふふ…これはね…」


結ばれた風呂敷を広げ、包まれていた長い木箱を露わにするクリナ。


「じゃじゃーん!!誕生日プレゼントよ!!」


「えっ!?」


「開けてみろ、ジーニス」


「う、うん。なんだろ…?」


カポッ…


長い木箱の蓋を取る。


「これは…!!まさか!!!!」


「そう!」


「レベリア家直伝の!」


事前にこの日のために練習しまくったポーズでキメる二人。


「「曲剣!!」


ジーアベルは鍛冶師であり、曲剣は彼が開発した軽さと鋭さを兼ね備えた技術の集大成であった。


「嘘だろ…しかもこれ…!」


カチャッ…


鍔はなく、艶のある黒い弧を描く一本の曲剣を持ち上げる。


じぃぃぃぃぃ…


質素ではあるものの、しっかりとした鞘、柄に支えられた曲剣をまじまじと見る。


「ご、ごくり…」


スゥゥゥ…


鞘から曲剣を抜き、白い光を反射する刀身を露わにする。


「これって、相当いいやつじゃないの!?」


その刀身は類稀なる最高峰の輝きを放ち、鋭さをこれでもかと物語っていた。


「フッ…俺が丹精込めて叩き上げた極上の逸品!!1、2年程度じゃ作り上げる事すら敵わない代物だ!!」


「あなたの名前も彫ってあるのよ!」


「ありがとう!嬉しいよ!!」


ジーニスは満面の笑みで応える。


「でも…なんで曲剣を?」


「里や他所に出すような売り物なのにって事か?」


「んーん、違う違う。そうじゃなくて、俺たちの住んでる里って平和そのものだし、曲剣なんているのかな?って思ってさ」


「あーそれはだな。お前が小さい頃の話になるんだが…」


「小さい頃?」


三人は思い出話に花を咲かせ始める。

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