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幕間 宝石の少女『ダイヤ』は語る




宝石の少女、ダイヤ


艶やかなピンクブロンドに、他にはない特別な輝きを持つ銀の瞳、清純系の愛らしい顔にメリハリのある魅力的な身体、まさにヒロインの姿そのものだった。鏡の中の自分を見れば、素晴らしくかわいい女の子が映っている。鏡を見るのが楽しい。街中を歩いて、視線が集まるのも自分がかわいいのだと思えば、興奮すら感じてしまう。


物語の中のヒロインに転生できるなんて、最高すぎる。


しかも、自分の大好きなキャラクターだ。前世では、不幸にも早くに死んでしまった分、今世では幸運に恵まれたのだろうか。そう思えば、全然悪くない。むしろ、いい。すごくいい。


少女は特注の巨大な鏡の前でひとり微笑んだ。


鏡の向こうでは、頬をほのかに紅潮させた少女が幸せそうに笑っていた。フリルとりぼんを大量にあしらったドレスは、選ばれた人間にしか着こなせない。


そう、まさしく私は選ばれた人間なのだ。

自分が好きでも人目を気にして、前の生では着ることができなかった。

だけど、今は違う。こんなにかわいいのだもの、私が着るべきものだわ。


「ふふーん!今度のデートに着て行こうかしら」


デートの相手は、この国の王子様だ。お姫様のような格好をして行っても、逆にちょうど良いかもしれない。いや、でも次のデートは大切なイベントが発生する可能性が高い。実際のゲームのイベントに沿って行動しないで、何か変化があっても嫌だな、やめておこう。鏡の中でしょんぼりした美少女が映っている。うん、こんなにかわいんだもの…何を着ても、このかわいさが霞むことはないだろう。鏡の中の美少女は、満足そうに頷いた。


せっかくの人生だ。楽しまないと損だ。


大手宝石店が傾きかけた時に放った起死回生の一手、

それが『宝石の少女達〜ダイヤは愛によって輝く〜』という乙女ゲームだ。


有名イラストレーターを採用したこのゲームは意外性からか、まあよく売れていた。最初は、傾きかけているのになかなか思い切ったことをするなあ、くらいで買わなかった。しかし、ニュースにたびたび取り上げられている内に、興味を惹かれてしまい気が付けば、購入していた。制作しているゲーム会社自体はマイナーだったが、プレイしてみるとこれまた悪くなく、むしろ面白かった。


そして、何がすごいってゲームの中に宝石商が売っている指輪が出てくるのだ。


まあ、商売としては当たり前のことなんだが、いや本当に、こんなに商売上手なのになぜ傾きかけたのかと思ったくらいだ。発売時期は秋頃だったのも、今思えば狙っていたのかもしれない。


ゲームの期間は3年間、最初の1年目の終わりに親愛度が70%を超えると城下町でのデートイベントが発生する。この時、露天で安いアクセサリーが売られており、流れでアクセサリーを贈ってもらえるのだ。


安物だけど、と贈られるアクセサリー、定番だけど「もしも次に贈る時は…いや、なんでもない」という会話と美麗スチルに心が揺さぶられる。しかもだ、このアクセサリーは全部で30種類ほどあり、スチルのアクセサリーもしっかり選んだものが反映されるのだ。


そして、ゲーム後半、3年目に親愛度が100%以上の状態で尚且つイベントをすべてクリアすると結婚指輪が贈られるのだ。それもまた選べるようになっており、こちらは会話によって組み合わせが変わり、好みの指輪が作られる方式になっていた。


アニメやゲームのグッズでの問題点といえば、普段使いが難しく大人になると身に付けるのが難しくなることだ。もちろん、気にしない人もいるし、その分かりやすさを好む人もいるのだけれど、オシャレなグッズがあると大変ありがたい。しかも、販売しているのは大手の宝石屋さんだ。人に言われても、デザインが良かったから、知らなかったからで通せる。しかもしかも、デザインが選べるのだ。これは嬉しい、種類も豊富、逆に売れない要素もなく、まさに大成功、業績が右肩上がりのうなぎのぼりだった。


そして、もちろん価格帯も配慮されていた。

1回目の露天のアクセサリー、学生でも頑張れば手が届くような金額設定でありながら有名店の宝石というブランド力、サイズ直しサービスもあるため、年齢を重ねても使用できるお得感を全面に押し出し、見事に完売していた。


そして、結婚指輪だが価格帯は社会人を狙っており、お手頃の値段の指輪から高価な指輪まで幅広く展開していた。しかしながら、種類が豊富すぎるために予約での販売のみとされ、期間も限定されていた。私も購入したかったが、ハマるのが遅かったために予約することが出来なかった。期間後も販売はされていたが、種類が限定された販売となっており、自分の欲しい指輪の販売時期が来る前に死んでしまったのだ。


とても残念だったけど、私はこれから生で貰えるもんね!


今は1年目の終わりの時期だ。人生は一度きりだから後悔しないように逆ハーレムエンドを狙うことを決めている。


笑顔が眩しいさわやか系腹黒の王子 シトリン様

真面目で熱血なギャップ萌え騎士 ガーネット様

超絶クーデレな鬼宰相 アウィン様

不思議ちゃん系の癒し後輩 アメシスト様


ある種の宝石の擬人化のようなもので、それぞれのキャラクターの瞳は名前と同じ宝石の色になっている。上から黄・赤・青・紫だ。全てのルートの解放後に攻略できるキャラクターもいたが、攻略するには周回必須の特殊な条件があるので諦めた。人生が2度もあるなんて、そんな美味しい話あるわけないし、今を全力で楽しまないと。


幸い、転生チートといったものがあったようで私にはステータス画面が見える。


しかも、体力・学力・魅力MAXの無双チート付きだ。そうそうバッドエンディングを迎えることはないだろう。



バッドエンディングは、殺されてしまうから気を付けないといけないけど。



「あーぁ、記念ディスク版の世界だったら、もっと良かったのになぁ」


可憐な美少女から溜息がこぼれ落ちた。ちょっと期待したけど、噂に聞くと違うようだし諦めよう。高くは望みすぎちゃいけないものね。そう、狙うなら今ある選択肢の最上のルート、親愛度200%のイベント『僕の大切な宝石』だ。



美しい少女は、愛らしい顔を酷く歪ませて、醜悪な笑みを浮かべていた。





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