おはようございます
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
ショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きる……」
寝ぼけつつも何とか返事をして手をついて起き上がろうとして、ひどい頭痛に呻き声を上げて転がる。
「ううん、お土産にもらったあの梅酒みたいなお酒、美味しかったんだけどなあ……あれも飲みすぎ注意だったか」
目を閉じて転がったままそう呟き、大きく欠伸をした俺はまだ開かない目を擦りつつ何とか起きあがろうとしてもう一回寝返りを打った。
「ああ、このもふもふが幸せなんだよなあ……」
抱き枕役のフランマの尻尾を無意識に撫でつつ、もう一回眠りの海へ落っこちていったのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
ショリショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「ううん、起きる……だから待って……」
いつの間にか交代していた抱き枕役のタロンの滑らかな背中を撫でつつそう呟く。
しばしの沈黙。
「はい、待ったからね〜〜〜!」
嬉々としたお空部隊の声が聞こえて、俺は慌てて起きあがろうとしたけど間に合わなかった。
額と耳たぶ、それから下唇をそれぞれちょこっと摘んで引っ張られる。
「痛い痛い痛い! 起きるって〜!」
悲鳴を上げて転がり落ちる俺。
「ご主人起きた〜〜!」
「し、下唇マジで痛かったんだって」
転がったまま口元を押さえて半泣きになりながらそう抗議する。
「大丈夫よ。ちゃんと怪我しないように考えて噛んでま〜す!」
桃色インコのローザが、転がった俺の胸の上に留まって軽く羽ばたきながらそんな事を言う。
「お前か〜〜! 下唇を噛んだのは〜〜!」
「はあい、それは私で〜す!」
両手でローザのふわふわな頭を捕まえてちょっと強めにおにぎりにしてやる。
「ご主人、大好き!」
嬉しそうにそう言って指を噛んできたけど、これは甘噛みだから全然痛くない。
「起こす時もこれくらいでいいと思うんだけどなあ」
笑いながらそう言うと、いつの間にか俺の額の上に現れたシャムエル様が、またぺしぺしと俺の額を叩いた。
「何言ってるんだよ。ケンがそんな優しいので起きるわけないじゃん。ねえ!」
何故か従魔達が全員揃ってシャムエル様の言葉にうんうんと頷いてる。
「うう、確かにそうだけどさあ」
苦笑いしながら、腹筋だけで起き上がる。
「ご主人、ローザだけずるい!」
軽い羽ばたきの音と共に、他の鳥達が一斉に羽ばたいて俺に飛びかかってきた。
「うわあ、やられた〜〜!」
笑いながらベッドに座り、膝や腕に留まったブランとメイプル、それからプティラも順番に撫でてやる。
ふわふわの、ニニやマックス達の手触りとは全然違う羽毛の手触りを満喫したよ。それから最後に、遠慮がちに近くまできて留まっていたファルコも思いっきり撫でてやったよ。
普段、あまり過度なスキンシップを求めてこないファルコだけど、撫でてやるとすっごく嬉しそうに目を細めて俺に頭を擦り付けてきたので、今度からファルコもおにぎりの刑にしてやろうと密かに思ったよ。
従魔達とのスキンシップを楽しんでから、サクラが出してくれた美味い水を一気飲みして回復した俺は、顔を洗いに行こうとして部屋を見回して今更ながら吹き出したよ。
広い部屋の隅では、ランドルさんが従魔達と一緒にスライムベッドでまだ熟睡中だった。そして、ハスフェルとギイは、ベガとスピカのジャガーコンビとくっついて床で熟睡中だし、オンハルトの爺さんはソファーでこちらも熟睡中。三人の周りにはスライム達が広がって覆い被さるみたいになって、毛布代わりになって寒くないようにしている。へえ、あんな事も出来るんだ。
そしてリナさん一家までが部屋の反対側の隅っこで、やや小さめに集まったスライムベッドの上で、こちらもそれぞれの従魔達に埋もれて揃って熟睡中。
要するに何故か全員、俺の部屋で寝てるんだよ。
「そっか、昨日も飲んでてそのまま撃沈コースか。だけど俺は途中でもう眠いからって言って、自分でベッドに潜り込んだのは覚えてる。で、あいつらはその後も飲んでてこうなったわけか」
ちょっと硬くなってる肩を回しながらそう呟き、とにかく顔を洗いにまずは水場へ向かった。
「ご主人綺麗にするね〜〜!」
いつものごとく、サクラが一瞬で綺麗にしてくれる。
「おう、ありがとうな」
こちらもおにぎりにしてから、水槽に放り込んでやる。
次々に跳ね飛んでくるスライム達も同じく水槽に放り込んでから、お空部隊に場所を譲る。
「おおい、起きろよ。朝飯だぞ〜〜!」
順番に声をかけ、それぞれ呻き声を上げたり顔をしかめたりしながら起き上がったのを見て笑う。
「ほら起きろって、顔洗ってこいよ。俺はもう起きてるもんねえ」
いつもと立場が逆な事にちょっと優越感を感じつつ、一人だけ全く起きる気配の無いアーケル君の背中を突っついた。
「おはようございます。すみません、水場お借りします」
起き上がったリナさんとアルデアさんが先に顔を洗い、ハスフェル達も順番に顔を洗って来た。
「あの、一度部屋に帰って身支度を整えてきます」
恥ずかしそうにリナさんがそう言って、アルデアさんと一緒に一旦部屋に戻った。そうだよな。知らないけど女性には色々と朝の準備があるんだろう……多分。
そこでようやく起きてきたアーケル君が顔を洗いに行き、交代でハスフェル達が従魔達と一緒に戻ってきた。
あいつらのスライム達もプルンプルンになってたから、水浴びさせてもらったみたいだ。
「さてと、何にするかねえ。俺はもう復活してるけど、間違いなくランドルさんとリナさん達はまだ酒が残ってそうだもんなあ」
笑いながらそう呟き、ちょっと考えて大鍋に入れたえび団子粥とたまご粥を取り出してコンロにかける。
「やっぱり飲んだ朝はお粥が良いよな。でもこれもちょっと減ってきたから、一度自分で作ってみてもいいかもな。要するに多めの水で米を炊けば良いわけだよな。中華粥ってどうするんだ? よし、あとで師匠のレシピを調べてみよう」
大鍋をせっせとかき混ぜながら、そう呟く。
温まったところで一旦火を止め、一人だけまだ起きてこないランドルさんを起こしに行ったのだった。




