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今日の予定

「はあ、美味しかった」

 食後のコーヒーを飲みながら、俺はもうすっかり回復した鼻先を撫でて小さく笑った。

 いやあ、万能薬って有難いもんだねえ。

 下手したら鼻骨が折れてるレベルだぞ、あれ。



「ところで、お前らはこの後ってどうするんだ? 一応まだ岩食いへの警戒は続けるんだろう?」

 俺の質問に、ハスフェルとギイが顔を見合わせる。

「まあ、賢者の精霊達があれだけ来てくれれば、正直言って当分は任せていいと思う。何か手がいるようなら向こうから何か言ってくるだろうさ。地下洞窟ではかなりハードな戦い続きだったからな。ちょっとゆっくりさせてもらうよ」

「どの辺りがハードだったのか、絶対聞きたくない気がする」

 肩を竦めて震える振りをすると、何故か目を輝かせた三人が身を乗り出すようにして一斉に俺を見た。

「お前の装備一式が出来上がったら是非また行こう。あれは最高に面白いんだって!」

「いやいや、俺は絶対行かないぞ! お前らが面白いって、そんなの俺は瞬殺される未来しか見えねえよ!」

 必死で顔の前にばつ印を作って首を振る。

「いや、あれだけの装備があれば大丈夫だよ。久し振りだったし、下見を兼ねて行ったんだけど最高に面白かったんだって!」

「聞〜き〜た〜く〜な〜〜〜〜〜い!」

 耳を塞いで机に突っ伏す。

「なんだ、付き合いの悪いやつだな」

 呆れたようなオンハルトの爺さんの呟きに、俺は顔を上げて振り返った。

「いや、命は一つしかないんだから大事に使わないと駄目なんだって。俺はもうちょっと自分の身の丈に応じた相手を求めます!」

「ええ、お前でもあれだけの装備があれば充分相手に出来ると思うけどなあ」

「ちなみに、何が出るのか聞いていい……?」

 すると、ハスフェル達は揃ってニンマリと笑った。

「地下洞窟の下層のとある出現スポットに、ティラノサウルスとスピノサウルスが出る。以前はティラノサウルスだけだったんだけどな。ランダムに時々スピノサウルスが出るようになったんだよ。しかも複数!」

「別の場所では、ギガノトサウルスも出るぞ。あれもかなり大きいからなあ」

「ああ、確かにあれも面白かった」

 揃ってうんうんと頷く三人を見て、もう乾いた笑いしか出ない。

「頼むから無茶言うなって。もうちょっと軽めでお願いするよ。幾ら何でもそれは俺には無理だって!」

「まあ、まだ装備一式が出来上がるまでにはかなりかかるだろうからなあ。それまでにもう少し鍛えてやるとするか」

 ニンマリと笑う三人を見て、逃げ出そうとして速攻捕まった俺だったよ。

「三人とも反応早すぎ! 分かった、逃げないってば!」

「よし、じゃあ装備が出来上がったら一度行ってみようぜ!」

 結局三人がかりで押さえ込まれてしまい、情けない悲鳴を上げて降参したのだった。

 ああ、俺の死亡フラグが見える気がするんだけど……気のせいだって誰か言ってくれ〜〜〜!



「それで、お前はどうするんだ? もう料理は終わったのか?」

 ようやく解放されて、なんとか復活した俺が二杯目のコーヒーを飲んでいると、同じくおかわりのコーヒーを飲んでいたハスフェルが振り返ってそう尋ねた。

「おう、一応かなり作り置きも出来たし、あと作ろうと思ってたのは栗のお菓子くらいかな。それでその前に一度、注文している武器や防具の進行具合を聞いてみようかと思ってたんだけど、そう言うのってこっちから聞いて良いもんなのか?」

 依頼主ではあるけど、素材を渡して預かり票をもらっただけでまだ代金は一切払っていないし、どれくらいで出来上がるものなのかもさっぱ分からない。

 ここは詳しそうな人に聞くのが一番だよな。

「ああ、そうか。お前は武器の注文をするのは初めてだったな。ドワーフギルドのギルドマスターのエーベルバッハに聞けば、少なくとも進捗は分かると思うぞ。まあ、時期的にそろそろ錬成が終わって製作に入ってる頃じゃないか?」

「ああ、そうだな。どれくらいの練度になったのか、一度聞いておいた方が良いかもな」

「確かに。あまり低いようなら、もう一度錬成からやり直してもらっても良いかもしれないからな」

 顔を見合わせたハスフェルとギイの言葉に、俺はふとある事を思い出してオンハルトの爺さんを振り返った。

 確か飛び地で素材を色々手に入れた時に、素材に祝福をくれるとかって言ってなかったっけ。錬成の時に最高値が出るようにとか何とか……。

 振り返ってオンハルトの爺さんと目が合うと、当然とばかりにドヤ顔でサムズアップされた。

 やっぱり。多分良い感じに仕上がるようにしてくれてたんだ。

 笑った俺は思わず手を合わせて拝んだけど、この対応で間違ってないよな?

「じゃあドワーフギルドへ顔を出すか。興味があるから俺達もご一緒させてもらうよ」

 コーヒーを飲み干したハスフェルの言葉に、俺も残りのコーヒーを飲み干して立ち上がったのだった。

「じゃあ、久し振りに街の中だけどマックスに乗って行くとするか」

 すぐ後ろで控えておすわりしていたマックスが得意げにワンと吠える。

「おう、よろしくな」

 大きな首元に抱きついてむくむくを堪能してから、俺達は揃って宿泊所を後にしたのだった。

 当然、従魔達は全員ついて来てるよ。




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