表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
978/2066

大騒ぎのいつもの光景

 ぺしぺしぺし……。

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 ふみふみふみ……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

 チクチクチク……。

 こしょこしょこしょ……。

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

「うう……起き、る……」

 久し振りのもふもふのニニの腹毛に顔を埋めながら、俺は半ば無意識でそう返事をした。



「起きないねえ」

「相変わらずですねえ」

「あれだけ飲めば、そりゃあ起きるのは無理なのでは?」

 シャムエル様とフランマの声が聞こえた後、面白がるようなベリーの声が聞こえて納得した。

 そっか、記憶にないけど飲み過ぎてそのまま撃沈したのか。

 ううん、またやっちゃったよ。だけどあの赤ワイン美味しかったんだもんなあ……。

 ダラダラと頭の中で言い訳を考えつつ。俺は二度寝の海へ気持ち良く落っこちて行ったのだった。



 ぺしぺしぺしぺし……。

 ぺしぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみふみ……。

 ふみふみふみふみ……。

 ふみふみふみふみ……。

 カリカリカリカリ……。

 カリカリカリカリ……。

 つんつんつんつん……。

 チクチクチクチク……。

 こしょこしょこしょこしょ……。

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

 ふんふんふんふん!

「うん……起きてる、起きてるよ……」

 胸元のタロンに抱きつきながら、何とか答えて内心で慌てる。

 今朝のモーニングコールはソレイユとフォールのやすりコンビじゃんか。

 まずいまずい。今すぐ起きろ俺!

 しかし、相変わらず寝汚い俺の体は、やっぱり起きてくれない。

 不意に視界が暗くなって大いに焦った。

 これってもしかして、あいつら巨大化してるんじゃね?

 何とか起きようと俺がパニックになっていると、いきなり来たよ!



 ザリザリザリ!

 ジョリジョリジョリ!



「ひょえ〜〜〜〜〜!」

 情けない悲鳴を上げて転がって逃げる俺。抱きしめていたタロンが、慌てたように俺の腕の中からすっ飛んで逃げて行った。

「起きた起きた! だからもうやめてくれって〜〜〜!」

 巨大化した二匹に飛びかかられて、逃げようとしたけど当然無理で、俺は巨大化したソレイユとフォールにがっつりホールドされてしまった。

 まあ、普通なら一巻の終わりって場面だけど俺は大丈夫。だけど違う意味で色々危険だ。

「ご主人起こすの久し振り〜〜〜!」

「頑張って起こしたんだもんね〜〜〜〜!」

「やっぱり私達が最強よね〜〜〜〜〜!」

「ね〜〜〜〜〜〜!」

 俺を捕まえた二匹が、ご機嫌でそう言いながらぐりぐりと大きな頭を押し付けてくる。

「分かった。分かったからちょと待てって! だから、舐めるんじゃねえよ!」

 当然、押さえ込まれた状態でむき出しになった背中を思いっきり舐められる。

 ジョリ〜〜ン!

「や〜め〜て〜く〜れ〜〜〜!」

 大きな頭を押し返しながら、必死になって抵抗する。と言っても笑いながらだから誰も助けようともしない。

 それどころか、他の猫族軍団達まで巨大化して飛びかかってきた。

「どわあ。だからやめてくれって!」

 上半身はもうすっかり服が脱げて、さらに半ケツ状態になってるけど、ズボンを引っ張りながら必死になって転がって逃げたよ。



 ガツン!



 しかし、いきなり目の前に火花が散って鼻に激痛が走る。

「痛って〜〜〜!」

 鼻を押さえて悶絶する俺。

 その時誰かが吹き出す音がして俺は慌てた。

「だ、誰だ!」

 飛び起きて身構えようとしたけど立ち上がれずにそのまま仰向けにすっ転がってしまい、いつもよりも遠い天井を見上げる。

「ええと、今、何が起こったんだ?」

 まだズキズキと痛む鼻を押さえながらそう呟くと、ハスフェル達が揃って吹き出す音が聞こえた。

「ああそっか、昨夜飲んだまま皆揃って寝落ちしたのか。それで俺は床で寝てたわけだな」

 横を向くと、多分さっき俺がぶつけた机の足が目に入ってそう呟き大きなため息を吐いた。

「ご主人、起きてください!」

 カリディアが、まだ鼻を押さえて転がってる俺のところにやってきて、シャムエル様並のもふもふしっぽでそっと俺の手の甲を叩いた。

「おう、起きるよ。喉乾いた」

 若干頭が痛いけど、いつもほどひどくないのはワインしか飲んでいないからかな? まあこれくらいの軽い二日酔いなら、美味しい水を飲めばなんとかなるから大丈夫だ。

 甘えて来る従魔達に揉みくちゃにされつつ、なんとか起き上がって床に座る。

 そして鼻を押さえていた手を離したら、ぽたっと赤いのがシワの寄ったズボンに落ちる。直後にボタボタっと大粒の血の塊がいくつも落ちてきた。

「うああ! 鼻血〜〜!」

 赤くなった手を見て叫ぶ俺の声と、また吹き出す三人の音が聞こえて、部屋は大爆笑になったのだった。



「うう、貴重な万能薬をこんな事で使うなんて申し訳ない」

 鼻にぶっかけられた万能薬のおかげであっという間に鼻血は止まり、今はアクアとサクラが汚れた俺の顔と右手とズボンを綺麗にしてくれたところだ。

「全くお前は、本当に見ていて退屈せん奴だな」

 さっきからずっと笑ってるハスフェルにそんな事を言われて、俺は思いっきり顔をしかめて見せた。

「別にわざとやってるわけじゃない!」

「分かった分かった」

 完全に面白がってる三人を見て、俺も笑いながらすっかり綺麗になったズボンを見た。

「ありがとうな。すっかり綺麗になったよ」

 ついでに顔や体も一緒に綺麗にしてくれたので、サクラが出してくれた美味しい水を一気飲みして無理矢理回復した俺は、なんとか立ち上がって大きく伸びをした。

「さて、それじゃあお待たせの朝飯にしよう。作り置きを適当に出すから好きに取ってくれよな」

 足元に転がってたサクラを抱き上げて机に乗せ、作り置きのサンドイッチやコーヒーを取り出してもらう。

「はあ、従魔達が皆一緒だと賑やかで楽しいから良いんだけど、さすがに鼻血は勘弁してくれって」

 苦笑いしながらそう呟くと、またしても三人に大笑いされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! もふむくテロ&飯テロ、楽しみです(笑) [気になる点] 「ソレイユとフォールのやすりコンビ」が最終モーニングコールなら、 お空部隊の『こしょこしょこしょ』では…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ