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昼寝とおかえり

「おはようございます」

 商人ギルドに到着した俺は、丁度ギルドマスターのヴァイトンさんがカウンターの奥にいるのを見て声を掛けた。

「おや、おはようございます。こんな朝早くから、何かありましたか?」

 書類の束を手にしたヴァイトンさんが、俺の顔を見て慌てたように立ち上がる。

「お忙しいところを申し訳ありません。ああ、すぐ帰りますのでお構いなく。ええと、例のご紹介頂いた家の件なんです。ハスフェル達も帰ってくるみたいなんで、今日の午後から見学したいんですが大丈夫でしょうか?」

「もちろん構いませんよ。では準備しておきます」

 カウンターから出て来かけたヴァイトンさんは、俺の言葉に笑顔になり大きく頷く。

「それじゃあ、食事をしてからハスフェル達と一緒にまた来ます」

 朝イチが混み合うのはどこも同じのようで、商人ギルドは大勢の人達であふれていて、カウンターには大勢の人が並んでいた。見るとヴァイトンさんの座っていた机の上にも、束になった書類が積み上がっている。

「それをお願いに来ただけなんで、それじゃあお忙しいところをお邪魔しました。失礼します」

 苦笑いしてそう言い、見送ってくれるスタッフさん達に手を振って早々に商人ギルドを後にした。



「じゃあ、午後からの予定は決定だな。後はのんびり帰りながら途中に何かあれば買い物すればいいな。さてあいつらが帰って来るまで何するかねえ」

 ゆっくり進むムービングログの上から、ようやく少し見慣れてきた街並みを眺めつつ、いつもとは違う道を進んでみた。そこで見つけた八百屋で色々買い込み、牧場直営の屋台で出来立てフレッシュチーズも見つけてお買い上げ。他にもちょくちょく良さそうなものを見つけては、大量買いしながら宿泊所へ戻って行った。



「さて、ハスフェル達が戻ってきたらまた出かけるから、もう防具はこのままでいいか」

 部屋に戻って、剣帯だけは外して収納しておきソファーに座る。

 なんとなく手元が寂しくて、何度か空を掴んだ後に床で寛ぐラパンとコニーを見た。

「ちょっと抱きつけるくらい大きくなってくれるか」

「いいですよ。はいどうぞ!」

 二匹が得意げにそう言って、一気に大きくなって俺の所へ跳ね飛んでくる。

「うわあ、もふもふ攻撃〜〜!」

 飛び込んで来たラパンとコニーを両手を広げて受け止め、そのまま抱きつく。

「ううん、ふわふわだよ。はあ〜〜癒される〜〜〜」

 大きく深呼吸をして、柔らかな毛に顔を埋めて目を閉じた。

「ああ、駄目だ……睡魔が……」

 ふわふわな柔らかさに包まれて、俺はそのまま気持ちよく眠りの海へ転がり落ちたのだった。



 ぺしぺしぺし……。

 つんつんつん……。

 カリカリカリ……。

「うん、起きる……」

 半ば無意識に返事をすると、耳元で呆れたようなため息が聞こえた。

「本当に熟睡してるねえ。これ、どうやったら起きると思う?」

「まあ、いいじゃありませんか、たまにはこんな日があっても。平和が何よりです」

 ベリーの声に、俺はなんとか目を開く。

「あれ?」

 一瞬自分がいる場所が分からなくて、いつもと違う天井の向きを見て考えた。

「ああそっか。ソファーで寝落ちしたのか」

「ご主人起きた〜〜!」

 ラパンとコニーの笑った声が聞こえて、俺は二匹の上にもたれかかっていた体を起こした。

「ごめんごめん。重くなかったか?」

 ニニと違って、ラパンやコニーは体自体がとても柔らかい。

「全然大丈夫で〜〜す!」

「ご主人一人くらい、何でもないですよ!」

 揃ってドヤ顔になる二匹を交互にもみくちゃにしてやった。



『おおい、起きたか?』

 その時、笑ったハスフェルの念話が聞こえて慌てて二匹から手を離す。

『おう、起きてるよ。今どこだ?』

『扉の前でさっきから待ってる』

『腹が減ってるんだけど、いい加減開けてくれないかなあ』

 その言葉と同時に扉がノックされて、俺は堪えきれずに吹き出した。

「ご、ごめんよ。アクア、扉開けてやってくれるか」

 ちょうど扉近くに転がっていたアクアにお願いして開けてもらうと、苦笑いした三人が部屋に入ってきた。



「全く、いくら呼んでも全くの無反応だったから、何かあったのかと思って本気で心配したのになあ」

「本当になあ」

「あれだけ呼んでも起きないとは、逆に感心するなあ」

「あはは、全然気付かなかったよ。だって、このもふもふに挟まって寝てたんだぞ。起きれるかよって!」

 開き直って、ラパンとコニーを抱き上げて三人の顔に擦り付けてやる。

「おお、これはまた……うん、まあこれなら仕方ないな」

 ハスフェルの言葉にギイとオンハルトの爺さんも笑って頷いている。

「やっぱりもふもふは正義だよなあ」



「ごしゅじ〜〜〜〜〜ん!」

「ご主人、会いたかった〜〜〜!」



 二匹を笑いながら撫でていると、いきなりそう叫んだマックスとニニが突撃してきた。それに続いて他の従魔達も、なぜだか全員が巨大化して俺の所へ飛び込んできた。

「待て待て〜〜〜ぶふう〜〜ちょっ、待て、マックス! 待て! ステイ、ステイ!」

 ソファーに押し倒され、勢い余ってそのまま床に転がってものすごい勢いで舐め回される。何とか必死で両手を振り回しながら俺は必死になってそう叫んだ。

 慌てたようにマックスが離れてお座りしたのだが、残念ながらマックス以外の子達にはステイは効かない。

 結局巨大化した猫族軍団プラスアルファに団体で押し倒されてしまい、またしても情けない悲鳴をあげる事になったのだった。

 ようやく解放された頃には、色々とボロボロになっていた俺だったよ。

 従魔達の愛情が重い。重すぎるぞ!

 まあ、久し振りだから気持ちは分かるけどな。うん、愛されてるんだと思っておこう。

 そんな事を考えつつ、久し振りのマックスとニニの大きな頭に順番に抱きつき、それから大きなままの他の子達ともゆっくりじっくり揉んだり撫でたり抱きついたりして、久し振りのスキンシップを満喫したのだった。

 満足したところで手を離し、ハスフェル達にはお待たせの昼食用に、作り置きを色々と出してやった。

 俺は、自分用に一つだけ残してあった定番弁当やや野菜多めのを取り出して、ガッツリ食べたのだった。



 ああ、自分で作って言うのも何だけどやっっぱり美味しい。

 そして思った。やっぱりこれは、タコさんウインナーだよな。

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