朝食と今日の予定
ぺしぺしぺし……。
つんつんつん……。
カリカリカリ……。
「ううん、起きるって……」
今朝も少ないモーニングコールに起こされた俺だったけど、どうにも目が覚めない。
寝ぼけて抱き枕役のアヴィを探して手を伸ばしたところで、誰かに腕を叩かれて文字通り飛び起きた。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした」
「おはようご主人!」
「おはようございます」
そこにいたのは、笑顔のベリーと、いつもの大きさに戻ったフランマとカリディアだった。
「ああ、びっくりした。おはよう。もう帰ってたんだな」
誤魔化すように笑いながら、小さくなったアヴィを捕まえておにぎりにする。
「何、もう次の弁当か?」
アヴィを解放して、笑いながらベリーに向かってそう言い何とかラパンとコニーの間から起き上がる。
「ああ、しかしこの柔らかな毛もニニの腹毛に匹敵するくらいに離れがたいぞ……」
起きようと手をついたところで、柔らかなラパンの毛に絡め取られて撃沈する。
「もう。起きなさいって言ってるでしょうが〜〜!」
最後にシャムエル様のちっこい手で引っ叩かれた俺は、泣く泣くもふもふパラダイスを後にしたのだった。
水場で顔を洗い、サクラに綺麗にしてもらう。
「ハスフェル達が、間も無く戻ってきますよ。別荘を見に行くんでしょう?」
にっこり笑ったベリーの言葉に、身支度をしていた手を止める。
「おお、もう地下洞窟は一旦撤収か」
「そうですね。鉱山の件もありますし、仲間達が引き続き監視してくれるそうですよ」
「そっか、それなら安心だな。じゃあもう出かけるのはやめて適当に飯にするか」
買い置きはかなりあるし、作り置きも色々出来てる。まあ、一度こっちも小休止してもいいよな。
「じゃあ、ハスフェル達が戻ってきたら、見学希望の連絡をしないとな」
サクラに朝食用のサンドイッチとコーヒーを取り出してもらいながら、まだ見ぬ別荘がどんな風なのか考えて楽しみにしていた。
「ええと、どれにするかな」
勢いで作ったサンドイッチが大量にあるので、どれにしようか考えていると、大きなお皿を持ったシャムエル様が目の前に現れてステップを踏み始めた。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」
当然のようにカリディアがすっ飛んできて、同じくお皿を手にしてシャムエル様のステップを見事なまでにコピーして見せる。
「おお、ブラボーブラボー!」
思わず拍手をしながらそう言うと、見事な足捌きは止める事なく、カリディアは分かりやすくドヤ顔になった。そして何故かシャムエル様もドヤ顔になってるし。
「はいはい、それでシャムエル様はタマゴサンドだな」
自分用とシャムエル様用にタマゴサンドを取り、少し考えて自分用にカツサンドも取っておく。それからシャムエル様には厚焼きタマゴサンドとスライスタマゴサンドも取り盛り合わせてやった。
「ふおお〜〜〜またしてもタマゴサンド三種盛り! いいねえいいねえ!」
喜びの高速ステップを踏みつつお皿を受け取ったシャムエル様はご機嫌だ。
「ほら、コーヒーは?」
「ここにお願いします!」
一瞬でいつもの蕎麦ちょこが出てきたので、そこに一旦俺のマグカップに入れたコーヒーを入れてやる。
「ふおお〜〜〜タマゴサンド最高〜〜!」
タマゴサンド三種盛りに興奮した尻尾を時々突っついてやりつつ、俺ものんびりコーヒーを飲みながらサンドイッチを平らげたのだった。
『おおい、もう起きてるか〜〜?』
食事を終えて、二杯目のコーヒーをソファーに座って楽しんでいたところで、ハスフェル達からの念話が届いた。
『おう、おはよう。今朝飯を食い終わってのんびり寛いでるところだよ。さすがに疲れたから、今日は休憩にしようかと思ってさ』
いつものトークルーム全開状態でそう言うと、ハスフェルだけでなくギイとオンハルトの爺さんまでが笑って頷く気配がする。
『いいんじゃないか? 昼前くらいにそっちへ着く予定だから、食事をしてからそのまま別荘見学に行こう。悪いが商人ギルドに見学の申し込みだけしておいてくれるか』
『ああ、了解。じゃあ連絡しておくよ』
『悪いな。じゃあ俺たちが戻るまでゆっくり休んでてくれていいぞ』
笑ったハスフェルの言葉に俺も笑って頷き、三人の気配が消えてから残っていた少し冷めたコーヒーを一息に飲み干した。
「ええと、電話なんて便利なものは無いから。じゃあ商人ギルドまでちょっと行ってくるか」
立ち上がって大きく伸びをしながらそう呟き、外していた剣帯を締めてそのまま商人ギルドまで行く事にした。
「じゃあ商人ギルドまで行ってくるけど、お前らはどうする?」
もういつもの大きさに戻ってるウサギコンビは一緒にくるみたいだし、アヴィとエリーはもう既に定位置に収まってる。聞けばベリー達も、こっそり後をつけてくるみたいだ。
って事で、外に出たところでまたいつものムービングログを取り出して、全員揃って飛び乗って商人ギルドへ向かうのだった。
「お風呂があるといいな。もし無くても絶対俺の部屋にはお風呂はつけるぞ。ああ、ハスフェル達も気に入ってたから、大浴場みたいな広いお風呂場を作ってもらっても良いかもな。どうせ冬中いるんだし、早いところ改装工事にかかってもらわないと」
そもそもまだ契約どころか物件の確認もしていないのに、もうすっかり別荘を買った気になっている俺だった。