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鉱夫飯とおやすみ

「ううん、デザートも美味しかった〜〜!」

 頬をぷっくらさせたシャムエル様は、山ほどあった鉱夫飯のデザートを綺麗さっぱり平らげてご満悦だ。

 今は机の上に座ってご機嫌で身繕いの真っ最中。

「本当にあれだけ食ったのはどこへ行ったんだよ。見てて怖いぞ」

 笑いながらこっそり尻尾を突っついてやると、慌てたように尻尾を取り返してまた身繕いを始めた。

「この弁当箱は、また作って置いておくのにも使えるな。よし、これも綺麗にして収納しておくか」

 スライム達に使ったお皿を綺麗にしてもらっていると、頭の中にハスフェルの声が聞こえた。



『おおい、今話しても大丈夫か?』

『おう、大丈夫だよ。今夕食を食い終わったところだよ』

 トークルーム全開で話しかけてきたのが分かったので、笑って俺も念話で応える。

『ありがとうな。ベリーが届けてくれた弁当美味しかったよ。ご馳走さん』

『彩も華やかで美味しかった』

『確かに美味しかった。あの花みたいなウインナーが可愛かったよな』

『ああ、確かにあれは可愛かった』

『蓋を開けて大笑いしたものなあ』

 笑ったハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも揃ってあれは可愛かったと大喜びしている。

 ううん、あれがタコだって認識はさすがに無かったか。だけど言われてみれば、上下をひっくり返せば花っぽくなるな。じゃあ、この世界でのあれは花だって事にしておくか。

 しかし俺が言うのもなんだけど、やっぱりあいつら小学男子だ。予想通りに弁当が大受けしたのに気を良くしていると、軽く咳払いをしたハスフェルがいきなり真剣な声に変わって慌てて背筋を伸ばした。

『ところで、ベリーから聞いた今日の鉱山での一件だがな』

 若干遠い目になりつつ、苦笑いして頷く。

『いやあ、俺もまさかあんな事になるなんて夢にも思っていなかったから。割と本気でびっくりしたよ』

『その言葉は、そっくりそのままそっちへ返すよ。まったく、俺達が必死になって地下迷宮の中を駆けずり回ってるってのに、思いつきで参加した見学会でいきなり岩食いと遭遇してんじゃねえよ』

『しかもベリーに聞いたら、今まで見つかった中で最大級だったらしいじゃないか』

「ええ、そうなのか?」

 思わず声に出してしまい、慌てて念話で言い直す。

『いやいや、そんなの知らないって。俺は他の人達と一緒に陽動作戦の花火を見てただけなんだから、実際岩食いの姿は見てないって』

 しかし俺の必死の否定に、何故か三人とも大笑いしてるし。

『だけど、ケンタウルスの長老に挨拶されたそうじゃないか』

『いやあ、俺も久しくお会いしてないがお元気そうで何よりだよ』

『地脈が弱っていた時にはかなり弱って小さくなったと聞いていたから心配していたが、もうすっかり回復されたようだな』

 ハスフェルとギイが、何やら楽しそうに話している内容を聞いて気が遠くなったけど俺は悪くないよな。

 もしかして、あの超マッチョなばんえい馬レベルの巨大ケンタウルスって……あれってケンタウルスの長老様だったのかよ!

「まあ確かに、たいそうな挨拶されたけどさあ……ん? 小さくなったって、もしかして初めて会った時にベリーが小さくなってた、アレ?」

 思わずシャムエル様に聞いてたよ。

「そうだよ、ベリーが体が大きかったから自ら郷から出たみたいに、長老はわずかなマナすら取り入れる事を拒んで、瞑想の洞窟でひたすら籠っていたんだ。身食いを続けて、もうちょっとで消滅するギリギリのところまで行ったんだって聞いたよ。だけど、あの様子を見るともうすっかり回復したみたいだね。いやあ良かった良かった」

 パチパチと手を叩くシャムエル様の言葉に、あの超マッチョな長老が小さくなったらどんな子供になってたんだろう。なんて、若干失礼な事を考えていたのだった。



『ところでもう一つ!』

 もう話は終わったと思ってたから、急に聞こえた念話の声に驚いて立ち上がりかけていたのに慌てて座る。

『おう、どうした。まだ何かあるのか?』

 一応話を聞く体勢になってそう言うと、三人が同時に叫んだ。



『次は是非、あの鉱夫飯を届けてくれ〜!』



 それを聞くなり思いっきり吹き出してしまい、揃って大爆笑になったよ。

「わ、分かった。じゃあ、次に、ベリーが来た、ら、六個全部、届けて、もらうよ」

 笑いが止まらず、声に出して返事してたけど、ハスフェル達には通じてたみたいだ。

『おう、よろしく頼むよ!』

 嬉々としたハスフェルの言葉にもう一度笑い合い、そこで今度こそトークルームはお開きになった。

「あいつらだったら、絶対これも一回で食い切るぞ。ってことは鉱山でも働けるのか。すげえな」

 ようやく笑いが収まり、小さくそう呟いてまた笑う。

「だめだ、お腹痛い」

 笑いながら、巨大化してベッドで寛いでるラパンとコニーに飛びついてもふもふの体に顔を埋める。

「ああ、癒されるこのもふもふ〜〜」

 そのまま寝そうになったけど、防具を身につけたままだったのを思い出してなんとか起き上がる。

 ベッドに座って手早く装備を外し、靴と靴下も脱いでからサクラに綺麗にしてもらった。



「よし、これで寝る準備完了だ。では、今夜もよろしくお願いしま〜す!」

 そう言って待ち構えていた巨大ラパンとコニーの隙間に潜り込み、もふもふサンドされた状態になる。そして巨大化したアヴィが俺の胸元に潜り込んできたので、抱きしめてもふもふな尻尾を堪能させてもらった。これも良き尻尾だよ。

 スライム達が部屋の明かりを消してくれたので、あっという間に部屋が真っ暗になる。

「ふああ、何だか今日は疲れたよ……それじゃあおやすみ……」

 普段とは違う、柔らかなもふもふに埋もれて、俺は気持ちよく眠りの国へ旅立って行ったのだった。

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