ごちそうさまでした〜〜!
「食、べ、たい! 食、べ、たい! アレンジ料理を食べたいよ!」
机の上では、シャムエル様がお皿を振り回しながら新作ダンスを踊っている。
前後左右に、目にも留まらぬ足捌きでステップを踏みつつお皿を振り回して踊り、最後は一回転してキメのポーズだ。
「おお〜〜〜新作ダンス、お見事!」
笑って拍手してやると、ドヤ顔になるシャムエル様。
そのお腹もなかなか触り心地が良さそうだ。
「はいはい、だけどシルヴァ達にお供えするから、もうちょっとだけ待ってくれよな」
ものすごい勢いで再びステップを踏み始めたシャムエル様に断ってから、スライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇に作った料理を並べる。ついでに冷えたビールも一本取りだしてグラスと一緒に並べた。それから、少し考えて土産に買ってきた新しい鉱夫弁当も一つ取り出して蓋を開けて一緒に並べた。
「今日は、バイゼンの鉱山見学に行って来ました。ケンタウルス達が、大活躍してくれたよ。これは残り物で申し訳ないんだけど、アレンジして作り直した俺の夕食分と、お土産の鉱夫弁当です。少しだけど、どうぞ」
手を合わせて今日の報告をする。
いつもの収めの手が優しく俺の頭を何度も撫でてくれ、それから料理を順番に撫でていき、最後に鉱夫弁当を丸ごと持ち上げて消えていった。
「気に入ってくれたみたいだな」
鉱夫弁当を開けて大喜びするシルヴァ達の様子を思い描いて、吹き出しそうになるのを必死に堪えた俺だったよ。
「お待たせ。じゃあ一通り入れるぞ」
新しい鉱夫弁当は蓋をして収納しておき、料理の皿を机に持って戻る。
俺にお皿を渡した後もご機嫌でステップを踏んでいるシャムエル様を横目に見て、俺は作ったおにぎり各種を半分取ってお皿に並べ、あんかけ唐揚げも半分取って盛り合わせてやった。
「目玉焼きも半分こな」
そう言って、ナイフでウインナーと黄身をちょうど半分ずつになるように切り分ける。ううん、白身がちょっと不公平になったが、まあいいだろう。
当然大きい方をシャムエル様のお皿に乗せようとしたがもう空きが無い。
「もう、ここで良いよな」
そう呟いて、バター醤油焼きおにぎりの上にソーセージ目玉焼きを乗せてやった。
「はいどうぞ。ええと、ビールは……はいはい、当然飲むよな」
俺が冷えたビール瓶を手にした瞬間、即座にシャムエル様はいつものグラスを取り出した。
「はい、これにお願いします!」
少しも休まずステップを踏みながら俺にグラスを突き出す。
「ちょっと落ち着けって」
笑ってビール瓶の栓を開けてゆっくりグラスに注いでやる。
「はいどうぞ、冷えたビールだよ」
自分のグラスに残りを注ぎ、一応もう一本だけ出しておく。
「では、いただきます!」
改めて手を合わせてから、まずは冷えたビールをぐいっと一杯。
「かあ〜〜冷えたビール、うめえ!」
おっさんみたいなため息が出たけど気にしない。
そしてシャムエル様は、半分に切った目玉焼きにやっぱり顔から突っ込んでいった。
「ふおお〜〜〜これはまた美味しい。お昼と全然違う! アレンジ料理最高〜〜〜!」
あっという間に目玉焼きを平らげ、今は肉巻きおにぎりを振り回しながら両手で抱えて齧り付いて叫んでいる。
「ほら、大事な毛皮がベトベトになってるぞ。良いのかよ」
なぜか後頭部にこびりついた肉巻きおにぎりのタレを拭ってやり、自分のおにぎりを食べながら俺は、いつもの三倍サイズに膨れたシャムエル様の尻尾を伸ばした左手でこっそり堪能したのだった。
「ふう、ご馳走様。いやあ、アレンジ料理って最高だね」
俺より早く完食したシャムエル様は、ご機嫌でそう言いながら今は身繕いの真っ最中だ。
ああなってはもう尻尾は触らせてくれない。
諦めて俺も自分の分を食べ終えて、残っていた二本目のビールの最後の一口を飲み干したのだった。
「それで、デザートは?」
顔と体はすっかり綺麗になったシャムエル様が、せっせと尻尾のお手入れをしつつ当然のようにそう尋ねる。
「ええ、あれだけ食ってまだ食べるのか?」
「ええ、食べないの?」
ガーン! って擬音が頭上にありそうなくらいにショックな顔をされてしまい、苦笑いした俺は残っていた今日の鉱夫飯のデザートの入った弁当箱を取り出したのだった。
さすがにこの量のデザートを食後に半分食べるのは無理があったので、俺は一通り少しずつ貰っただけで残りはシャムエル様に進呈したら、かけらも残さず、綺麗に平らげてくれました。
どんだけ食うんだよ。
割と本気でシャムエル様の腹の中がどうなってるのか、気になる俺だったよ。