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すじ肉の下拵えと爆弾発言

「はあ、美味かった!」

 焼きそばサンドの最後の一口を飲み込んだ俺は、気分を切り替えるように大きめの声でそう呟いて残った牛乳を一気に飲み干した。

「さて、あとは何を作るかなあ」

 お皿とカップをサクラに綺麗にしてもらった俺は、大きく伸びをして立ち上がった。

「あ、そうだ。クーヘンの義姉さんのネルケさんからポトフのレシピを貰ってたな。あれを作ってみよう。時間をかけた煮込み料理はこういう時じゃ無いと出来ないもんな。そっか、じゃあ以前作って好評だった牛肉の赤ワイン煮も作っておくか。あれは美味しかったもんな。あとは何を作るかねえ」

 いざとなったら師匠のレシピから何か適当に煮込み料理を見つけて作っても良いんだけど、何となくそんな気になれなくて腕を組んで考える。

「これは絶対、母さんのレシピを思い出したせいだな」

 小さく苦笑いした俺は、ふと思いついて手を打った。

「あ、良いの思いついた。これなら材料は全部あるな。よし、じゃあ順番に作るとするか」



 作るメニューが決まったから、あとは順番に作っていくだけだよ。



「ええと、じゃがいもと玉ねぎ、それからニンジン、キャベツ、あとはニンニクとコンソメスープなんてないから、干し肉からとった茹で汁を使うか」

 元々この世界へ来た時に持っていた干し肉は、もう今となっては食べない材料の代表だ。

 なのでこれで出汁を取って置いてあるんだよ。

 コンソメスープには敵わないけど、これも良い出汁が出てるからな。

「あ、ホテルハンプールのコンソメをちょっと使わせてもらおう。あれもたくさんあったからな」

 大鍋いっぱいにあるコンソメスープを思い出してちょっと笑ったね。

 そうそう、こういう手間のかかるところはやっぱりその道のプロにお任せしないとな。今度ハンプールに戻ったら、また大量にお願いして作ってもらおう。

 そこまで考えて小さく吹き出す。

「違うよな。今回はネルケさんのレシピで作るんだって。それで、ネルケさんのレシピはどうなってるんだ?」

 もらったレシピを取り出してじっくり読み込む。

「ふむふむ。まあ特別変わったレシピじゃないな。あのもらったスパイスが多分味の決めてなんだろう。スープは、干し肉じゃなくてすじ肉から出汁を取ってるのか。へえ良いなあ、じゃあ今回はこれで作ってみるか」

 すじ肉は、おでんを作る時用にと思ってセレブ買いでまとめて買い込んでるのがまだ手付かずで残ってる。

「ああ、おでんも良いなあ。今日は無理かもしれないけどあれも作る予定に入れておこう」

 寒い時期になってくると、煮込み料理が美味しくなるもんな。

 せっかく留守番して料理をするんだから、郊外では作れないような手間のかかった料理を頑張って作る事にしよう。




「まずは、ポトフだ」

 小さく笑ってレシピを見えるところへ置き、まずは材料を取り出して準備をする。

「ええと、まずはすじ肉の下拵えだな。これは定食屋でいつも手伝ってたから多分大丈夫だ。ちなみにネルケさんのやり方は……ほぼ俺の知ってるのと同じだな。じゃあやるか」

 大きめの分厚い寸胴鍋を取り出して中にすじ肉をガッツリ入れる。

 そこに水を入れて火にかけて沸騰するまで放置。

「ええと、ニンニクと生姜、それから長ネギの青いところってあったっけ?」

 廃棄するものは草食チームとスライム達に全部あげているから、野菜クズって全然残っていないんだよ。

「あ、これを使おう」

 白ネギもどきの葉の青いところがあったので、それを全部切り落としておく。

 スライム達がソワソワしてるから笑って首を振って、切った青い部分を見せる。

「悪いけど、これは料理に使うんだよな。あとで使い終わった分をあげるからもうちょっと待っててくれ。それで俺がすじ肉の下拵えをしてる間にポトフの材料を用意してくれるか」

 そう言って、じゃがいもやにんじんなどを皮を剥いて切っておいてもらう。



「ええと、ネルケさんのレシピによるとすじ肉自体は出汁を取るだけで今回のポトフには入れないのか。じゃあ、牛肉の赤ワイン煮を作る時にこれも使うか。絶対美味しいよな」

 早くも沸いてきた鍋を見ながらそう呟き、しっかり沸騰させて灰汁が出たところですじ肉を取り出す。この茹で汁はえぐみが出てるので廃棄だ。

「……いるのか?」

 そのまま捨てようとしたら、スライム達が一斉に集まってきて俺を見つめる。

 どうやら、これも欲しいみたいだ。

「了解、じゃあここに流すから冷めたら飲んでくれて良いぞ」

 大きめの洗い桶に茹で汁を流し込んでおき、豪快に流水ですじ肉を洗う。

「もう一回茹でて灰汁をとったらもう大丈夫かな」

 良いすじ肉だったみたいで、一度下茹でしただけでもかなり綺麗になってる。

「まあもう一回茹でておくか」

 小さく笑って、また鍋いっぱいに水を入れてすじ肉を茹で始める。

 二度目の茹で汁もスライム達にあげて、取り出した肉はもう一度綺麗に洗う。

「よし、完璧!」

 まだ少し硬いけど、これで下茹では終わりだ。

「ここからはニンニクと生姜とネギの青いところも一緒に茹でるぞ」

 もう一度寸胴鍋にすじ肉と一緒に材料を全部入れ、たっぷりの水で改めて茹でていく。

 沸騰したら弱火にしつつ、今度は出た灰汁はお玉ですくって取り除いておく。

 鍋に蓋はしない。

 ここで蓋をすると白濁したスープになっちゃうんだよな。まあそれはそれで別に良いんだけど、今回はポトフがメインだからスープは透明が良いもんな。

 灰汁が出なくなったらじっくり煮込んでいく。

 後からどんどん肉の脂が出てくるのでこれもせっせと取り除き、最後に火を止めたら料理用の薄紙を被せておく。こうすれば、冷めた時にこれに脂が付いて楽に脂を取り除けるんだよな。

「ええと、これ冷ましてくれるか」

 鍋ごと待ち構えていたアルファとアンバーに渡して時間経過で冷ましてもらう。煮込む時間そのものは短縮出来ないけど、こういう冷ます時間を短縮をしてもらえるだけでもすげえ有り難いよな。

 しばらくモゴモゴしていたアルファとアンバーがお鍋を吐き出してくれる。

「よしよし、良い感じだ」

 薄紙を剥がしてみると、ほぼ油も取り除けていて綺麗な透明のスープになってる。

「すじ肉は一旦取り出して、一口大に切り分けておくっと。これは後でまた使うから、預かっててくれるか」

 切ったすじ肉はサクラに渡して、残りのスープはザルで濾して別の寸胴鍋に入れておく。



「じゃあこれは食べていいぞ」

 すっかり柔らかくなったニンニクと生姜と青ネギに一瞬で合体したアクアゴールドとゲルプクリスタルが寄って行く。そのままどうするのか見ていると、二匹はくっついて綺麗な金色のスライムになったあとザルの中身をそのままぺろっと飲み込んだ。

「そっか、アクアゴールドとゲルプクリスタルもくっ付けるのか」

 笑って手を伸ばしていつもよりも大きい金色のスライムを撫でてやる。

「合体したわけじゃ無いけど、くっついて一緒になる事は出来るよ」

 得意げなアクアの声に、笑ってもう一度撫でてやる。

「そうだよな。アクアゴールドもゲルプクリスタルも、スライム達が合体した究極の姿だもんな」

 何となくそう言っただけなのに、次の言葉に俺は目を見開く事になった。



「違うよ〜〜究極の合体をしようと思ったら、まだまだ仲間が必要だもんね〜〜〜!」



「はあ、なんだよそれ!」

 咄嗟に振り返って叫んだ俺は、悪くないよな?

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― 新着の感想 ―
さらっと「もっとスライム集めないと究極合体はできない」宣言されて、もっと集めろと無言の圧力が(;^ω^)
[気になる点] 鍋と調理器具を含む調理施設全体を耐火耐熱材で囲ってしまえばスライムたちでも収納出来るんじゃね、と思ったが…如何なんだろうね?
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