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俺の思い出の味

「サンドイッチは買い置き以外だと、クラブハウスサンドとBLTは今作った分で当分大丈夫だろう。となるとあとはキャベツサンドだな。あ、この前作ったコロッケがもうちょい残ってるから、コロッケサンドも作れるな。それからハスフェル達に意外に焼きそばが好評だったから。男子の好きな炭水化物の権化、焼きそばドッグも作っておくか。あとは、クーヘンのところで貰ったあのソーセージを焼いてシンプルホットドッグも絶対美味いよな。確かいろんな味があるって言ってたから、それだけでも色々楽しめそうだ」

 作るものが決まれば、あとはひたすら作るだけだ。

 既にクラブハウスサンドとBLTサンドを作り終えたスライム達は、全員揃ってやる気満々で俺を見ている。



「よし、じゃあ次はキャベツサンドだ。ええと、使うのは八枚切りの食パンとキャベツと玉ねぎ、それからベーコンとチーズ、ゆで卵はまだまだあるから大丈夫だな。よし、じゃあこのキャベツを細かくスライスしてくれるか。こっちの玉ねぎも同じく薄切りだ。食パンは八枚切りでカットしてくれるか」

「はあい!」

 元気なスライム達の返事が聞こえたあと、メタルスライム達とレインボースライム達がそれぞれ混じるみたいに合体しあってキャベツを飲み込む子と玉ねぎを飲み込む子、それからベーコン、チーズをそれぞれ飲み込む子達に分かれた。残った子達が手分けして食パンを飲み込む。

「そっか、メタルスライム達はまだあんまり料理の手伝いをしていないから、レインボー達があんな風に合体して一緒にやって教えてるわけか。すげえな」

 あっという間に準備が整い、山盛りに刻まれたキャベツの千切りを見た俺は小さく吹き出した。

「キャベツサンドで俺がする事って、パンを焼くだけじゃん」

 小さくそう呟き、綺麗に切られた八枚切りのパンを半分にして、もう一台用意した簡易オーブンも使ってまずは食パンを焼き始めた。

 半分はそのまま何もつけずに焼き、残り半分にはスライスしたチーズとカットしたベーコンをたっぷり乗せて焼いていく。

 焼き上がった分はスライム達が一旦預かってくれるから、熱々焼き立てのままで保存出来る。

 毎回思うけど、もう俺、スライム達のお手伝い無しでは料理出来ないよ。



 パンを焼いている間に、砕いたたっぷりの黒胡椒をキャベツと玉ねぎを混ぜ合わせたボウルに振り入れ、しっかり混ぜてからマヨネーズであえておく。

「じゃあこんな風にして作るからな」

 見本用にワンセットは俺が作って見せる。

「焼いたパンに粒マスタードをたっぷり塗って、ここにスライスした茹で卵を並べるんだ。これは半分に切るから、真ん中部分に黄身が出るように並べてくれよな」

 手で半分に切る振りをしながら、切った時に綺麗に見えるように注意点を教えておく。

「ここにたっぷりのキャベツを乗せる。だいたいこれくらいな」

 ゆで卵を並べた上に、拳大のたっぷりのキャベツを山盛りに乗せる。

「それを熱々のチーズとベーコンを乗せて焼いたパンで挟むんだ。これで完成。これは、斜め三角じゃなくて、こっち向きに四角く半分に切るから間違わないようにな」

「はあい了解です! では作りま〜〜す!」

 嬉々としたアクアの返事の後、またしても左右に列に分かれたスライム達が、次々に流れ作業でキャベツサンドを量産し始める。

「あっという間に出来上がりそうだな」

 苦笑いした俺は、サクラには作業を抜けてもらって追加で作る予定の材料を取り出してもらい、まずはクーヘンのところで貰ったソーセージを色々取り出して焼き始めた。



「ご主人、キャベツサンド出来上がりました〜〜!」

 アクアが得意げにそう言って、小さな触手で敬礼のポーズをする。

「おう、ご苦労さん。じゃあ次はこっちな」

 焼き上がったソーセージはサクラに預かってもらっているので、それを取り出してホットドッグを作ってもらう。

 これは切り目を入れたコッペパンにソーセージを乗せてみじん切りの玉ねぎを散らし、ケチャップとマスタードをかければ完成だからあっという間だ。

 半分はそっちを作ってもらい、残りの子達には焼きそば用のキャベツと豚バラ肉を切ってもらう。

「紅生姜もあったな。これもみじん切りにしておいてもらえるか。よし、これで準備完了だな」

 コッペパンと、四つ切りサイズに切った食パンも使って焼きそばドッグを作っていくよ。

「まずは俺が焼きそばを作るから、待っててくれよな」

 俺が焼きそばを作っている間にスライム達にはパンを切っておいてもらい、俺は大量のシンプル焼きそばを作り続けた。

「よし、これだけあれば大丈夫だろう」

 山盛りの焼きそばが出来上がったところで、焼きそばドッグを作って見せて、スライム達に作ってもらう。

「こっちの食パンは、斜めに半分にカットして、ここに切り目を入れるんだ。こんな風にな」

 斜めに切った分厚い食パンの断面に切り込みを入れて袋状にする。ここにたっぷりの焼きそばを押し込んで焼きそばパンをつくる。

 実はこれ、俺が子供の頃に母さんがお休みの日の昼食に作ってくれた思い出の味なんだよな。コッペパンじゃなくて厚切り食パンに挟むところが珍しくて、これを作ってくれるとすごく嬉しかった覚えがあるんだよな。

 出来上がった焼きそばパンを見て、ちょっとだけウルっと来たのは内緒だ。

 そのあと、千切りのキャベツとたっぷりのオーロラソースを塗ったコロッケを挟んだコロッケサンドをコロッケがあるだけ作ったところで、俺も昼食を食べる事にした。

 もちろん食べるのは俺の思い出の味、焼きそばパンだ。

 シャムエル様にはタマゴサンド三種盛りと激うまジュースを渡しておき、俺はあの頃と同じく牛乳をおともに焼きそばパンを食べた。

 食いながらやっぱり目の前が潤んで、誤魔化すのに苦労したよ。

 多分、シャムエル様にはお見通しだったろうけど、何も言わずに俺の頬を優しく撫でてくれた。



 うう、さすがは神様……その無言の優しさのおかげでちょっとだけ我慢しきれず男泣きしたけど、別に良いよな。

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