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岩食いの習性と今後の予定

ギイとオンハルトの爺さんが戻って来た部分が、まるっと抜け落ちていました。

コピペ失敗……一部文章を訂正しました。大変失礼しました m(_ _)m




「ありがとうございました。これで気分良く仕事に戻れます!」

 結局、散々マックスを撫で回したその後には、ハスフェルにも許可を貰ってシリウスまで心置きなく撫で回したフクシアさんは、もうこれ以上無いくらいの良い笑顔で、例の芝刈り機もどきを大事そうに抱えて何度もお礼を言って部屋を出ていった。



彼女が入って来た後に続いて部屋に入って来ていたギイとオンハルトの爺さんも、自分の言いたい事だけ言って、あっという間に出て行った彼女を呆れたみたいに見送ってから小さく揃って吹き出していた。

「何というか、賑やかな子だったな」

「全くだ。だが邪気が無いというか嫌味が無いというか、あれだけ騒がれても嫌な感じが全くしないのはさすがだなあ」

「そりゃあ俺が祝福を与えた子だからな。どうだ。良い子だろうが」

 嬉々として部屋を出ていったフクシアさんを見送って、ハスフェルとギイが苦笑いしながらそう言い、それを見たオンハルトの爺さんが胸を張りながらそんな事を言うものだから、思わず顔を見合わせて同時に吹き出した俺達だったよ。



 彼女のおかげなのか、なんと言うかいつもと違って妙に強張っていたハスフェルの雰囲気もちょっと落ち着いたみたいに見える。

どうやら、緊急事態はひとまず回避出来たと思って良いのかな?



「ニニ達には見向きもしなかったから、彼女は犬派なのかもな」

 他の従魔達も彼女には興味津々だったので、せっかくだから他の子達も触らせてやってもいいかと密かに思っていたんだけど、彼女はひたすらマックスとシリウスの二匹だけに夢中だったよ。

「いや、犬派って言うよりハウンド好きなのかもな。お前達にも見向きもしなかったもんな」

 笑ってそう言った俺は、カッツェとくっついて丸くなってるニニの後ろへ回った。

 ここには珍しいオーロラ種のオーロラグレイウルフのテンペストとファインもいたのに、もしかしたら気付いてなかっただけなのかもしれないけど、彼女はそっちには全く見向きもしなかったんだよ。

 実はさりげなく起き上がってマックスの側に来て座り、自分達がここにいるよアピールしていたのに完全にスルーされた二匹は、今はニニとカッツェの影に隠れてちょっと落ち込んでる。

 いつもは元気いっぱいの尻尾がヘニョってなっているから、犬科の子達の機嫌の良し悪しはよく分かるよ。

「じゃあ、次は彼女の前で大きくなってみるか?」

「ああ、それは良いですね」

 俺の言葉に鼻で鳴いた二匹が甘えるみたいに頭をこすりつけてくる。

 笑いながらそんなテンペストとファインを交互に撫でてやり、尻尾が元に戻るまで揉んだり撫でたりしてスキンシップを楽しんだ俺だった。



「じゃあ俺達も宿泊所へ戻るか。それで明日以降は俺達はどうするんだ?」

 ようやく元気になったテンペストとファインから手を離した俺は、背中を伸ばして緊張して強張っていた体をほぐしながらハスフェル達を振り返った。

「まあ、しばらくは街にいて、鳥達と大鷲達も使って上空から街の周囲の警戒に当たらせよう」

「了解だ。まああんな目立つのが近付いて来たら、鳥達ならすぐ分かるだろうしな」

 あの真っ黒だった岩食いを思い出してそう言うと、何故か三人が揃って苦虫を噛み潰したみたいな顔になる。

「何だよ、どうした?」

 驚いてそう尋ねると、ものすごいため息を吐いたハスフェルが首を振った。



 おお、さすがはすげえ肺活量だな、おい。



「岩食いの嫌なところがそれなんだよ。奴らの出現は本当に突然なんだ」

 思いっきり嫌そうなハスフェルのその言葉に、首を傾げる。

「突然? 飛んでくるとか言ってたあれか?」

 確かちょっとくらいなら飛べるとか言ってたから、それかと思ったんだけど違うみたいだ。

 ハスフェルだけでなく、ギイとオンハルトの爺さんまでもが揃って足元を指差した。

「岩食いが最悪なのは、増殖そのものは地上でないと出来ないんだが、ある程度の数になると地下に潜るんだ」

 目を見開く俺に、三人が同時に頷く。

「しかも、そのままゆっくりだが地中を移動しやがる。そして不意に何処かで地上に出て、そこでまた増殖する。その出現を予想するのは不可能だ。地上に出た際に、近くに大きな街や鉱山があれば、文字通り岩を食いにそこへ向かう。この街の城壁だって岩食いに本気で食われたらぼろぼろにされるぞ」

「うわあ、最悪」

 俺の叫びに、また揃って頷く三人。

「だから、とにかく地上で増殖しているところを発見しない限り、逆にまとまった数で駆逐するのが非常に困難なんだよ」

 ギイの説明に俺の頭の中は真っ白になった。

「そんなの……そんなのどうしようも無いじゃないか。野放しでどんどん増えて、いずれは世界を覆い尽くしちまうような量になるんじゃね?」



 それって、要するに岩食いが指数関数的に増えていくって事だろう。

 ようやく事の重大さを理解して真っ青になる俺を見て、ハスフェル達が今度は苦笑いして首を振る。



「ところがそうじゃない。奴らがここで活動出来る時間には限界があるんだ」

「あ、つまり……この世界にいられる時間が決まってるって事か?」

 その言葉に、マックスの頭の上に座っていたシャムエル様がポンと跳ね飛んで俺の目の前に現れる。

「そうそう。一度の出現で最初のモンスターがこの世界に現れてから、そいつがここで増殖して消滅するまでの時間は決まってるね」

「なら、消滅を待てばいいんじゃ……」

 希望的意見だったんだけど、ハスフェル達は揃って首を振った。

「まあ、その可能性も無いわけじゃあない。実際に、この世界に現れても何の被害ももたらさずにそのまま消滅するモンスターだっているからな」

「だけど、それを当てにして何の準備もしないと言うわけにはいくまい?」

 ハスフェルとギイの言葉に俺も頷く。

「確かにそうだな。備えるに当たっては常に最悪の状態を予想しておくべきだからな」

 俺の呟きに顔を見合わせてため息を吐いたハスフェルとギイは、少し考えて指を折って何やら相談を始めた。



「今回の場合なら、この冬の間にこれ以上の被害が出なければもう消滅したと思っていい。春には心置きなくハンプールへ戻れるよ」

「って事は、俺達が冬中ここで過ごす事に決めたのって、ある意味ラッキーだったのかもな」

「確かにな。まあ、何事もない事を祈っておくよ。そんな訳だから当分の間、ジェムモンスター狩りは街の周辺で日帰り出来る距離の範囲で行うよ。日常の備えはギルド連合に任せておけばいい。手がいる時には彼らの方から何か言ってくるさ」

 苦笑いしたハスフェルの言葉に、俺も納得したよ。

「了解。じゃあしばらくは街の周辺での日帰りでの狩りか。それならまた俺は宿泊所で留守番をして、料理の作り置きをする時間を貰ってもいいかもな」

「ああ、良いんじゃないか。まあ、お前が相手を出来そうな狩りの時には一緒に行こう。ここにはかなり強いのもいるから、その時にはお前はバイゼンで留守番しててくれれば良い」

 何故かにんまりと嬉しそうに笑ったハスフェル達の言葉に、俺はため息を吐いて遠い目になるのだった。



「当たり前だ! お前らがかなり強い、なんて言うような恐ろしいジェムモンスターには俺は絶対に近づかないぞ!」

 拳を握って、そう宣言する俺だったよ。

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