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次の目的地は?

「ごちそうさま。美味かったよ。それじゃあ出発するか」

 作り置きを食べ終え、少し休憩したところでハスフェルがそう言って立ち上がり、二人もそれに続いた。

「おう、じゃあ片付けて出発だな」

 俺も飲んでいたコーヒーの残りを飲み干して、マイカップをサクラに渡して立ち上がった。



 いつもの如く、机や椅子だけでなく張っていたテントもスライム達があっという間に片付けてくれる。

「いつもありがとうな」

 得意気に跳ね飛んで来るスライム達を順番におにぎりにしてやってから、俺もマックスに鞍と手綱を取り付けて背中に飛び乗った。

「あれ、もしかしてまた飛んでいくのかな?」

 ふと思ってハスフェル達を見たら、彼らもそれぞれのいつもの従魔達に鞍を乗せていてちょっと安心したよ。

「それで何処へ行くんだ?」

 先頭を行くハスフェルの乗るシリウスの横について、俺は大きな声で話しかける。

「オーロラタートルが出てるみたいだから、そっちへ行くぞ。今日は地上を走るから遅れずについて来いよ!」

 ハスフェルの答えに、俺が何か言うより先にマックスが大きく吠えて一気に加速する。

 当然ハスフェルの乗るシリウスも一気に加速して二匹が横並びになる。

 当然ギイの乗るブラックラプトルのデネブと、オンハルトの爺さんが乗るエルクのエラフィも一気に加速して食らい付いてくる。

 そのままかなりの時間を俺達は、抜きつ抜かれつの接戦を楽しみながら走り続けた。



「あの大岩の向こうまで競争!」

 かなりの時間を走り続けていた時、マックスの頭に座ったシャムエル様が突然そんな事を叫んだものだからそこからまた本気の駆けっこが始まり、俺達は全員横並びのままでシャムエル様が目標にした大岩目掛けて突っ込んで行ったのだった。



「だあ〜〜〜待て待て! ストップ〜〜〜ぶつかるって!」

 しかし、目標の大岩が近づいてもマックスもシリウスも全くスピードを落とす気配が無い。

 俺の悲鳴と共にそのまま走り続けた大興奮状態のマックスとシリウスは、何とそのまま目標の大岩に駆け上がっていき、その頂上から揃って岩の向こう側にものすごい大ジャンプをしたのだ。



「どっひょえ〜〜〜〜〜〜!」



 悲鳴と共に落下する急激な落下による無重力状態と、その後の着地の衝撃で前に吹っ飛びそうになった俺の身体を、瞬時に鞄から飛び出したスライム達が即座に張り付いて確保してくれる。


 おかげで落ちずに済んだよ。

「あはは……ありがとうな。はあ、今のはマジで怖かったぞ」

 心臓バッコンバッコン言ってるのを何とか宥めつつ、乾いた笑いをこぼした俺は、俺の下半身を完全にホールドしているスライム達を撫でてやった。



「いやあ、相変わらず見事な走りだったねえ」

 大きく拍手をしながら、シャムエル様はご機嫌でそんな事言って笑っている。

「頼むからいきなり言うのはやめてくれって。俺の繊細な心臓が止まったらどうしてくれるんだよ」

「その時は念入りに心臓マッサージをしてやるから安心しろ」

 隣から笑ったハスフェルとギイの声が聞こえて、俺は堪える間も無く吹き出したのだった。



「で、誰が一着だったんだ?」

 ご機嫌で跳ね飛ぶマックスを宥めつつ、頭の上で器用に軽いステップを踏んでいるシャムエル様の尻尾を突っつく。

「ううん、今のはマックスちゃんとシリウスちゃんが完全に同着だったね。って言うか! 私は岩から飛び降りろなんて一言も言ってないからね! 飛んだのはあくまでも従魔達が自主的にだよ!」

 力説するシャムエル様の尻尾を、俺は笑いながらもう一度突っついてやった。




「おお、ここは水場があるじゃないか。だけど泉って言うより淀んだ池って感じだな。水も濁ってるし、草や苔が生えてるなあ。ちょっとここでは料理は出来そうにないぞ」

 目の前に広がる大きな池を前にしてちょっと苦笑いしながらそう呟く。

 今までの、飲める湧き水が湧いている場所は、大抵が砂場か岩場で水は綺麗な清水だった。

 だけどここの池の水は薄緑色になって濁っているし、あちこちに苔っぽいものや水草が浮いているのも見てとれた。

「ううん、あの岩に付いてる苔は滑りそうで危険だな。ジェムモンスターがここに出るんなら、ちょっと注意して戦わないと、下手をしたら滑って転んであの池に頭から突っ込む! なんて事に成り兼ねないぞ」

 あの池に突っ込むのはできれば勘弁して欲しい。

 小さくため息を吐いた俺は、ハスフェル達を振り返った。

「なあ、ここで戦うのなら……何してるんだ?」

 彼らは俺達がさっき飛び降りてきたあの巨大な大岩の根元に集まっていたのだ。

「ああ、次の出現までまだしばらく時間がありそうだから、先に飯にしよう」

 振り返ったハスフェルの言葉に、笑った俺は池から少し離れた草地に机と椅子を取り出したのだった。

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