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夜食タイム!

「お願いだからまだ寝ないで! 寝るなら何か出してからにして! もう倒れそうなくらいにお腹ペッコペコなの〜〜〜! お願いだから大仕事を終えて帰ってきた私を腹ペコのままで放置しないで〜〜〜〜!」

 俺の顔面に思いっきり張り付いて泣き叫ぶシャムエル様。

 そしてモッフモフの腹毛に埋もれた俺の顔と、勢いよく振り回されるもふもふ尻尾に叩かれる俺の首元。

 ああ、至福の時間……一体何のご褒美っすか、これ。



 マックスの上に仰向けに倒れ込んだまま、シャムエル様のもふもふっぷりを堪能していると、唐突に尻尾の動きが止まり、シャムエル様が離れるのが分かった。

「あれ? まさかと思うけど、もしかしてもう寝ちゃった? ちょっと、起きてください!」

 困ったようにそう言いながらぺしぺしと俺の額を叩くシャムエル様。

「起きてるって。ちょっと素晴らしいもふもふっぷりを堪能させていただいておりました」

「もうびっくりさせないでよ。ほら、お願いだから何か出して! 腹ペコな私を労ってちょうだい!」

 笑った俺がそう言うと、シャムエル様は何故かドヤ顔で胸を張った。

「はいはい、ええと何がいい?」

「タマゴサンド!」

 即答するシャムエル様の尻尾をつっつき、ベッドになってくれているサクラをそっと撫でた。

「そうなんだってさ。じゃあリクエストのタマゴサンドを色々出してくれるか」

「タマゴサンドだね。了解! はいどうぞ」

 元気なサクラの返事の後に、ニュルンと触手が伸びて来て俺の手にお皿を置く。

 そこには、タマゴサンドが三切れ乗せられてた。

 一つ目は、いつもの潰したタマゴをマヨネーズで和えた定番タマゴサンド。二つ目は、分厚いオムレツをそのまま挟んだオムレツサンド、それから三つ目はスライスしたゆで卵をずらして並べた茹で卵サンドだ。これにもたっぷりのマヨネーズがかけられているよ。

「ふおお〜〜〜! 夢のタマゴサンド三種盛り!」

 大興奮状態のシャムエル様の尻尾が、いつもの三倍サイズに膨れ上がる。

「さすがは我が心の友だね。私が欲しいものを何より分かってくれてる! では、遠慮なくいっただっきま〜す!」

 目を輝かせてそう言ったシャムエル様は、いつものごとくタマゴサンドに顔から突っ込んでいった。

 ううん、またしても心の友発言頂いちゃったよ。

「じゃあこれも置いておくよ」

 飲み物も欲しいだろうと思って激うまジュースミックスを作って、これはスライムに持っていてもらう。

「ふおお〜〜〜美味しい〜〜! タマゴサンド三種盛り最高〜〜!」

 お行儀悪く、両手に二つのタマゴサンドを持って交互に齧りながらそんなことを叫んでいる。

「誰も取らないから落ち着いて食べろって」

 そう言って笑ってまだ大興奮状態の尻尾を突っつき、念話でサクラにお願いしてもう一皿取り出してもらう。



「はあ、ちょっと落ち着いたかな」

 あっという間にタマゴサンドを全部平らげたシャムエル様が、そんな事を言いつつ用意しておいた激うまジュースミックスをグビグビと飲んでいる。

「あれ、もうお腹いっぱいになったんだ。じゃあこれは要らないならしまっておくか」

 態とらしくそう言って、持っていたお皿をシャムエル様に見せる。

「何言ってるの! 要るに決まってるじゃない! それをしまうなんてとんでもない!」

 俺が持っていたお皿には、クーヘンのお店の横の広場にあったお菓子屋さんの屋台で買った、焼き菓子が綺麗に盛り合わせてあった。

「ほら、はやく!」

 ぴょんぴょんともの凄い高さまで飛び跳ね、空中で足で拍手をしてる。

 テシテシと妙に間抜けな音がして、俺は思わず吹き出したよ。

 からかってやろうと思って口を開こうとした次の瞬間、シャムエル様の横にカリディアがすっ飛んできて、同じように飛び跳ねて空中で足を使って拍手を始めた。

「あはは、お見事。もう戻ってきていたんだな」

 カリディアはベリー達と一緒に行ったはずなので、どうやらベリー達も戻って来ているみたいだ。

 笑ってシャムエル様にお皿を渡すと、やっぱり顔面からお菓子の山に突っ込んでいった。



「お疲れ様。果物食べるだろう?」

 振り返って姿を表したベリーとフランマに手を挙げて話しかける。

 最近ではサクラに、ベリーに頼まれたら食べ物を出すようにお願いしてあるので好きに食べているみたいだ。だけどまあ一仕事終えて帰って来たところなんだから、労う意味も込めて出してやるべきだろう。

「ああ、では出して頂けますか。ちょっとさすがに疲れましたね」

 笑って側に来たベリーに、俺はサクラが取り出してくれた果物が色々入った木箱を幾つも取り出して渡した。

「ハスフェルはお休みだったようなのでギイに詳しく報告して来ましたが、一応見つけた岩食いは全部で二箇所。見つけた分に関しては完全に駆逐しましたが、あれで終わりだという保証はありませんからね。当分は警戒が必要ですよ」

「おっそろしい相手なんだな」

 何となく場がもたなくて、俺も取り出した焼き栗を食べながらベリーの話を聞く。

 あ、これは無理。麦茶も出しておこう。

「そりゃあ、我々の(ことわり)から外れた存在ですからね。当分の間、最大限の警戒をしておく必要があります」

 激うまリンゴを嬉しそうに食べるベリーは、そう言って小さくため息を吐いた。

「まあ、それに関しては俺にはどうしようもないからさ。お任せするから、よろしくお願いします」

「まあ、これは本来、我々ケンタウルスの仕事なんですよ。ですから気になさる必要はありませんよ」

 サラリと言われたその言葉に、俺は驚いて食べかけていた栗を転がしたのだった。

「えええ、マジ?」

「はい、マジです」

 笑ってそう言ったベリーは、今度は激うまブドウを取り出して食べ始めた。



 うん、今のも俺が聞いても理解出来ない類の話だな。

 ってことで、これも全部まとめて明後日の方角にぶん投げた俺は、さっき転がした栗を拾って口に放り込んだのだった。

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