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金銀財宝ザックザク!

「ほう、それはハンプールで買ったマントだな。似合ってるぞ」

「確かにちょっと冷えてきたな。じゃあ俺も使おう」

 俺がハンプールで買ったあの普段使い用の縁取り無し薄緑色のマントを取り出して羽織ると、それを見たハスフェルとギイが笑顔でそう言い、頷いたオンハルトの爺さんも自分のマントを取り出して羽織った。

「あれ、縁無しも買ってたんだ」

 俺が見たのは縁取り付きの豪華なマントだけだったけどそれ以外にも色々買っていたようで、ハスフェルとギイがそれぞれ取り出して羽織ったのは、どちらも真っ黒な縁取り無しの大きなマントだ。

 そしてオンハルトの爺さんが羽織っているのは、何と桜みたいな薄いピンク色で、ちょっとむら染っぽくなってて遠目に見ると本当に桜吹雪みたいに見える。だけど何故かよく似合ってるよ。爺さんすげえ!

「うん、皆よく似合ってるぞ」

 俺が笑顔でそう言うとハスフェル達も笑顔で頷き、三人揃ってオンハルトの爺さんのマントに視線は釘付けになる。

「へえ、オンハルトのマントの柄、遠目に見ると花が咲いてるみたいに見えるなあ」

「ああ確かに。春のバイゼン周辺の街道の街路樹があんな感じだな」

 ハスフェルの言葉に続いたギイの言葉に俺はものすごい勢いで振り返った。

「ええ、ちょっと待って! バイゼンの周囲の街道って桜並木なのか?」

「そうだぞ。春のバイゼンの街道は一見の価値ありだよ。全てが薄紅色に染まるあの光景は、何度見ても飽きる事が無い」

「確かにあれは綺麗だ」

 うんうんと頷く二人を見て、俺は絶対に春には花見に行こうと密かに誓ったのだった。



 そんな話をしながら、オーロラミニラットの出現場所へ向かう。

「おお、出てるな。よしよし。早速行こうじゃないか」

 嬉々として抜刀して従魔から飛び降りる三人を見て、俺も慌ててマックスの背から飛び降りた。

 見るとあの岩場周辺の草地には、中型犬くらいのサイズの巨大なネズミが草をかき分けてのそのそと走り回っている。とはいえ、それほどの速さでは無いので徒歩で戦っても追えないほどではない。

 中型犬サイズのネズミは決してミニではないと思うのだが、他のジェムモンスター達の大きさと比べると確かにあれならミニサイズなのだろう。



「武器は剣でいいのか?」

 腰の剣を抜きつつそう尋ねると、ハスフェルが頷いて足元にいるオーロラミニラットを一息にぶった斬った。

「こいつは逃げ足が速いから、お前ならとにかくどこでもいいから切って足止めをしろ。怪我をすると動かなくなるから、足止めしてしまえば後は容易に倒せるぞ」

「成る程、了解だよ!」

 返事をした俺は、丸々太った巨大ネズミを叩き斬った。

「あれ、割と一撃で倒せるじゃん」

 意外に簡単にジェムになるそれを見て思わず呟く。

「今はいいさ。もうかなり散ってるからな。出現直後はものすごい数だからそんな余裕は無いぞ」

 笑ったギイの言葉の意味を考えて何だか嫌な予感がした俺は、ちょっと岩場から離れて後ろに下がった。

 巨大化した従魔達が嬉々として進み出るのを見て、場所を従魔達に譲って俺は更に下がる。

「よし、この辺りで戦う事にしよう。あまり従魔達に近づき過ぎると俺の方が狩られそうだからな」

 言い訳するようにそう呟いた直後、右肩にシャムエル様が現れる。

「相変わらずだねえ。でもまあケンはこの辺で戦うくらいでちょうどいいかもね。素材やジェムは従魔達が集めてくれるだろうしさ。それじゃあ私はちょっと飛び地の中を見回りしてくるね」

 面白そうに目を細めて笑ってそう言うと、シャムエル様は唐突に消えてしまった。

「そっちも相変わらずだねえ。さて、そろそろ次が出るかな?」

 剣を構え直してそう呟く。

 周囲にいたオーロラミニラットは、瞬く間にハスフェル達と従魔達の手で駆逐されてもう一匹もいなくなってる。

 スライム達がジェムと素材の回収ついでに、膝上ぐらいまであった長い草を全部食べて刈り取ってくれたので一気に見晴らしが良くなる。

「ここの草も美味しいねえ〜〜!」

「美味しい美味しい〜!」

「飛び地最高〜〜!」

 嬉しそうにそう言って跳ね飛ぶスライム達の言葉に納得したよ。

 以前のあの酷い目にあった飛び地でも、皆、生えてる草が美味しいって言ってたよな。

「そっか、ここも強い地脈の吹き出し口だからマナが濃いのか」

 俺の呟きが聞こえたらしいハスフェルが振り返る。

「ああそうだぞ。まあ、以前行ったあの飛び地ほどではないが、ここのマナも相当濃いらしいからな。安定して様々なジェムモンスターが出現してくれるよ」

「おう、そりゃあ楽しみだな」

 そう答えた直後、前方の従魔達が一気に騒ぎ始めるのを見て俺は構えていた剣を握る手に力を込めたのだった。



「うん、下がって戦うの選んだのは正解だったなあ。少し前の俺、グッジョブだよ」

 目の前一面に転がる数え切れないくらいの数のジェムと、握り拳くらいの銀塊と小さな金塊を見てそうつぶやく。

 何しろものすごい数だった。あれはもしも俺が迂闊に前に出てたら、もう何も出来ずにネズミに踏み潰されてたレベルに凄かった。特に出現直後はマジで辺り一面が足の踏み場もないくらいにネズミだらけだったんだよ。

 スライム達が大張り切りでジェムと素材を集めてるけど、あれって相当な数になってると思う。

 だって、何しろ岩場のいくつかの亀裂から、それこそ噴き出すみたいにして巨大ネズミが地面に文字通りあふれ出したんだよ。

 もう従魔達は大喜びでネズミを叩きまくってたし、ハスフェル達もバッサバッサとまるで紙でも切ってるみたいにあっけなく切り倒して、ネズミ退治に精を出していたよ。

 一応俺も、彼らの隙間をかいくぐって逃げてくる巨大ネズミを張り切ってやっつけたよ。

 やっつけていて、ジェムと一緒に銀が出たら当たり! さらには小さいけど明らかに金だと分かるそれが出たら大当たり! って感じで考えてたらちょっと楽しかったよ。



 結局、一面クリアーどころか全部で三面クリアーしたところで昼休憩で一息入れる事にした。

 腹が減っては戦ができぬって言うからね。

 ひとまずお疲れ様でした〜〜〜!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 銀塊なら5個、金塊なら1個を集めると、おもちゃのカンヅm……ゴホン……いえなんでもありませぬ(苦笑) [一言] ウチの愛犬(柴犬♂)は、近所の空き家でネズミが大量発生した余波で、我が家…
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