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イグアナの泉

「へえ、ここがイグアナのいる場所なのか」

 ハスフェル達について森の中をしばらく移動した後、ようやく到着したのは少し開けた泉のある場所だった。

 泉の周りは平地になっていて、その周りには大きな木が枝を広げている。

 枝の何本かは、泉の上にまで伸びていてなんとも複雑に絡まり合っているようだ。



「以前来た時と変わっていないな。って事は、まだイグアナが出ると見た」

 嬉しそうなギイの言葉に、ハスフェルも嬉しそうに笑っている。

「そっか、出現するジェムモンスターに変化があれば、周りの環境も変わる?」

「外の地脈の吹き出し口では、通常出現する種類は決まっている。一旦吹き出し口が閉じた後にまた開くと変化する事もあるが、周囲の環境ごと変化するような事は無いな。周囲の環境ごと変わるのは飛び地特有の現象だよ」

 マックスの頭の上にいたシャムエル様が、ハスフェルの説明にドヤ顔で頷いてる。

「成る程ねえ。飛び地の中は外から完全に切り離されて隔絶されている空間だから、シャムエル様も手も出しやすいわけだ」

「ふおお。さすがはケンだね、飛び地の構成方法を理解してくれてるねえ」

「いやいや、そこは適当だから、全く理解してないから」

 嬉々として説明をしようとするシャムエル様を慌てて止める。

「無理無理。そんなの説明されてもかけらも理解出来る気がしないって」

「ええ、せっかくだから定期的な確認作業を手伝って欲しかったのに」

 何やらとんでもない事を言われて焦る俺を見て、ハスフェル達が何故だか揃って吹き出す。

「だあ! それはシャムエル様の仕事だろうが。俺には無理! そんな無茶を俺に求めないでくれって」

 顔の前で大きくばつ印を作って叫ぶ俺を見て、何故だかハスフェル達は大笑いしていたよ。

 だって、それはシャムエル様の仕事だよな?

 ただの人間である俺に、そんな無茶を期待するんじゃねえよ。




「お、そろそろ出たな」

 その時、ギイが嬉しそうにそう言って泉の方を振り返った。

「うおお、デカい!」

 泉の上まで張り出した大きくて太い木の幹の上に、予想以上に巨大なイグアナが出てきて驚いたよ。

「うわあ、あれって長い尻尾の先まで入れたら、余裕で2メートル越えるんじゃね?」

 予想以上のデカさに若干ビビる俺。

「お前は相変わらずだなあ。あんな見かけだがあいつは草食だよ。ただし爪と尻尾の威力は凄いから、捕まえる際には注意が必要だ」

「そうなんだ。あんな凶暴そうな顔をしてるから、てっきり肉食だと思ってたよ」

 感心して見ていると、デネブに乗ったまま、ギイがゆっくりとイグアナに近寄っていく。

「ここのイグアナは赤いんだな。てっきりイグアナって言うから緑色のやつかと思ってたよ」

 少し離れてギイの様子を見ながら、小さな声でハスフェルに話しかける。

「あれはオーロライグアナの亜種だな。ここからみると赤っぽく見えるが、外に出ると綺麗な虹色になるらしい。俺もせっかくだから亜種が欲しい。通常のオーロライグアナはとりあえず狩って亜種が出るのを待つとしよう」

「了解、じゃあ頑張ってくれよな。俺はお前ら二人のテイムをした後で考えるよ」

 せっかくだから俺も亜種が欲しいけど、どれくらいの頻度で得るのかが分からない。なので、とりあえずは二人を優先させるよ。いざとなったら俺は普通のカラーでも構わないからな。

「まあ時間はたっぷりあるんだから、せっかくだからお前も亜種を狙えよ。オーロラ種のイグアナの亜種が出るのは、俺の知る限りここだけだぞ」

「へえ、そんなレアなんだ。じゃあ俺もせっかくだから亜種をテイムさせてもらおう。でも、あのいかにもイグアナって感じのノーマルも捨てがたいぞ」



 実を言うとギイの乗るデネブが忍び足で近付く亜種とは別の枝に、さっきからやや白っぽい緑色の背中に棘がツンツンに突き出たデカいイグアナが出てきてるんだよ。

 あの背中の長い棘みたいなのがめっちゃ格好良い。

 イグアナはさすがに飼った事がないけど、ここでは言葉が通じるんだから世話に関しては心配しなくていい。

 ちょっとワクワクしながらそう言うと、笑ったハスフェルがあの緑のイグアナを指さした。

「それなら二匹テイムすれば良かろう? どうせ小さくなれるんだから、場所の心配もしなくて良いしな。イグアナも強いぞ」

「あはは、それも良いなあ。じゃあまずは亜種を一匹捕まえて、それから定番の色かな?」

「良いんじゃないか。それなら俺も二匹頼むよ」

「きっとギイももう一匹欲しがるだろうな。自力で捕まえてくれたら、テイムはするよ」

「おう、よろしく頼むよ。それじゃあまずはそれぞれ亜種をテイムするのが目標だな。それが終われば順番にノーマルもテイムしよう」

「だな。じゃあそれで行こう。おお、いよいよかな」

 俺達が小さな声でのんびりと話をしている間にギイの乗るデネブは泉の中へ入り、これまた慎重にイグアナの亜種に近寄って行っていた。

 俺は離れた場所から、あのデカいイグアナをギイがどうやって捕まえるのか、ちょっとワクワクしながら見学していたのだった。

 もちろん、後で自分が捕まえる時の為に参考にさせてもらうつもりだけどね。

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