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オーロラハードロック狩り

「おお。硬いけど、ミスリルの槍なら確かに刺さるじゃないか」

 マックスの背の上から力一杯突き刺したミスリルの槍は、軽々と岩のジェムモンスターであるオーロラハードロックを貫いて一瞬でジェムと素材に変えた。

「ええと、この素材は……何だ?」

 明らかに大きなジェムが転がったすぐ横に、俺の握り拳くらいの大きさの半透明の石が転がっているのが見えて覗き込む。

「これは集めま〜す!」

 鞄から飛び出してきたスライム達がわらわらと四方へ散らばっていき、地面に転がるジェムと謎の素材を集め始める。



 もうとにかく従魔達は全員が大興奮状態で、巨大化したお空部隊は、次々にオーロラハードロックを掴んで上空へ舞い上がっては地面に叩き落とすのを繰り返していた。

 あまり力のない草食チームが、主にお空部隊が叩き落としたオーロラハードロックをやっつけ、こちらも巨大化した猫族軍団と狼コンビ達は、大はしゃぎで岩を叩いては転がし、岩同士をものすごい勢いでぶち当てて凝固を解いては嬉々として襲いかかっていた。

 セーブルやヤミーも一番大きなサイズまで巨大化して、軽々とオーロラハードロックを叩きまくってそのままジェムと素材に変えてる。あいつらの辞書にも手加減って言葉は無いみたいだ。

 何しろ、セーブル達にかかったらオーロラハードロックの鉄壁の守りも紙切れ以下の防御力しか保てないらしく、まるで風船か何かを破るみたいに、軽々と何の抵抗もなくやっつけられてたよ。



 俺を背中に乗せたマックスは、遠慮しているのか若干大人しめながら目の前に転がるオーロラハードロックを大喜びで叩きまくっていた。

 おかげで周囲はもうゴロゴロと音を立ててものすごい勢いで転がるオーロラハードロックだらけで、怖くて立っていられる場所なんて無い。

 しかしそんな中でもハスフェル達は当然のようにそれらを平然と避けながら、こちらも巨大な槍やハンマーを嬉々として操り、転がるオーロラハードロックを次々にジェムと素材に変えていった。

 オンハルトの爺さんは、少し離れた場所で長い鞭を振り回してあちこちに転がるオーロラハードロックを自在に操って互いにぶち当たらせては従魔達にトドメを刺させていた。

「あはは、俺が地面に降りてたら、間違いなくあいつらに張り倒されて吹っ飛んでいそうだ」

 苦笑いして一つ深呼吸をした俺は、こっちにゆっくりと転がってきた大きめの岩の塊に、また力一杯ミスリルの槍を突き立てたのだった。







「ふう。そろそろ一面クリアーかな」

 ようやくオーロラハードロックの出現が目に見えて減ってきたので、そう言って戦う手を止めた。若干息が上がって腕が痛いよ。

 一旦ミスリルの槍を収納してから、何とか息を整えながら顔を上げて周囲を見回した。

「いやあ、何というか凄い量だなあ。これってよく考えたら死体が残らないから平気で見ていられるけど、これで倒したのが全部そのまま残ってたら……悪夢以外のなにものでもないよな。ううん、異世界万歳だな」

 若干遠い目になってそう呟く。

 だって、地面にはもう足の踏み場もないくらいに、巨大なジェムと謎の素材が地面を埋め尽くしていたんだよ。

 ハスフェル達のスライム達も総出でジェムと素材を集めると、さすがにあっという間にすっかり綺麗になって、何もいなくなった岩場が広がっていた。

 どうやら次が出るまでには少々タイムラグがあるみたいだ、



「回収ご苦労さん。それで、あのオーロラハードロックの素材って何なんだ? 何か半透明になった石っぽかったよな。何かの鉱石か?」

 ジェムが多少の差があるが完全な透明の六角柱なのに対し、あちこちに転がってた謎の素材は、明らかに色も形も違っていた。

 最初に見たのは、半透明っぽくて一部が透明な立方体っぽい石だったし、足元にさっきまで転がってた大きな素材は、明らかに赤っぽい色の八面体をしていたし、何度も濃い水色っぽいのや黄色っぽいのも倒した時に出たのを見ているけど、これも色だけじゃなくて形も様々だったよ。

 同じジェムモンスターから出る素材に種類があるって言うのも、何だか不思議だ。



 俺の呼びかけに答えて、回収が一段落したアクアが代表でマックスの背中に跳ね飛んで上がってきた。

「えっとね、素材は宝石の原石だよ」

「へ? 宝石の……原石?」

「そうだよ〜〜! かなり色んな種類があるみたいだね。集めてて楽しかったよ!」

 得意気に伸び上がってそう答えるアクアを見て、俺はもう笑うしかなかった。

「さすがは職人の街がすぐそばにある飛び地だよ。出てくる素材が宝石の原石! うん、これは俺には必要ないから、サクッと買い取ってもらおう。あれ? クーヘンのところへもちょっとくらい持っていってやるべきかな?」

 悩んでいると、いつの間にかシャムエル様がマックスの頭の上に戻ってきていて俺を振り返った。

「これはバイゼンヘ持っていく方がいいね。クーヘンの里でなら宝石の原石を磨ける職人はもちろん大勢いるけど、クーヘンもお兄さんもその息子さんも、原石からの磨き出しはやらないねえ。ちょっと形を整える程度。だから、ここまでの原石はちょっと彼らには扱えないと思うよ。まあ、余裕があればこっちで磨いて宝石にしてもらって、粒の状態で持って行ってあげれば? それなら装飾品に使えると思うからきっと喜ぶよ」

 成る程。俺は一緒なんだと思っていたけど、原石から宝石を磨き出すのと装飾品そのものを作る技術は別物らしい。

 納得した俺は、とりあえず冬の間に幾つか宝石の状態にしてもらってクーヘンへの土産にすればいいかな。なんて、のんびり考えていたのだった。

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