いつもの朝の光景と従魔達の噂話
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん……起きるよ……ふああ〜〜」
翌朝、いつものモーニングコールチーム総出で起こされた俺は、なんとかそう返事をしてニニのもふもふの腹毛に顔を埋めた。
「ああ、この腹毛が誘惑するんだよ〜〜」
笑ってそう言いながら、もふもふを満喫する。
「むくむくもいるもんな」
手を伸ばして、起き上がったマックスの首にも抱きつく。
「おはようございます、ご主人」
嬉しそうに鼻で鳴いたマックスが、俺の顔をベロベろと舐める。
「どわあ〜だからそれはやめろって!」
慌てて口元を押さえて、びしょ濡れにされるのをなんとか回避した。
「ええ、今日は出番無しなの?」
「ねえ、せっかく張り切って待ってたのに〜」
ソレイユとフォールの拗ねたような声が聞こえて、顔を上げた俺は手を伸ばして二匹の顔もおにぎりにしてやったよ。
「ごめんよ〜でももう起きたから、今朝の追加のモーニングコールは無しでいいぞ」
「ええ〜そんな〜〜」
「駄目ですご主人。私達の大事な仕事を取らないでくださいよ〜」
「ええ、起こされて起きたのに、それで文句を言われるなんて理不尽だぞ〜」
物凄い音で喉を鳴らすソレイユとフォールを笑って何度も交互におにぎりにしてやる。
それから、順番に全身撫でまくりの揉みくちゃフルコースでおもてなししてやった。
「ご主人、凄腕〜〜」
「もう蕩けちゃったわ〜〜」
マックスの腹の上に二匹並んで転がり、うっとりと二匹揃ってそんな事を言ってる。
「ううん、聞きようによっては非常に危険なセリフだなあ」
笑ってそう言い、ベッドから起き上がって思いっきり伸びをする。
「ううん、今日もいいお天気みたいだ」
庭では、ベリー達が気持ち良さそうに日向ぼっこをしている。
「おはようベリー」
「おはようございます。相変わらず仲がよろしいようで」
笑ったベリーにからかうようにそう言われてしまい、俺はまだマックスの上で並んで蕩けている二匹を振り返った。
「モテる男は辛いねえ。だけど、残念ながら同族にモテた試しはないんだけどさ」
そう言って振り返ろうとしてそのまま膝から崩れ落ちる。
自分で言って思いっきり凹んだよ。うん、やめよう。朝から自虐ネタは駄目だ。精神衛生上良くないよ。
苦笑いしてため息を一つ吐いて立ち上がってから水場へ向かう。
豪快に水飛沫を上げて顔を洗い、手や首元も拭って濡らす。
「ご主人綺麗にするね〜〜!」
いつもの如く、サクラが元気よくそう言って跳ね飛んできて一瞬で包み込んでくれる。
解放されたらもう、汗のあとも無くさらっさらになってる。
「相変わらずいい仕事するねえ。ほら、行っておいで」
サクラを抱き上げておにぎりにしてから水槽に放り込んでやり、次々跳ね飛んでくる他のスライム達も順番におにぎりにしつつ水槽へ放り込む。
賑やかに水飛沫を上げて遊ぶスライム達にお空部隊が飛んでいき、マックスをはじめとした狼軍団も大喜びで走っていく。
バシャバシャと大はしゃぎしているお空部隊を見てから、俺はベッドに戻って座る。
そのまま手早く身支度を済ませたところで、ちょうどハスフェルから呼び出しが入る。
『おはよう、もう起きてるか?』
『おう、おはようさん。今、身支度が終わったところだよ。だけど従魔達が水浴びしてるから、あとちょっとだけ待ってやってくれるか』
『了解だ。じゃあ準備が出来たら出て来てくれ』
笑ったハスフェルの気配が途切れ、俺も小さく笑って水場を振り返った。
「おおい、そろそろ終わりにしてくれよ。広場へ朝飯食いに行きたいんだけどなあ」
「はあい、もう終わりま〜す!」
揃って元気な声が聞こえた後、スライム達が水槽から出て来てびしょ濡れの従魔達をあっという間に綺麗にしてくれた。それから水浸しになっていた周囲の床も、あっという間に綺麗にしてしまった。
ううん、相変わらず良い仕事するねえ。まあ、水浸しにしたのは自分達なんだけどさ。
「ええと、屋台で朝飯食って、それから俺は朝市へ買い物に行くけど、お前らはどうする?」
部屋に戻ってきた従魔達を順番に撫でながら尋ねる。
マックスは完全について行く気満々で、スライム達が出してくれた鞍と手綱の前で良い子座りして待ってる。
一方ニニとカッツェは行く気ゼロみたいで、揃ってベッドに転がり早くも熟睡体勢だ。
他の子達もそれぞれ好きに寛ぎ始めたので、どうやら一緒に行くのはマックスとファルコだけみたいだ。
「そっか、じゃあゆっくりしててくれて良いからな」
手を伸ばしてニニを撫でてやってから、ハスフェル達に念話で連絡して廊下へ出るための扉を開く。
「いってらっしゃ〜〜い」
何故だか揃って見送ってくれる従魔達に手を振り返して、マックスと一緒に廊下へ出て行ったのだった。
「ご主人に、いっぱい甘えてくれば良いんだわ」
「ご主人を乗せるのは自分の役目だっていつも張り切って言ってたのに」
「用済みで捨てられるかもしれないって、一瞬だけでも思ったなんて可哀想すぎるわよね」
「だけどご主人も迂闊よねえ」
「よりにもよって、マックス達の目の前で違う乗り物に乗って大喜びするなんてねえ」
「酷いわよねえ」
「ねえ〜〜〜!」
実は俺が出て行った部屋では、従魔達がそんな事を話していたのだとシャムエル様からこっそりきかされた俺は、もうなんだかマックスに申し訳なくて、もう一回マックスに本気で謝ったのだった。




