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お疲れ様と夕食準備

「おいおい、一体全体何事だ? 今のは従魔に襲われた訳ではないのだろう?」

 ガンスさんが、恐る恐ると言った感じにそう尋ねてくる。

「あはは、そう見えましたか? 大丈夫ですよ。ちょっと従魔達が寂しがってたので、いつもよりもちょっと激しめのスキンシップタイムだったんです」

 笑って肩を竦める俺を見て、ギルドマスター達は明らかに安堵したみたいに見えた。

「いやあ、いきなり従魔がケンさんを押し倒したもんだから、本気で驚いたぞ」

「だけどまあ、ハスフェル達が笑って見ていたから、大丈夫かと思って黙って見ていたんだが……」

「あの大きさの従魔にのし掛かられて平然としていられるとは、いやあ見事だなあ」

「全くだな。あの巨大な従魔を完全に従えている自信があるからこそ出来る事なのだろうさ」

「確かに見事だったな。成る程。最強の魔獣使いの名は嘘では無いようだな」

 腕を組んで感心したように頷き合っているギルドマスター達を見て、俺達はもう顔を見合わせて笑うしかない。



「それでもう、お買い物は済んだんですか?」

 遠慮がちなマックスの言葉に、振り返った俺はもう一度マックスの首をしっかりと抱きしめてやる。

「おう、今日のところは、あそこに転がってるムービングログを一台だけ引き取って帰るんだよ。オンハルトの爺さんがシルヴァ達にも土産に買うんだってさ。ハスフェル達も買うらしいけど完全におもちゃ扱いだから、お前らの代わりになんて絶対にならないから安心してくれよな」

 改めてそう言い聞かせて、もう一度しっかりと抱きしめてやる。

「あの、もう一度磨いておきましたので!」

 広場に放置したままになっていたムービングログをスタッフさん達が、グラウンドのローラーみたいにハンドル部分を引っ張りながら持ってきてくれる。

「ああ、何度もすみません。じゃあこれは貰っていきますね」

 目の前に置かれたムービングログを改めて確認してから、そのままハンドル部分を鞄の中に押し込むみたいにして入れてやる。すると大きなムービングログは、そのまま鞄に吸い込まれるみたいに一瞬で収納されて消えてしまった。

もちろん収納したのは俺じゃなくてサクラの方だよ。



「うっわあ、見たか今の。あの大きさのムービングログを一気に収納しちまったよ」

「だけどあれ、収納袋か?」

「あんな形の収納袋は初めて見るけど……」

「いや、違うと思うぞ。って事はまさか収納の能力持ち?」

「うっわあ、最強の魔獣使いで大容量の収納の能力持ちとか。どんだけ有能なんだよ」



 スタッフさん達の俺を好き勝手に評する声を聞きながら、苦笑いした俺は鞄を背負い直してマックスの背に飛び乗った。

「さて、すっかり暗くなっちゃいましたし、腹も減ったので今日のところは宿泊所に戻りますね。お願いしている家の件と、防具の職人さんを紹介の件、どうぞよろしくお願いしますね」

「おう、任せてくれ。それから、メタルブルーユリシスの初回の買い取り分、支払いの準備が明日には整うから各自の口座に振り込ませてもらうよ。次は素材の買取をお願いしたいんだが構わんかな?」

「ああ、それならいつでも言ってください。じゃあ明日にでも、またギルドに顔を出しますね」

「待っとるよ。それじゃあ」

「はい、ありがとうございました」

 見送ってくれたギルドマスター達やスタッフさん達に手を振り返し、それぞれの従魔に乗った俺達はのんびりと宿泊所へ帰って行った。



 道路にはぼんやりと街灯が灯り、すでに日も暮れて真っ暗になった街を優しく照らしている。

 何軒も並んだ居酒屋らしき店からは、賑やかに乾杯する声があちこちから聞こえている。

「腹減ったなあ。夕食は何にするかね?」

 昨日のメタルブルーユリシスの素材の引き渡しはかなり疲れたので肉を焼くだけにしたけど、今日はまだ夕食にはちょっと早い時間だし、何か作っても良い。

「ちょっと冷えてきたし、よし、鍋にしよう。肉は何を使おうかなあ」

 のんびりと歩くマックスの背に揺られながら、俺は夕食のメニューをのんびりと考えていたのだった。






「お疲れさん、なんだか大騒動な一日だったなあ」

 苦笑いしてそう言い、部屋に戻るなり装備を全部脱いだ俺は、思いっきり伸びをしてからまずはサクラに綺麗にしてもらう。

 当然のように、全員が俺の部屋に集まって来ている。

「鶏肉で鍋にしようと思うんだけど、それで構わないか?」

「おお、良いねえ。ちょっと冷えてきたから、鍋が美味い季節だな」

 笑ったハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも嬉しそうに頷いてる。

「じゃあ素材を切って煮込むだけだから、ちょっとだけ待っててくれよな」

 そう言って、ハイランドチキンのもも肉の塊を取り出す。

「今回はシンプル水炊きにして、師匠特製ポン酢とごまだれで食べれば良いな」

 巨大な寸胴鍋を取り出し、まずはたっぷりの水を入れてそのまま簡易コンロに火をつける。



「沸くまでの間に準備するぞ。それじゃあこのモモ肉を全部、これくらいの一口サイズに切ってくれるか。骨や硬そうな筋があったら取ってくれよな」

「はあい了解です!」

 アルファとベータが元気よく返事をして合体し、そのままもも肉の塊を丸ごと飲み込む。

 ハイランドチキンは肉の塊が大きいので、切るときは複数で手分けしてやってるみたいだ。

「じゃあこっちも切ってくれるか」

 待ち構えていたスライム達に、順番に白菜もどきや白ネギもどき、それから豆腐や厚揚げも切り分けてもらってお皿に並べていく。

「キノコも入れよう、良い出汁が出るからな」

 そう呟いて取り出したしめじもどきと舞茸もどきは、最初の一塊の石突きを取って手で裂いて見せて、残りはスライム達にやってもらう。

 先を争うようにしてお手伝いしてくれるスライム達を見て和みながら、沸いてきた鍋にハイランドチキンをまずはどんどん入れて行ったのだった。

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