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夕食は肉だ〜!

「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャジャン!」

 シャムエル様の久しぶりの味見ダンスは、カリディアとのダブルダンスだ。

 お互いの肩に短い手を回して肩を組んだ状態で、シャムエル様の右手にはいつものお皿が、カリディアの左手には何故か味噌汁用のお椀がある。

 仲良く交互に同じステップを踏みながら、上下にお皿を振り回してくるりくるりとその場で回転している。

 最後はお皿とお椀を頭上に掲げてきめのポーズだ。ふんわり尻尾が仲良く絡めてハート型みたいになってる。

「ブラボーブラボー!」

 そう言いながら笑って手を叩いてやると、互いの肩から手を離して揃って見事なとんぼ返りを切ったシャムエル様とカリディアが、嬉しそうにハイタッチをしていた。

「ではお願いします!」

 お皿を差し出されて苦笑いしながら受け取る。

「で、何をどれくらい欲しいんだ?」

 カリディアが遠慮がちに差し出したお椀を受け取り、先に味噌汁をスプーンですくいながらそう尋ねる。味噌汁の具も選んで大きめの豆腐やワカメを入れてやる。

「で、肉はどれくらい?」

 ナイフとフォークを片手に聞くと、目を輝かせながらお皿のすぐ横まですっ飛んできてほぼ半分に近い位置で切る仕草をした。



 おう、マジで半分持っていかれた。



 まあ、いざとなったら串焼き肉でも出しておこうと諦め、筋の無さそうな良い肉の側を大きく切って丸ごとお皿に乗せてやる。ソースは、醤油と玉ねぎの和風ステーキソースをこれもたっぷりと絡めてやる。

 これ、絶対にシャムエル様がソースまみれになる展開だよなあ。まあ、自分で洗浄出来るんだから好きにすればいいか。

「こっちも半分ね。野菜は適当にお願いします!」

 山盛りのフライドポテトは予想通りに半分は自分の分らしい。そしてやっぱり肉食リス。

「ダメ、野菜も食いなさい」

 そう言って野菜各種も綺麗に盛り合わせてやる。

「おにぎりは、半分をここにお願いします! それから冷えたビールはここにお願いね」

 おにぎりを乗せるスペースが無くなってしまいどうしようか考えていると、一回り小さなお皿がさっと取り出されて差し出される。横にはいつものビール用のグラスも出てくる。

「了解、じゃあおにぎりはこっちだな」

 笑って二個ずつあるおにぎりを取り分けてやった。

 うん、おにぎりはちょうどいい量になったぞ。

 そして、ビールもたっぷりとこぼさないように入れてやる。

「お待たせしました。はいどうぞ」

 目の前にお皿を並べてやると、もふもふの尻尾が一際大きくなる。

「うわあい美味しそう。では、いっただっきま〜す!」

 ご機嫌でそう叫んだシャムエル様は、当然のようにお肉の塊に頭から突っ込んでいった。

「おいおい、せっかくの綺麗な毛皮がソースまみれじゃんか」

 何故か後頭部にまでベッタリと張り付くステーキソースを見て、笑いながらそっともふもふしっぽを突っついてやる。

「おお、指が全部入ったぞ」

 以前、ニニの頬毛に垂直に手を突っ込んで大喜びしていた業務スーパーのスタッフのガーナさんの気持ちが分かる気がする。

 これは良い。

「何してるの?」

「イエナンデモナイデス」

 肉を掴んだままのシャムエル様が気配を感じて振り返りかけたので、俺は慌てて右手を引っ込めたよ。危ない危ない。

「変なの。まあいいや。今日も焼き加減はバッチリだね」

 あっという間に半分くらいになった熟成肉のステーキを置いて、ポテトをかじり始めるシャムエル様を見て。俺も自分の食事をする事にした。



「うん、確かに焼き加減バッチリだ。我ながらグッジョブだね」

 たっぷりのステーキソースに絡めながら少し小さめに切った肉をよく噛んで食べる。

 合間におにぎりをはじめ他のサイドメニューも楽しみ、冷えたビールもぐいっと一息。

 ああ、至福の時間だね。



「ごちそうさまでした。意外に腹一杯になったなあ」

 肉の量は少ないかと心配したんだけど、意外にこれくらいの方が俺的には良い感じだ。

「まあ、あいつらの食う量がおかしいんだよな。あっちと比べちゃ駄目だって」

 小さく笑ってそう呟き、2本目の冷えたビールを冷蔵庫から取り出して開けたのだった。




 食事の後は、そのまま当然のように酒盛りに突入して俺は黒ビールを、ハスフェル達はブランデーの良いのを開けたらしく、美味しい美味しいと三人揃って大喜びしていた。

 話題はどうしてもここバイゼンでの事になる。

 今日の買取価格が一体どれくらいの金額になるのか皆でひとしきり笑い合い、バイゼンでのこれからが良いものになるように願って皆で何度も乾杯した。




「さてと、そろそろ部屋に戻って休むよ。じゃ明日は、ケンの装備と家の相談でまた商人ギルドだな」

 立ち上がって大きな伸びをしたハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも立ち上がる。

「ご馳走さん。飯も酒のつまみも美味かったよ」

「ご馳走さん。それじゃあな」

 三人が手を振って部屋を出て行くのを見送り、手早く机の上を片付けた俺は、大きな欠伸をした。

 実を言うと、ちょっと酔いが回ったみたいでさっきから眠くて仕方がなかったんだよ。

「じゃあ、あとはこのままでいいな。それじゃあ俺ももう休もう。サクラ、念の為綺麗にしてくれるか」

「はあい、じゃ綺麗にしま〜す!」

 跳ね飛んできたサクラが、そう言って一瞬で俺を包んでくれる。

「相変わらず、良い仕事するなあ」

 手を伸ばしておにぎりにしてやり、半分酔っ払った良い気分のままに従魔達を撫でたりもんだりもふもふしたりする。

「ううん、セーブルの硬めの毛皮も良いねえ」

 そう言いながら、のしかかるみたいにセーブルの体に抱きつく俺は、多分どこから見てもただの酔っ払いだろう。その認識で間違ってないよ。本当にただの酔っ払いです。

「ご主人、ほらこっちこっち」

 ベッドに先に横になってるニニの声に、俺は勢いよく顔を上げて立ち上がり、ベッドに向かって突進していった。

「定位置に到着〜〜!」

 そのまま勢いよくベッドに飛び込み、同じく隣で横になっていたマックスとの隙間に見事にすっぽりと収まる。

「ああ、このもふもふに勝るもの、無しだって……」

 フランマがこれまた勢いよく俺の腕の中に突っ込んできて、そのまま抱きつく。

 そう呟きながら柔らかな毛に顔を埋めたところで、眠りの海に沈没した俺の記憶は完全に途切れた。



 いやあ、いつもながらもふもふの癒し効果ってすげえ。

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