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昼食と引き渡しの続き

「ううん、肉もりもりのピザ美味〜い!」

 三つ目のピザを食べながら、俺はそう言って口元を拭った。

 正直言うと冷えたビールが飲みたいんだけど、さすがにまだお仕事中のギルドの方々を前にして俺達だけビールを飲む訳にもいかず、諦めて大人しく用意されていたジュースを飲んだよ。

「ううん、このチーズの絡んだ肉って美味しい〜!」

 そして俺のピザから一番大きな肉の塊を強奪したシャムエル様は、ご機嫌で自分の顔より大きな肉の塊を嬉々として齧っている。

 べ、別に良いんだけどさあ……最近味見のダンスも無くなってる気がするんだけど、俺の気のせいか?

 そして俺達がピザを平らげる横で、先に食事を終えた早番のスタッフさん達が、また空になった例の箱をどんどん運び込んで来ていて部屋の隅に積み上げている。

「どれだけあるんだよ。あの箱」

 半ば呆れながらそう呟くと、少し離れたところで食ってたギルドマスター達が揃って振り返った。

「そりゃあ、街中の工房から空いた箱を全部持って来させてるからな。まだまだあるから遠慮なく出してくれていいぞ」

 笑いながらも目がマジな冒険者ギルドのギルドマスターのガンスさんにそう言われて、もう俺は乾いた笑いしか出ないって。



『ええと、ベリー、何処にいますか?』

 これは、後でベリーの分を追加で出せば、何故あの時に一緒に出さなかったって絶対言われる。多すぎて一度に渡せなかったって事にしないと色々後で言い訳が大変そうだ。

 そう思った俺は、こっそりベリーに念話で呼びかけた。

『はい、どうしましたか?』

 すぐに反応があり、その直後に開いたままの扉から揺らぎが入って来るのが見えて、俺はもう少しで食ってたピザを噴き出すところだったよ。危ない危ない。

『あはは、そこにいたのか。ええと、ベリーが持ってるメタルブルーユリシスの翅ってどれくらいある?』

 トークルーム全開状態で話しかけているので聞こえているハスフェル達がちらっと横目で俺を見たが、小さく笑ってそれぞれ知らん顔でピザを食ってる。

『いやあ、めっちゃ期待されてるみたいだからさ。もうまとめてありったけ在庫を見せて、全部買い取ってもらうかどうかの判断は向こうにしてもらおうと思うんだよ。で、ベリーとフランマが持ってる素材があとどれくらいあるか知りたかったんだよ』

『フランマの分もまとめて私が持っていますよ。そうですね、待ってください。ちょっと数えましょう。総数で言えば……』

 しばしの沈黙の後、何故だか楽しそうな声が聞こえた。

『総数で言えば、ケンが持ってる数の軽く六倍はありますね』



「げふう!」

 予想以上のものすごい数に、飲みかけていたジュースを喉に詰まらせて盛大に咽せる俺。

「おいおい、何やってるんだよ」

 わざとらしい声と同時に、ハスフェルが手を伸ばして咳き込む俺の背中を軽く叩く。

『ご苦労さん。総数だけは伝えて後はどうするかは向こうに決めさせろ』

 笑ったハスフェルの念話と、ギイとオンハルトの爺さんの笑う声が聞こえた俺は何とか顔を上げた。

「はあ、びっくりした」

 態とらしくそう言って軽く咳払いをしてから、サクラに鞄から出て来てもらってこぼしたジュースを綺麗にしてもらう。

「ほう、スライムにそんな事が出来るのか」

 サクラに気がついたガンスさんの言葉に、俺はサクラを撫でてやりながら振り返った。

「スライムはすごく働いてくれる有り難い従魔ですよ。俺はもう、こいつら無しの生活なんて考えられませんね」

「ほう、それほどか。具体的には何をしてくれるんだ?」

「そうですね。旅をしてて有り難いのは、こいつらがいると今みたいに汚れを綺麗にしてくれるって事ですかね。教えれば簡単な作業の手伝いくらいはしてくれますから、テントを張る時に柱を支えてくれたりペグを打ってくれたり、複数いれば寝る時にはくっ付いてベッドにもなってくれますよ」

 そこからハスフェル達も加わり、ハンプールの街で大騒ぎになったスライムトランポリンの話まで出て、今度ここでもやってみる事になった。

 特に冬の間は、雪が降ったら一部の雪に強い冒険者以外は狩りもままならず退屈するらしく、評判が良ければ冬の間の興業として定期的にやってほしいとまで言われた。

「じゃあ、それはまた後日改めて話しましょう。とりあえず先に渡しちゃいましょうかね」

 スタッフさんが、ハスフェル達にメタルブルーユリシスの翅の預かり票を渡しているのを見て、俺は残りのジュースを飲んで立ち上がった。

 机の上に少しだけ残っていたピザは、俺が話をしてる間にハスフェル達が綺麗に平らげてた。

 お前ら相変わらずよく食うなあ。

 そして、話をしている間にベリーは鞄から出て来ていたアクアにメタルブルーユリシスの素材を、サクラにはジェムを渡してくれたらしい。



「それじゃあ出しますよ。言っておきますが本当にとんでもない数がありますので、無理だと思ったらそこで止めてくださいね」

 にんまりと笑った俺の言葉に、めっちゃやる気になったスタッフさん達とギルドマスター達が一斉に頷く。

「おう、そこまで言うなら出してもらおうじゃないか。ギルド連合が責任をもってありったけ買わせてもらうからな」

 胸を張ってそう言われて、俺は満面の笑みになった。

「了解です。じゃあ、ギルド連合のお財布の底力を見せていただきましょう」

 足元に置いてあった間にこっそりアクアとサクラが戻った鞄を持ち上げた俺は、そう言ってメタルブルーユリシスの翅を取り出し始めた。

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