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レスタムの街再び

マックスは、ついてくる事にしたのに、そこの部分を訂正し忘れていました。

すみません。一部の文章を訂正しました。

「あ、レスタムの街が見えて来たぞ!」

 街道から少し離れた草原を並んで走りながら、俺はようやく到着した懐かしい見覚えのある街の城壁に、思わず声を上げた。


 樹海を出てからここまでの間は、ハスフェルにジェムモンスター狩りだけで無く、野生動物が住んでいる場所や、注意した方が良い野生動物についてもかなり詳しく教わった。おかげで、この世界の野生動物については、かなり詳しくなったよ。

 まあ、マックスやニニがいれば、ほぼ確実に安全だって事も分かったけどね。

 今更だけど、従魔って本当に有り難いよな。



 城壁に近い所で、俺達は街道に入った。

 そして、当然だが周りから一気に人がいなくなる。残ったのは武器を装備している冒険者達だけだ。

 で、当然彼らは全員揃って武器を構える。


 うう、ちょっと離れていただけで、もう忘れられてるのかよ。


「はい、注目! こいつらは、俺の従魔だから誰も襲ったりしません! 冒険者諸君は、速やかに武器を収めなさい!」

 マックスの背の上で、大きく手を叩いて注目を集めてから、俺はもうヤケになって大声で叫んだ。

「言っとくけど、俺もこいつも、上位冒険者だからな!」

 開き直って叫んだその言葉に、明らかに冒険者達が騒めく。

「おお、ケンじゃないか。戻って来てくれたのか?」

 少し離れた場所から、大声でそう言いながら駆け寄って来てくれたのは、レスタムの街で世話になった上位冒険者のヘクターだった。

「ハスフェルじゃないか! ええ、お前も魔獣使いだったのかよ?」

 どうやら彼らは顔見知りだったようで、シリウスの背から飛び降りたハスフェルとヘクターは、嬉しそうに話を始めた。そして、それを見た他の冒険者達も、納得したようで武器を収めて。それぞれ街へ向かっていった。


「ヘクターと知り合いだったとは驚きだね。だけど、とりあえず城門が開いているうちに街へ入ろう。話はそれからだ。街を目の前にして野宿するのは、悲しすぎるよ」

 俺の言葉に吹き出した二人は、笑って頷いた。ハスフェルはシリウスの背に戻り、ヘクターは後ろを振り返った。

「お前らも、彼らみたいになれるように頑張れよ」

「はい!」

 元気な声で、揃って返事をしたのは、まだ若そうな冒険者達が十人ほど。そして彼らの後ろでは、術師のフランツが笑って手を振っていた。

「今回は、またずいぶんと大人数のパーティーなんだな」

 手を振り返しながら不思議に思ってそう言うと、へクターは、笑って彼らを見た。

「こいつらは、登録一年未満のいわば新人冒険者達でね。ギルドの依頼で、ジェムモンスター狩りに連れて行ってて、戻ってきた所さ」

「へえ、そんな依頼もあるんだな」

 感心していると、引率は大変なんだと小さな声で愚痴られた。まあ確かに、あんな若い連中を集めて教えるのは、聞いただけでも大変そうだ。

「ご苦労さん。頑張れよ」

「お前! 他人事だと思いやがって!」

「俺には新人教育なんて無理だって。まだまだ勉強中なんだからさ」

 誤魔化すようにそう言うと、ヘクターは納得したのか笑って肩を竦めた。

 そのまま俺達は、のんびりと話をしながら街へ入るための行列に並んだ。


「しかし、またデカいのが増えているな。これもテイムしたのか?」

 ハスフェルが乗っているシリウスを見ながらそう言って笑っているが、若干腰が引けている。まあ、確かに間近で見たら怖いだろうけどね。

「まあ、色々あってね」

 ここも誤魔化しておく。

「しかし、さすがは樹海出身者同士だな。やっぱり知り合いだったんだな」

 ヘクターにそんな事を言われて、俺はなんと答えようか考えた。

「ああ、直接の知り合いでは無いんだがな。俺の昔馴染みを通じて知り合ったんだ。丁度足になる従魔が欲しいと思っていたから、彼に頼んで譲ってもらったのさ」

 胸元の、俺の紋章を見て、ヘクターは納得したようだった。


 しばらく並んで、日が暮れる前に街へ入る事が出来た。

「あ! 戻って来てくれたのか! おかえり」

 顔馴染みになっていた城門の兵士にそう言われて、俺はなんだか嬉しくなった。

 ハスフェルも、当然のようにギルドカードを渡してそのまま通って行く。

「久し振りだな。やっぱりケンと知り合いだったんだな」

 ハスフェルとも親しげに話す、その兵士を見ていて感心した。彼は、どうやら城門を通る殆どの人の顔を覚えているようだ。

 営業だったけど、実は人の顔と名前を覚えるのが苦手だった俺は、すぐに顔と名前が一致する人の事を本気で尊敬する。あれだって、一種の特殊能力だよな。



 久し振りの大注目を集めながら、取り敢えず宿を確保するためにまずはギルドへ向かった。

「おお! ケン、戻って来てくれたのか! ハスフェル! そうか、やっぱり知り合いだったんだな」

 飛び出して来たギルドマスターとハスフェルは、またしても親しげに話を始め、俺達も一緒にそのまま宿泊所へ向かった。


 おい、ギルドマスター! 部屋を借りる手続きとか、しなくていいのか?


 しかし、俺の突っ込みは無視されて、そのまま通された部屋は、庭付きの以前も借りた部屋だった。

 ハスフェルは、同じく庭付きの隣の部屋を使うらしい。

 俺達に鍵を渡して、ギルドマスターは金を受け取らないまま本部へ戻って行った。


 慣れた広い部屋で好きに寛ぐマックス達を見て、俺もひとまず鞄を置いた。

「どうする? 先に革工房へ行くか?」

「ああ、そうだな。まずは話だけでもしておくべきだろうからな」

 立ち上がった俺達を見て、椅子の背に留まっていたファルコが、羽ばたいて俺の肩に留まった。

何だか、ファルコが妙に嬉しそうなのは何故だ?

「やっぱり、行きます」

それを見たマックスが、慌てたように起き上がってそう言い、ニニは転がったまま尻尾で合図をしていた。ラパンとタロンは、仲良く並んで転がっている。

ベリーは勝手に窓を開けて庭に出て行ったようだ。

「そうだな、じゃあちょっと行ってくるよ」

 笑って寝ているニニを撫でてやり、俺達はファルコとシリウス、マックスを連れて、ぼんやりとした光を放つ街灯の並ぶ通りを歩いて、まずは革工房へ向かった。



 到着した革工房は、店を閉めようとしている所だった。

「おや、ケンじゃ無いか。もう戻って来たのか。おかえり」

 顔を上げたフォルトのおっさんに嬉しそうにそう言われて、俺は隣にいるハスフェルの背中を叩いた。

「知り合いなんだけど、彼の従魔にも鞍をお願いしたくて戻って来たんだよ。作ってもらったらどれくらいかかりそう?」

 おっさんは、驚きに目を見張っていたが、いきなり笑い出した。

「まさか、熊用の鞍が二つも売れるとはな。とにかく入りな。話は中でしよう。ああ、もちろん、その従魔も一緒にな」

 満面の笑みのおっさんの言葉に、俺達も頷き、後をついて店に入って行った。

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