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バイゼン目指していざ出発!

「さてと、それじゃあそろそろ出発するか」

 食事を終え、綺麗に片付けたリビングを見回した俺の言葉に、ハスフェル達も揃って頷き立ち上がった。

「そう言えば、ここの別荘の鍵をマーサさんに預けてから行かないと駄目だよな。このまま持って出たら、マーサさんに委託管理した意味無くなるって」

 マックスに鞍と手綱を取り付けながらふと思いついて手を止める。

 うっかりこのまま出掛けそうになってたけど、鍵を渡してから行かないとマーサさんがここに入れないって。

「ああ、それなら別荘地の入り口に彼女の経営する不動産屋の事務所があるから、そこに預ければいいって聞いたぞ」

 同じくシリウスに鞍を取り付けていたハスフェルがそう言い、自分の騎獣を外の厩舎へ入れているギイとオンハルトの爺さんが手を挙げて先に出ていく。

「そうか、別荘地の近くに事務所があるのか、それなら寄ってからそのまま出発出来るな」

 綺麗に片付いた部屋を見回し、少し考えて風呂用の部屋へ行き、部屋に置いたままになっていた風呂道具一式を収納しておく。もしもバイゼンで良い物件が見つかれば、すぐに風呂に入れるようにする為だ。



「お待たせ、それじゃあ行こうか」

 急いで部屋に戻り、待っていてくれたハスフェルや従魔達と一緒に外へ出る。

 ギイとオンハルトの爺さんも厩舎から出て来たのでこれで全員集合だ。ベリー達もいる事を確認してから扉の鍵を閉める。

「ううん、改めて見るとやっぱりでかいなあ。これが俺の家だなんて、どう考えても夢みたいだ」

 小さく笑ってそう呟き、マックスの背に跨る。

「よし、じゃあ出発するか」

 顔を見合わせて頷き合い、そのまま坂道をゆっくりと降りて行った。



「ああ、ケンさん。もう出発ですか?」

 ちょうど事務所に行った時、マーサさんがいてくれて彼女に鍵を渡せた。

「ええ、本当は朝から出発の予定だったんですけど、昨夜は酒盛りになっちゃいましてね。目が覚めたら思いっきり寝過ごしてました」

 誤魔化すように笑ってそう言い、一緒に出て来てくれたマーサさんに手を振ってマックスに跨る。

「それじゃあお気をつけて。来年の春の早駆け祭りでお会いしましょう」

「お気をつけて!」

 事務所にいたスタッフさん達も出て来て見送ってくれている。

「はあい、それじゃあまた! クーヘンにもよろしく!」

 笑顔で手を振り返し、俺たちはそのままゆっくりと広い別荘地の道を進んで行った。



「気をつけて!」

「おかえりをお待ちしてますね〜!」

 城壁を出る際にも、兵士達に笑顔でそう言われてとりあえず愛想笑いで手を振り返しておく。

 あちこちからかけられる声にもとりあえず手を振っておき、城壁を出て街道を早足で逃げるみたいにして進んだ。

「じゃあそろそろ逃げるとするか」

 しばらく街道を進み、人が少なくなって来たところで街道から外れて横の草原を一気に駆け抜けて行く。

 街道から歓声が上がったけどもう振り返らないよ。



 そのまま近くの森の中へと続く獣道を走り、さらにもう一つ森を抜けて広い草原へ出た。もうあたりには人の気配は一切無い。

 一緒に駆けて来ていたベリー達も、今は姿を表して一緒に走っている。

「この少し行った先が、例の誰かさんが死にかけたあの地下迷宮があった場所だよ。残念ながらまだ迷宮の入り口は塞がったままみたいだけどな」

 ハスフェルの笑った声に俺は慌てて振り返る。

「いや待て。残念ながらって何だよ。もしも口が開いてても、俺は行かないぞ。俺は、バイゼンヘ行くんだからな!」

 笑いながら顔の前で思いっきり大きくバツ印を作ってそう叫ぶ。

「そうか、そりゃあ残念だよ。だけどバイゼンにもここほどでは無いが、中々に楽しい地下迷宮があるからな」

「確かにあそこも面白いよな」

 ハスフェルの言葉に、ギイも笑顔で頷いている。

「そ、装備が完成してからな」

 一応念を押しておく。もしも行くとしても装備を一新してからだって。

「それより昼飯はどうする? ここで食べるか? それともどこか食べられそうな場所があるか?」

 無理矢理話を変えると、ハスフェル達が揃って笑っている。

 いや、もうマジで地下迷宮には当分入りたくないって。



「この先に転移の扉があるので、まずはそこへ行こう。近くに水場があるからそこで先に飯を食って、それからバイゼンに近い21番の扉へ行けばいい」

「そうだな。21番の扉の外には、ちょっと飯を食える場所なんて無さそうだからな」

 ハスフェルの言葉に、ギイが苦笑いしつつ同意するように頷いている。

「ええと、その21番の扉のある場所って、一体どんなところなんだよ?」

 不思議に思いそう尋ねると、振り返った二人が顔を見合わせて地面を指さした。

「辺り一体が岩石地帯で家くらいある大岩がゴロゴロしてるんだ、要するに平な箇所が全くない。従魔達なら大丈夫だろうが、普通の人は絶対に入って来れない場所だよ。それこそ翼のある従魔か、マックス達くらいの運動能力のある従魔がいないと確実に遭難する」

「成る程、よく分かりました。翼のある従魔に心から感謝するよ。ちなみに、こっち側の転移の扉はどんなところにあるんだ?」

 周囲を見ても、転移の扉らしき箇所はまだ見えない。

「ああ、そこも森の深部だから地面からは行けないよ。俺達は大鷲を呼ぶから、お前はいつものように自分の従魔に乗せてもらえ」

 って事で、ハスフェル達はそれぞれ呼び出した大鷲に乗せてもらい、従魔達も巨大化したお空部隊が振り分けて乗せてくれた。

 俺も巨大化したファルコに乗せてもらい、マックスとニニの間に収まってアクア達に下半身をしっかりとホールドしてもらった。俺達の後ろにはベリーとフランマも一緒に乗っている。

 まあ、ファルコが一番巨大化すれば大鷲達と変わらない大きさだから、俺の翼のある従魔達の中では一番大きいんだよな。



「じゃあよろしくな」

 ふわふわの首元の毛を撫でてやり、改めて空を見上げる。

「では参りますね」

 そう言って大きく羽ばたいたファルコの体がふわりと浮き上がる。

 そのまま更に上昇して行くファルコの背の上から、俺は一気に広がった空からの景色に目を奪われていた。

「うわあ、気持ち良い」

 やや冷たい秋の風が吹き抜ける中を、お空部隊と大鷲達は、遥か先に見えた転移の扉の目印である光の柱目指して一気に加速して行ったのだった。



 さあ、今度こそ本当にバイゼンへ行くぞ!

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