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豪華な朝食の時間

「おはようございます。眠れましたか?」

「おはようございます。おかげさまでぐっすりでしたよ」

 ルーカスさんの声に、俺は笑って一礼した。



 二階にある大きな部屋に通された俺達が見たのは、いつも使っているであろうクライン族用の小さな机と椅子の横に、わざわざ俺達人間サイズの椅子と机が用意されている光景だった。

 その大きな机の上には、焼き立ての大きなソーセージが山盛りになった大皿と、ホットドッグ用の細長いパンが大量に積み上がっている光景だった。その横には、ケチャップやマスタード、刻んだ玉ねぎの入ったお椀も置かれている。なるほど、これで自分でホットドッグを作れって事だな。

 他には、生野菜と小さく刻んだ生ハムと同じく刻んだ茹で卵をマヨネーズで和えたサラダの大皿も置かれている。シンプルだけどこれもすごく美味しそうだ。

「飲み物は、コーヒーとリンゴのジュースがありますのでお好きな方をどうぞ。今スープを持ってきますからね」

 クーヘンの義理のお姉さんに当たるネルケさんの声に、俺達は顔を見合わせて嬉しそうに頷き合った。

「じゃあ遠慮なくいただきます」

 ハスフェルの声に、俺達揃って頭を下げてからそれぞれホットドッグを作り始めた。



「はいどうぞ。今日のスープは、かぼちゃのポタージュですよ。ルーカスが大好物なので、この時期にはよく作るんです」

「ちょっ、そんな事、別に今言わなくてもいいじゃないか!」

 焦ったルーカスさんの声に振り返ったネルケさんがすっごく良い笑顔になる。それを見て唐突に真っ赤になるルーカスさん。

 子供が成人してもまだラブラブってか。くう、リア充め!

 ……べ、別に泣いてなんかないぞ。




 用意されていた山盛りのソーセージやパンの量を考えるとなんだか申し訳なくなるけど、多分ハスフェル達にはこれくらいは必要だろう。

 嬉々として自分で大量のホットドッグを作っているハスフェル達を呆れたように見ながら、俺は早々に自分の分のホットドッグを確保して、かぼちゃのポタージュを用意してくれてあった大きめのお椀にたっぷりと入れた。

 同じく横に置いてくれてあった瓶から、カリカリに焼いたクルトンを数粒取って浮かべて、刻んだパセリを散らせば完成だ。

「ううん、これはめちゃめちゃ美味しそうだ。朝からインスタントじゃないポタージュって、なんだかすっごく贅沢な気分になるよ」

 コーヒーも用意してくれていた大きめのマグカップにたっぷりと注ぎ、席に戻ってさあ食べようと思って手が止まる。

 パリパリに焼かれた大きなソーセージが挟まれた大振りのホットドッグに、小さくちぎったレタスと具をマヨネーズと混ぜてある大盛りのサラダ。そして見るからに美味しそうなカボチャのポタージュとたっぷりのホットコーヒー。

 ちょっと考えてから、足元に置いた鞄に入っていたサクラから、こっそりいつもの祭壇用の敷布を取り出してもらい、自分の横の空いた場所に敷布を敷いた。

「せっかくだから、これはシルヴァ達にもお裾分けしないとな」

 小さくそう呟き、用意した朝食を綺麗に並べてカトラリーも置く。

「おはようございます。今朝は、クーヘンの義理のお姉さんのネルケさんが用意してくれた豪華な朝食だよ。少しですがどうぞ」

 手を合わせて目を閉じて、小さな声でそう呟く。

 いつもの収めの手が俺の頭をそっと撫でてくれたので顔を上げると、料理を順番に嬉しそうに撫で、それからネルケさんの頭をそっと撫でてから収めの手は消えていった



「え? 何かしら?」

 不意にネルケさんが驚いたように顔を上げて自分の頭上を見上げた。

「どうした?」

 隣に座っていたルーカスさんが、その声に驚いたように振り返る。

「いえ……今、なんて言うのかしら。誰かに……撫でられた気がしたんだけど……?」

「頭を?」

「ええ」

 顔を見合わせた二人は、揃って首を傾げて頭上を見上げた。

 当然だが二人の頭上には何も無い。

「虫でも飛んでいたんじゃないのか?」

 部屋を見回しながらルーカスさんがそう言い、また揃って首を傾げる。

「どうかしましたか?」

 態とらしく、今気づいた風に尋ねてやると、二人は揃って慌てたように首を振った。

「いえ、なんでもありませんよ。ではどうぞお召し上がりください」

 ハスフェル達も、大量のホットドッグを確保して席に戻ってきたので、俺は改めて手を合わせて目の前のホットドッグにかぶりついた。

「美味い。めっちゃジューシー!」

「おお、これは確かに美味いな」

 一口食べて、ソーセージのジューシーさに目を見張る。

 ハスフェル達も、一口食べるなりそう言って、後はもう黙々と食べ始めた。



 俺も二口目を食べようとしたその時、いきなり頬を叩かれて驚いて顔を上げると、大きなお皿を手にしたシャムエル様が、怒ったように俺の頬に持っていたお皿を水平に押し付けているところだった。

「痛い痛い、分かったからお皿を下ろせ」

 小さな声でそう言い、頬にめり込んでいたお皿を掴んで確保する。

「もう、せっかく味見ダンスを踊ってたのに、全然見てくれないし! 挙句に先に食べ始めちゃうんだから!」

 怒ったように足をダンダンと踏み鳴らしながらそんな事を言われて、こっちが焦るよ。

「それは申し訳ありませんでした。ええと、どれくらいいる?」

「全部半分ずつください!」

 予想通りの言葉に俺はちょっと遠い目になりつつ、お皿にもう一つ作ってあったホットドッグを丸ごと一本とサラダを適当に盛り付けてやる。それから別に取り出されたお椀にかぼちゃのポタージュもたっぷりと入れてやった。

 蕎麦ちょこにコーヒーも入れてやったら、見事に半分どころか三分の一くらいに減ったよ。うん、これはもう一つホットドッグを作ってスープとコーヒーも追加を入れてこよう。

 齧りかけのホットドッグを置いてそそくさと席を立った俺は、もう一つホットドッグを作り、サラダを追加し、ポタージュとコーヒーも減った分を追加でもらって改めて席につく。

「ううん、これは美味しいねえ」

 嬉々としてホットドッグを豪快に丸齧りしているシャムエル様を眺めつつ、俺ものんびりと豪華な朝食をいただいたのだった。

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